シェールの「悲しきジプシー」。
1971年の11月に2週間、全米ナンバー1ヒットになった名曲ですが、僕が初めてこの曲の一部を聴いたのは…ラジオ番組「全米トップ40」の“ジョークBOX”(番組内の空耳アワーのようなコーナー)でした。
 坂井アナウンサーがこの曲で、“シェールさん、うんたらかんたら…”と話して…“俺は行く~(whatever he could)”♪という作品だったのを覚えてます!

◆ただ、そんなエピソードのある全米No.1であると同時に、この曲はただのヒットソングではなく、1970年代のアメリカ社会の闇を照らすメッセージソングとして、多くの人に聴かれ続けてる曲です。


主人公は16歳の少女。彼女は旅芸人の家族のもとで育ち、母は踊り子、父は何でも屋(インチキな説教師で怪しい飲みクスリを売ったり)。一家は町の人々から「ジプシー、浮浪者、泥棒」と呼ばれ、差別されながらも生計を立てている…。

そんな設定のある物語です…。

o0550054314513035176

Songwriter(s) Bob Stone


Released in 1971
US Billboard Hot100 ♯1
From the Album“Chér” 

*原詞は太字


I was born in the wagon of a travellin' show
My Mama used to dance
for the money they'd throw

Papa would do whatever he could
Preach a little gospel
Sell a couple bottles of Doctor Good

アタシは旅回りのショウの荷馬車の中で生まれ
母親は投げ銭をもらって踊ってた
父親はなんでも屋みたいで
ちょっとだけ福音を説いたり
ドクター・グッドの薬を何本か売ったり

Gypsys, tramps and thieves
We'd hear it from the people of the town
They'd call us gypsies, tramps and thieves
But every night
all the men would come around

And lay their money down


「ジプシー 浮浪者 コソ泥」
町の人たちから よくそう言われたわ
「ジプシー 浮浪者 コソ泥」
アタシたちはそう呼ばれたの
それでも毎晩 男たちがやって来て
金を置いていった

Picked up a boy just south of Mobile
Gave him a ride, filled him with a hot meal
I was sixteen, he was twenty-one
Rode with us to Memphis
And Papa would'a shot him
if he knew what he'd done


モービルのすぐ南で少年を若い男を拾った
車に乗せて 温かい食事を与えたの
アタシは16歳  彼は21歳だった
私たちは メンフィスまで一緒に行った
彼が何をしたのか知ったら
父親は撃ち殺したでしょうね

Gypsys, tramps and thieves
We'd hear it from the people of the town
They'd call us gypsies, tramps and thieves
But every night
all the men would come around

And lay their money down

「ジプシー 浮浪者 コソ泥」
町の人たちから よくそう言われたわ
「ジプシー 浮浪者 コソ泥」
アタシたちはそう呼ばれたの
それでも毎晩 男たちがやって来て
金を置いていった

I never had schoolin' but he taught me well
With his smooth southern style
Three months later I'm a gal in trouble
And I haven't seen him for a while, oh
I haven't seen him for a while, oh

アタシは学校には行かなかったけど
彼が洗練された南部訛りで
上手に教えてくれた
3ヶ月後 毎月来るものが来なくなった
アタシはしばらく彼に会っていない
それからしばらく彼に会っていない

She was born in the wagon of a travelin' show
Her Mama had to dance for the money
they'd throw

Grandpa'd do whatever he could
Preach a little gospel
Sell a couple bottles of Doctor Good

彼女は旅回り一座の荷馬車で生まれた
母親は投げ銭目当ての踊り子で
おじいちゃんはできることは何でもやった
ちょっと福音を説いてみたり
怪しい飲み薬を数本売ったり

Gypsys, tramps and thieves
We'd hear it from the people of the town
They'd call us gypsies, tramps and thieves
But every night
all the men would come around

And lay their money down

「ジプシー 浮浪者 コソ泥」
町の人たちから よくそう言われたわ
「ジプシー 浮浪者 コソ泥」
アタシたちはそう呼ばれたの
それでも毎晩 男たちがやって来て
金を置いていった

Gypsys, tramps and thieves
We'd hear it from the people of the town
They'd call us gypsies, tramps and thieves
But every night
all the men would come around

And lay their money down

Gypsys, tramps and thieves 

「ジプシー 浮浪者 コソ泥」
町の人たちから よくそう言われたわ
「ジプシー 浮浪者 コソ泥」
アタシたちはそう呼ばれたの
それでも毎晩 男たちがやって来て
金を置いていった
「ジプシー 浮浪者 コソ泥」…

(Words and Idioms)
Mobile=モービル=アメリカ合衆国 アラバマ州 の 港湾都市

日本語訳 by 音時


CherGypsy

◆あらためて「ジプシー」って…?

ウィキペディアでは…

ジプシー(gypsy)は、一般にはヨーロッパ(欧州)で生活している移動型民族を指す民族名。転じて、様々な地域や団体を渡り歩く者を比喩する言葉ともなっている。


でも、“ジプシー”には、迫害されてきた歴史的背景があるので、差別用語として捉えられ、日本でも放送禁止用語にもなっています。こんな風にも書かれていました。

近年の日本においては、「ジプシー」は差別用語、放送禁止用語と見做され、「ロマ」と言い換えられる傾向にある。
ジプシーとは?ロマとは?その意味、歴史、民族を知る。

◆この曲は…貧困の連鎖も歌われてるんだろうな…。

最後のverseの主人公は「I(アタシ)」ではなく「She(彼女)」となっています。そして「母親」は踊り子、「父親」ではなく「おじいちゃん」?は怪しい伝道師…。

つまり、歌詞の前半~中盤で歌われてる主人公の女の子が子どもを産み(父親はいなくなった)、その子が女の子で大きくなって、家族構成がその子を中心に「女の子、母親(曲の前半の主人九尾)、祖父(曲の前半の父親)」となったのでしょう。(曲の前半の母親はすでに死去?)

 その娘も母親と同じように、踊り子として生きていくしかない…。


◆「悲しきジプシー」…サウンド全体がラテンテイストで、多彩な楽器が使われ、ドラマチックな物語が歌われたこの曲。鋭く米国の社会問題も映し出した、全米No.1にふさわしい曲でした。