"失われた歌詞("Missing"verse)があります。
ご存じでしたか?




 サイモン&ガーファンクルの有名な曲である「The Boxer」ですが、ライブのときだけ歌われる歌詞("Missing" verse )があります。

 歌詞としては「7番街の娼婦のお姉さんたち」と「冬物の洋服を広げて故郷を想う」間に、“Now the years are rolling by me They are rocking evenly…”と入りますので、訳詞はその部分もいれました。 レコードに収録するにあたって、長尺すぎるのでどこかカットすることになったのでしょうかね?

  "失われた"この部分の主題は、"we are more or less the same"=多かれ少なかれ、僕たちは変わらない…ということかなと思いますが、主人公の気持ちについて結構"説明的"ですよね。もしこの部分が最初からあったら、最後に"もういやだ!故郷に帰りたい"と叫びながらも闘い続ける彼の想いを説明しすぎてる感じは確かにします。
 この部分がないからこそ、主人公"the boxer"の心のなかについて、聴いた人がいろんな想像を沸かせられる…ということは確かにありそうな気がします。

◆ポールは1984年のPlayboy Interviewでこの曲について次のように言っています。
 僕はその頃聖書を読んでいた。だから "workman's wages" とか "seeking out the poorer quarters""seeking out the poorer quarters"といった言葉はそこから生まれたんだと思うよ。この歌は聖書的だよね。僕自身についての歌だと思うよ。誰もが僕を叩きのめしたし、僕はもし止められなかったら、すぐに家を出ようと思ってたしね...

◆また「Lie la lie」の部分は特に「嘘」という意味ではないことはポールは1990年のSongTalk magazineで次のように言っています。
 なんて歌詞にしようか、うかばなかったんだ。多くの人が“うそ”って意味にとってくれたけど、そういう意味ではないんだ。でもそうやって意味を感じてくれたからこの曲はパワーや感情を持つことができたんだよ。だからそれでいいんじゃないかって思う。でも、ライブで歌うたびに、僕はこの部分、ちょっと戸惑うんだよ。

◆僕がこの曲を初めて聴いたのはニッポン放送のなんかの番組でサイモン&ガーファンクル特集をやっていて、それで「サウンド・オブ・サイレンス」「スカボロー・フェア」「明日に架ける橋」、そしてこの曲。
    ニッポン放送はラジオ関東の次に電波の入りが悪く、「The Boxer」の“ライ・ラ・ライ…”の部分になったときには音が大きくなったり、小さくなったり…。それでも、それが実にいい感じで聞こえたのです。

 “ライ・ラ・ライ!”と歌った後に「ダーン」と何かを叩く音がするでしょう。最初僕はなぜかその音を、波が打ちつける音のように思い、タイトルのボクサーが海岸で波が打ちつけるなかシャドー・ボクシングをしている姿を想い浮かべて聞いていました。
    また、スタジオ盤は間奏部分にギターのフレーズがチョロッと入ったり「Cut him till he cried out」の感情込めた歌い方、最後の「ライラ・ライ」にストリングスや低い音のコーラスが重なってきたり…。そして、フェードアウトせずに、やさしい感じでギターを弾き終えて終わる…ほんとよくできている曲だと思います。

Writer/s: PAUL SIMON

Released in 1969
US Billboard Hot100#7
From The Album
“Bridge Over Troubled Water”

*S&Gは歌詞がとても大事だと思うので、
洋詞も日本語訳と並行して掲載します。
こちらから引用させていただきました)

I am just a poor boy
Though my story's seldom told
I have squandered my resistance
For a pocket full of mumbles
Such are promises

僕はただの貧しい少年
身の上話はめったにしないけど
ポケット一杯つぶやくために
抵抗するのもムダだよね
そうなるのがお決まりのことだよ

All lies and jests
Still a man hears what he wants to hear
And disregards the rest

たくさんの嘘や冗談話
人って自分の聞きたいことだけ聞いて
あとの話は聞き流すものなんだ

When I left my home and my family
I was no more than a boy
In the company of strangers
In the quiet of the railway station
running scared

家や家族にさよならしたとき
僕はまだほんの子供だった
見知らぬ人達の仲間になり
駅舎の静けさの中で
怖くて走り回っていたよ

Laying low,
seeking out the poorer quarters
Where the ragged people go
Looking for the places only they would know

地べたに寝転んで
貧民街を探しまわったよ
ぼろぼろの服を着た人達が行くとこさ
彼らだけが知ってる場所を探したんだ
Lie la lie ...
ラララ…

Asking only workman's wages
I come looking for a job
But I get no offers,
Just a come-on from the whores
on Seventh Avenue

日雇い労働でも稼がなきゃと
仕事を探したんだ
でも何もいい話はなかった
7番街の娼婦達が声かけてくれるだけ

I do declare,
there were times
when I was so lonesome
I took some comfort there

正直に言っちゃうと
ものすごく淋しいときには
そこの7番街で
安らぎを得ていたんだよ
Lie la lie ...
ラララ…

Now the years are rolling by me 
They are rocking evenly

僕のまわりで月日は流れ
四季は規則正しくやってくる

I am older than I once was
But younger than I'll be
That's not unusual
No, it isn't strange
After changes upon changes
We are more or less the same
After changes
we are more or less the same

僕は前より年をとったけど
これからは年を取るより
きっと若造のままだよ
それって普通のことだろ
おかしくなんかないよね
物事は変わっていくけど
多かれ少なかれ
僕らは変わらない
物事は変わっても
僕らは本質は変わらない
Lie la lie ...
ラララ…

Then I'm laying out my winter clothes
And wishing I was gone
Going home

冬服を広げたときに
帰ってしまいたいって思った
故郷に帰りたいと

Where the New York City winters
aren't bleeding me
Leeding me, going home

故郷ならニューヨークの冬みたいに
僕からお金を絞り取ることもない
故郷へ…僕を導くんだ

In the clearing stands a boxer
And a fighter by his trade
And he carries the reminders
of ev'ry glove
That layed him down or cut him

空き地のリンクに立つ男
闘うボクサーが彼の職業
彼には傷跡があり
その傷跡は彼に
殴り倒し切り刻む
ボクシンググローブを思い出させる

Till he cried out
in his anger and his shame
"I am leaving, I am leaving"
But the fighter still remains

怒りと恥辱にまみれ彼は叫び続ける
「もういやだ」
「もう辞めて故郷に帰るんだ」
でもボクサーはいまだ
たたかい続けているんだ…
Lie la lie ...


日本語訳 by 音時

(Words & Idioms)
squander=浪費する
mumbles =口のなかでもぐもぐ、ぼそぼそ言う
jest=冗談、しゃれ
poor quarter=貧民街
ragged=ぼろぼろの
wages=肉体労働の賃金 労賃
whore=尻軽女 売春婦
more or less=多かれ少なかれ
clearing=開墾地 空き地
trade=職業

◆"Missing"verseを含めて歌います。彼らのライヴ音源"The Boxer"です。




◆アリス"チャンピオン"。最後に"ライラライ、ララライラライ…♪"と歌うところが、"The Boxer"へのオマージュですよね。