Songwriters PHILLIP DAVID CHARLES COLLINS, WILLIE NORWOOD
Lyrics c IMAGEM U.S. LLC

Released in 1989
US Billboard Hot100#1(3)
From The Album"...But Seriously"

*原詞の引用は太字

She calls out to the man on the street
 'Sir, can you help me?
 It's cold and I've nowhere to sleep,
 Is there somewhere you can tell me?'

彼女は道行く人に大声で呼びかける
 “お願いです、助けてください
   寒くて 眠る場所もないんです
  どこかいいところを知りませんか?”

He walks on, doesn't look back
 He pretends he can't hear her
 Starts to whistle as he crosses the street
 Seems embarrassed to be there

男は振り向かず 歩いていってしまう
 彼女の呼びかけは聞こえないふり
 通りを渡るのに 口笛を吹き始める
  そこに居づらいかのように

Oh think twice, 
it's another day 
 for you and me in paradise

Oh think twice, 
'cause it's just another day for you,
You and me in paradise, think about it

ああ よく考えてみよう
パラダイスにいる
 きみと僕のあたりまえの日々を

ああ よく考えてみよう
だって 今日は何も変わらない いつもの日
きみと僕はパラダイスにいる
・・・考えてみるんだよ・・・


She calls out to the man on the street
 He can see she's been crying
 She's got blisters on the soles of her feet
 She can't walk but she's trying

彼女は道行く人に大声で呼びかける
 男の目にも泣き続ける彼女が見えるはず
 足の裏には いくつものまめができている
 彼女は歩きたくても歩けないんだ

Oh think twice, 
'cause it's another day 
 for you and me in paradise

Oh think twice, 
it's just another day for you,
You and me in paradise, 
think about it

ああ 思い直そう
パラダイスにいる
 きみと僕のあたりまえの日々を

ああ 振り返って考えてみて
だって 今日は何も変わらない いつもの日
きみと僕はパラダイスにいる
・・・ほんとにそうかい?・・・

Oh Lord, 
is there nothing more anybody can do
Oh Lord, 
there must be something you can say

ああ 神様
これ以上 誰にも何もできないのです
ああ 神様
何か言ってあげられることくらい
      あるのではないでしょうか?

You can tell from the lines on her face
 You can see that she's been there
 Probably been moved on from every place
 Cause she didn't fit in there

彼女の顔に刻まれた皺が語りかける
 彼女がずっと「そちら」にいたことを
 おそらく あちこち移り住んできたんだろう
 どこでも馴染むことはできなかったんだ

Oh think twice, 
'cause another day 
 for you and me in paradise

Oh think twice, 
it's just another day for you,
You and me in paradise, 
just think about it, 
think about it

ああ よく考えてみるんだ
パラダイスにいる
 きみと僕のあたりまえの日々を

ああ 思い直してみるんだ
今日は何も変わらない いつもの日で
きみと僕はパラダイスにいるけど
考えてみなきゃならない
想像してみなきゃならない

It's just another day
  for you and me in paradise
It's just another day 
  for you and me in paradise, paradise
It's just another day 
  for you and me in paradise
It's just another day 
  for you and me in paradise, paradise
It's just another day for you and me
It's just another day for you and me
It's just another day 
  for you and me in paradise…

パラダイスにいるきみと僕
今日は何も変わらない一日

パラダイスにいるきみと僕
パラダイス・・・
パラダイス・・・

ほんとにそう思うかい?

(Words and Idioms)
whistle=口笛を吹く
blister=水膨れ、まめ

日本語訳 by 音時


Anotherimages

 フィルの曲は離婚する(した)奥さんへの恨みつらみのような歌詞が多い(ゴメンナサイ)のですが、そんななかで、この曲"Another Day In Paradise"は"ホームレス"=社会的な問題提起を投げかけました。

この曲は1991年のグラミー賞"Record Of The Year"を受賞したのは、楽曲的にも優れていると同時に、歌詞の投げかける"重さ"もあったのだろうなあと思いました。
(ちなみにソングライターに贈られる"Song Of The Year"はベット・ミドラーの歌った"From a Distance"=ソングライターのジュリー・ゴールドが受賞しています)

◆フィルはThe New York Timesにこの曲がどのようにして生まれたかを次のように話しています。

まずはピアノで、忘れないようにテープに録音しながら弾き始めたんだよ。そして歌い始めたときに歌詞が自然に出てきたんだ。'She calls out to the man on the street.…って。当初はホームレスのことを書こうとは思ってはいなかったんだ。たまたまそう歌い出したんだよ。偶然だったんだ。

一方でThe Mail on Sundayに、こんな話もしています。

この曲を書いたのは、ワシントンDCに寄ったあとのことだったよ。たくさんの人達が段ボール箱で寝ているのに驚いたんだ。熱い空気が吐き出されるグリルのような場所で寝ようとしているんだけど、そこはキャピトル・ヒルの日陰になる場所だからなんだね。矛盾してるけど仕方ないんだ。

フィルは「ホームレス」のことを詞に書こうとしたのではないけれど、頭のなかにその光景が焼き付いていたんでしょうね。

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◆この曲の和訳には、(another day in Paradise)の"Another"をどう訳するのか?が悩むところでした。

英辞郎on the Web)
には下記3つの意味がありました。

1.もう一つ[1個・1杯・一人]の、別の、他の
2.別の、違った、新手の
3.~の生まれ変わり、またいつもと同じ~

歌詞に出てくる"ホームレスの女性"、声を掛けられても知らないふりをして通り過ぎる男性。そしてそれを見ているきみと僕(フィル)。
この3者の位置関係と、"Another Day"をどう解釈するか、ですね。

"Another"を"別の"とか"違った"と訳すと、"パラダイス"にいるのは"男性""きみと僕"であり、"ホームレスの女性"は別な世界にいる(裏と表の世界?)ということになるでしょうね。僕の持っているアルバム"...But Seriously"CD国内盤のこの曲の和訳も「別な世界」と訳されていました。

でも、そうなのでしょうか?

◆"I don't wanna waste another day"という英文を見つけました。

この文の"another"を「別の」とか「もうひとつの」と訳してしまうと、
"別の日を無駄にしたくない"?
"もうひとつの日を無駄にしたくない"?…など、しっくりこない感じです。

この文は"ありふれた一日を無駄にしたくない"="たった一日も無駄にしたくない"と訳されます。

ここでの"another"は「ありふれた」とか「普通の」という意味で"たくさんある中のありふれた(他と変わらない)ひとつ"といったニュアンス。

"Another"にはこういう意味もあるんだとわかりました。

(同じ意味の"another"を使った例文)
He's just another man → 彼はどこにでもいるような男だ
It's just another day of life →いつもと変わらない日だ。

◆"急いで行き過ぎる男""きみと僕"は"パラダイス"にいます。そして"ホームレスの女性"も「パラダイスのなか」にいるんです。それが"パラダイスのあたりまえのいつもの日"。

 見たくないものに目をつぶったり、見ていない振りをして過ごす私たち…。別な世界ではなく、みんなが同じ世界にいる。そしてこの世界は"パラダイス"と呼ばれるけど、本当にパラダイス=楽園と言えるのだろうか?(言えないのではいか)、と歌っているのではないかと思い、そんなニュアンスで和訳させていただきました(^▽^;)。

ButSerious


◆この曲のSongfactsに、とあるエピソードが出ていました。

フィルがロンドンに行ったとき、ホームレスの問題に直面しました。スタジオを出たところで、2人の子どもを抱えたホームレスの女性がお金を乞うている場面に出会いました。ちょうどこの曲がヒットしているまさにその時期に、フィル自身も気がついたのです。こういった場面に直面すると、彼自身もほかの誰もと同じように行動してしまう…のです。
"この曲は人々の気づきの大切さについて歌ったんだけど、僕自身が直面したんだ。僕はただその場所を通り過ぎてしまった…。僕もほかの人と同じことをしてると思ったよ。気がついたさ。彼女を無視するようなことはしなかった。でも同時に 立ち止まってお金をあげることはできなかったよ…。これがこの曲が歌ったことなんだと思ったさ。人々は何も起こらなかったんだと自分を納得させようとするんだ…"

フィルは"気づいて行動すべきだ"と上から目線で歌ってるのではありません。社会のこと、弱者のこと、みんなのことを自分のこととしてとらえて、一緒に悩んでいるんですね。
僕も一緒に考えていきたいと思います…(-_-;)。

◆この曲のバック・コーラスはクロスビー・スティルス&ナッシュのデヴィッド・クロスビー。フィルが受賞したグラミー賞のステージでもデヴィッドが共演してくれました。(下に動画あり)

どうしてデヴィッドが参加してくれたのかはわかりませんが、フィルはお返しに1993年のDavidのアルバム"Thousand Roads."に参加してます。フィルとデヴィッドの共作曲"Hero"は全米44位まであがりました。( 下に動画あり)

◆"Another Day In Paradise"が1位を記録した週の全米チャートです。
US Top 40 Singles Week Ending December 23, 1989

ビリーに代わってNo1に。1989年から1990年にかけて3週連続の1位になります。(王座を譲るのはマイケル・ボルトンの"HOW AM I SUPPOSED TO LIVE WITHOUT YOU"です(この週11位にランクイン)。

1 2 ANOTHER DAY IN PARADISE –•– Phil Collins – 8 (1)
2 3 DON’T KNOW MUCH –•– Linda Ronstadt & Aaron Neville – 13 (2)
3 1 WE DIDN’T START THE FIRE –•– Billy Joel – 11 (1)
4 8 RHYTHM NATION –•– Janet Jackson – 7 (4)
5 5 WITH EVERY BEAT OF MY HEART –•– Taylor Dayne – 10 (5)

6 4 BACK TO LIFE –•– Soul II Soul Featuring Caron Wheeler – 14 (4)
7 7 PUMP UP THE JAM –•– Technotronic Featuring Felly – 11 (7)
8 10 JUST LIKE JESSE JAMES –•– Cher – 10 (8)
9 13 THIS ONE’S FOR THE CHILDREN –•– New Kids On The Block – 7 (9)
10 9 LIVING IN SIN –•– Bon Jovi – 12 (9)





◆フィルとデヴィッド・クロスビーの共演はデヴィッドのアルバムの曲でも行われました。1993年のDavidのアルバム"Thousand Roads. 収録の"Hero"です。