Songwriters: LAMM, ROBERT
lyrics c Warner/Chappell Music, Inc., BMG RIGHTS MANAGEMENT US, LLC, SPIRIT MUSIC GROUP

Released in 1976 
From The Album"Chicago X"

*原詞の引用は太字

Six sets smoked on Saturdays
At Barnaby's on State
Countless California calls
We could not stand the wait

煙草でくゆった土曜のステージ
ステイト St. のバーナビーズで
ステージを6セットこなしたよ
カリフォルニアじゃ数えきれないほどの声援
僕たちは待っていられなかった

We played the pier on Venice beach
The crowd called out for more
Zappa and the Mothers next
We finished with a roar

ヴェニス・ビーチの桟橋でのライヴ
聴衆はアンコールを叫んでた
次の出演はフランク・ザッパ&マザーズ
僕たちは大歓声のなか演奏を終えた

Jimi was so kind to us
Had us on the tour
We got some education
Like we never got before

ジミ・ヘンは僕たちにとても優しくて
ツアーにも連れていってくれた
いろんな勉強をさせてもらったよ
今まで経験したことないくらいにね

Around the world in twenty days
We played most every night
Jet-lag, girls, strange languages
Everyone began to fight

20日間の世界旅行
僕たちはほとんど毎晩演奏した
時差ぼけ 女のコ達 聞いたことないコトバ
誰もがケンカを始めたっけ

Lowdown at the Caribou
All rumours aside
Was we could never get together
Not unless we tried

カリブー・ランチじゃ僕らは憂うつ
傍らで聞こえてくるのは
僕たちはもうバラバラだって噂話
そんなこと考えもしなかったのにね

Summer with the Beach Boys
We got sand all in our shoes
Made some special music
Everybody sang the blues
Everybody sang the blues

夏はビーチ・ボーイズと一緒
靴に砂が入っちゃったけど
特別な音楽を作れたよ
みんながブルースを歌ってた
みんながブルースを歌ってた

(Words and Idioms)
pier=桟橋,埠頭
with a roar= 叫び声を上げながら、ごう音を立てながら
Jet-lag=時差ぼけ
low-down=憂鬱な、落ち込んだ
not unless…=…でない限りは、…の場合にだけ

日本語訳 by 音時


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 純粋に徹頭徹尾「夏うた」か?というとそうじゃないとは思いますが、最後にビーチ・ボーイズと共演した想い出で「靴に砂が入っちゃったよ」という歌詞は思わずクスっとさせてくれますね。(浜辺でのライヴだったんでしょうかね)

◆「Scrapbook」はシカゴのオリジナル・メンバーであるロバート・ラムの作品、歌もロバート本人が歌っています。歌われている内容はご覧のとおり、バンドの共演者との歴史やファンとの想い出などで、そうした想い出のスクラップブック、ってことでタイトルが付けられたんでしょうね。

 アルバム「Chicago X」の2002・2003年のリマスター&エクスパンデッド盤のライナーノーツに(A scott gallowayさん)、アルバム全体の解説が書かれています。

 ここで紹介されている「Scrapbook」について、作者のロバート・ラムは

"この曲は"Introduction"の返答なんだ"
"僕らの1番最初のアルバムの1曲めの曲さ。テリ―が僕らの「宣言書(Manifesto)」として書いた曲なんだ。僕はその後に起こったことを付け加えただけなんだ"


とコメントしています。

(→ということで「Introduction」はこちら

◆いろんな場所でどんな風に演奏してきたのか。バーナビーズ、ヴェニス・ビーチの桟橋、20日間の世界旅行、ビーチ・ボーイズとは砂浜で!?
共演したアーチストも沢山、(フランク)ザッパ&マザーズはDeep Purpleの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」にも出てきますね。「ジミ」はジミ・ヘンドリックス。ジミはテリー・キャスのギタープレイのファンだったそうですね。だから優しかったのかな?


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◆歌詞だと"Lowdown at the Caribou"がちょっと悩みました。

 まず"Lowdown"は1文字の単語だと「《俗語》 実情,内幕」という意味ですね。ボズの「Lowdown」もそのような意味です。
 一方、この曲のこの部分で使用されてる"Lowdown"という単語は、まずは当然シカゴ自身のヒット曲に"Lowdown"という曲があるから敢えて使ったとも考えられます。(シカゴの"Lowdown"はアルバム"ChicagoⅢ"収録曲で、1971年に全米35位のヒットとなっています) この曲での"Lowdown"の意味は、"Lowdown、 Oh! Feelin' pretty bad"="気持ちが滅入っちゃってるよ、ああ なんていやな気分なんだ"の意味でしょう。
 "Scrapbook"での"ロウダウン"も、"low-down"="(形)憂鬱な、落ち込んだ"って意味の方かなと思います。

 また"憂うつ"になってしまった場所は" Caribou"。これ"カリブ海"のカリブではありませんね。"カリブー・ランチ"(Caribou Ranch)のことでしょう。

 "Caribou Ranch"...シカゴが使用していたアメリカ・コロラド州ボルダー郡のスタジオのことです。初期のシカゴのプロデューサーだったジェームズ・ウィリアム・ガルシオが開設したスタジオで、多くのアーチストが好んで使用したスタジオです。

・シカゴはアルバム「Chicago VI」「Chicago VII」「Chicago VIII」「Chicago X」「Chicago XI」を"Caribou Ranch"でレコーディング。ライヴを催したりもしました。

・エルトン・ジョンは「カリブ」というアルバムもありますね。「キャプテン・ファンタスティック」や「ロック・オブ・ザ・ウェスティーズ」などのアルバムのほか、ジョン・レノンと共演した"Lucy In The Sky With Diamonds"も"Caribou Ranch"。

・その他、ジョー・ウォルシュ(Rocky Mountain Way)、アメリカ(Hideaway)、ロッド・スチュワート(Night On The Town)、ジェフ・ベック(Wired)など、当時僕がよく聴いていたアルバムのなかで"Caribou Ranch"で録音されたものがいかに多かったことか!アーチストとしても「山にこもれる」というメリットがあったようで、マイケル・ジャクソンも兄弟ジャクソンズでの"Victory Tour"中の息抜きに訪れていたようですね。

・"Caribou Ranch"がスタジオとして利用されたのは1972年~1985年。どんな場所だったのかは下記のYoutubeをご覧ください。





◆シカゴというバンドの矜持を"Introduction"~"Scrapbook"の流れのなかに感じます。
"Introduction"の作者テリー・キャスは1978年1月、32歳の誕生日の8日前、自動拳銃の暴発事故で急逝しました。"Scrapbook"の作者ロバート・ラムは、"AORのシカゴ"と言われようとも、オリジナルメンバーの1人として、ほかの3人=ジェームズ・パンコウ、リー・ロックネイン、ウォルター・パラゼイダーとともに"シカゴらしさ"を貫いていってほしいですね。


◆こちらはステージじゃなくてスタジオでのライヴ風景(Bill Cosby Show. September 19, 1976)。ロバートはシカゴのトレーナーを着てグラサンです。



◆こちらのライヴは、Dortmund, Germany(1982)。ロバートは一人だけネクタイ。ボーカル&キーボードも気合い入ってます!