アルバム「Nebraska」の最後の曲“Reason to Believe”。

この曲は「4つの短編小説」を扱ってるような構成です。
(情景が頭に浮かびます)

(1) 高速道路脇で死んだ犬を突いて 生き返らないか見てる男
(2) 道端で決して現れないだろう男を待つ女
(3) 赤ん坊が生まれ洗礼を受け そしてまた人が死に弔われる
(4) 結婚式で 花嫁が現れず 川の流れをただ見つめる花婿


 この4つの話が 同じ言葉で結ばれます。

People find some reason to believe...



どんなに辛い一日を過ごしても
それでも ひとは何かしら
信じる理由を見つけようとする...

この言葉をアルバム「Nebraska」の結語として受け止めたいと思いました。




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(Bruce Springsteen)

Released in 1982
From the Album“Nebraska”
 
*原詞は太字


Seen a man standing over a dead dog
By a highway in a ditch
He's looking down, kinda puzzled
Poking that dog with a stick
Got his car door flung open
He's standing out on Highway 31
Like if he stood there long enough
That dog'd get up and run

ハイウェイ脇に立っていた男
溝に横たわる死んだ犬がいた
ヤツは少し困惑した様子で下を向き
棒で犬を突いている
ヤツは車のドアを開けっぱなしで
31号線脇に立ってるんだ
まるで そこに長く立っていたらあの犬が
立ち上がって駆け出すと思ってるのか

Struck me kinda funny
Seemed kinda funny, sir, to me
Still at the end of every hard day
People find some reason to believe

ちょっとおかしな話だよ
俺には ちょっと滑稽な話だよな
それでも 苦労して稼いだ一日の終わりには
ひと は 何か信じる理由を見つけるんだ


Now, Mary Lou loved Johnny
With a love mean and true
She said, "Baby, I'll work for you every day
And bring my money home to you"
One day, he up and left her
And ever since that
She waits down at the end of that dirt road
For young Johnny to come back

メアリー・ルーはジョニーを
強くて真実の愛で愛してた
彼女は言った「ベイビー私は
毎日あなたのために働いてお金を持って帰る」
でもある日  彼は突然彼女のもとを去り
それ以来ずっと
彼女はあの未舗装道路の突き当たりで
若いジョニーが戻ってくるのを待ってるんだ

Struck me kinda funny
Funny, yeah, indeed
How at the end of every hard-earned day
People find some reason to believe

ちょっとおかしな話だよな
ああ 滑稽な話だよな
それでも 苦労して働いた一日の終わりに
ひとは何か 信じる理由を見つけるんだ


Take a baby to the river
Kyle William, they called him
Wash the baby in the water
Take away little Kyle's sin
In a whitewashed shotgun shack
An old man passes away
Take the body to the graveyard
Over him, they pray

赤ん坊を川へ連れて行け
赤ん坊はカイル・ウィリアムと名付けられ
水で洗って清められ
小さなカイルの罪が洗い流された
白塗りの狭い住宅じゃ 老人が亡くなり
遺体は墓地に運ばれて
彼の冥福が皆で祈られる

Lord, won't you tell us
Tell us, what does it mean?
At the end of every hard-earned day
People find some reason to believe

主よ  教えてくれないか?
これに どういう意味があるんだろう?
それでも あくせく働いた一日の終わりに
ひとは信じる理由を見つけるんだ


Congregation gathers
Down by the riverside
Preacher stands with a Bible
Groom stands, waiting for his bride
Congregation gone
The sun sets behind a weeping willow tree
Groom stands alone
and watches the river rush on

So effortlessly

参列者は皆
川辺に集まってくる
牧師は聖書を手にして
花婿は花嫁を待つ
参列者は去り
柳の木の向こうに日が沈む
花婿は一人ぼっちで
ただ淡々と流れる川を眺めてる

Wondering
Where can his baby be?
Still, at the end of every hard-earned day
People find some reason to believe

愛しの僕のベイビーは
どこにいるんだろう?
それでも  どんなに辛い一日を過ごしても
ひとは何かしら
信じる理由を見つけようとする



(Words and Idioms)
mean =強烈な・激しい 、並外れた・すごい
dirt road=未舗装の道路、土でできた道路
shutgun house=ショットガンハウス=
アメリカ南部に多く見られる狭小な長方形の住宅形式。
各部屋が直線的に配置され、ドアは一つの方向に開く構造を持っている。
groom=花婿、新郎(結婚式の日やその前後における男性)


日本語訳 by 音時




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 絶望的な状況でも「信じる理由」を探すって…人間は生きていく本能的な強さがあることを示しているのでは?と思います。現実には叶わない願いでも、それを信じることで人は生きていける。ブルースは「ある種 滑稽(kinda funny)に見える」と歌いながらも、それを否定せず、人間らしさを肯定しているんじゃないでしょうか。

にとは“every hard-earned day”…毎日一生懸命つらい想いをしながら働き、そのなかでも信じる理由を探す、その一方で、流れる川は“so effortlessly”…自然や時間の流れは、ひとの痛みを意に介さず、焦ることなく毎日同じことを簡単に繰り返していく…。

滑稽だけど…それでいいのだ…と…。



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アルバム「ネブラスカ」…ブルースが苦悩し、暗い鬱のなか書かれた曲たちが収められ、ブルースがバンドでの演奏を嫌って、敢えてシンプルなラフなサウンドでのレコーディングとリリースにこだわった作品。そのこと自体は事実でした。
 人間が、生きていくのに難しさを感じ、犯罪を犯してしまうこともあるのも事実で、犯罪者を主人公にした、その者の心のなかを想像して歌った曲たちも作られました。

「ネブラスカ」は、ブルース・スプリングスティーンが売れていきロックスターの像が大衆的・社会的に作られていくなかで、自分自身の性格や人間関係などを内省し、罪を犯す人間という存在について深く考え、また、自分の育ってきた環境や父親への複雑な想いに向き合って、再生をはかっていった過程にある作品、ということなんでしょうね。

 全体をメッセージあるトータルアルバムとして捉えるのであれば、やはり最後の曲“Reason To Be”なんだろうな。ひとは絶望の中でも 希望を探し続け生きていける、 ということだと思います。

「Nebraska」全曲和訳...そうとうしんどかったけど、取り組んでよかったです。
これらの和訳記事が皆様にとって、ロック・ミュージシャンであるブルース・スプリングスティーンという人間、そしてアルバム「ネブラスカ」の世界を鑑賞するガイドに少しでもなっていただけたらと願って締めくくらせていただきます…。

BruceSpringsteen_Nebraska を含む記事 : 洋楽和訳 Neverending Music

映画“Deliver Me From Nowhere(孤独のハイウェイ)”、もう一度観たくなりました…!

Springsteen_–_Deliver_Me_from_Nowhere_(poster)