「ペッパー軍曹の孤独な心のクラブバンド」のコンサートも終わり、、、映画でいうと本番が終わり、エンディングクレジットとテーマが流れている状況でしょうか。

この曲“A Day in The Life”。

 曲の最初と最後がジョン、中間部と有名な“I'd love to turn you on”の歌詞はポール。オーケストラは41人の編成ですが、それを4回ダビングして160人規模の音を出してます。レコーディングアーティストとして、ビートルズの構成力、想像力の凄さを感ぜずにはいられません。

最後のピアノの「ガ〜〜〜ン」は余韻も含め、トータルで50秒続き、トラックの最後はレコーディングの雑音というか繰り返すおしゃべりが録音されています。
(終わったと思っても最後まで聴いてみてください)

◆ちなみに、オーケストラのミュージシャンたちは、当初はフォーマルな格好でセッションに参加するように言われたのですが、その場になると、パーティ用のノベルティ(付け鼻、パーティハット、ゴリラの足の手袋など)が用意され、演奏に参加となりました。
 
 オーケストラの指揮はポール・マッカートニー。「楽器の一番低い音から始めて、徐々に高い音まで演奏してください」と言われた。この曲は3回のセッションで録音された。まず基本トラック、次にオーケストラ、そして最後の音はダビングされた...
とこの曲のSongfactsに書かれておりました。


◆この曲の凄さ...サウンド全体にあると思いますし、アルバムの締めくくりとしてこの曲を持ってきて、架空のクラブバンド(Reprise)の演奏が終わると同時に、現実に引き戻したようで、まだ夢のなかにいるようで...そんななかで歌詞は一つの要素になっていると感じます。

多くのビートルズファンや、和訳サイトでもこの曲を取り上げていますので、詳しい解説はそうしたものに譲るとして、僕なりの解釈でこの曲にふれようと思います。



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Writer: LENNON /  MCCARTNEY
Lyrics © Sony/ATV Music Publishing LLC


Released in 1967
From The Album
“Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band”


*原詞の引用は太字


I read the news today, oh boy
About a lucky man who made the grade
And though the news was rather sad
Well, I just had to laugh
I saw the photograph

今日の新聞を読んだんだ まったくもう
「勝ち組」の運のいい男の話だったけど
そのニュースはどっちかといえば悲しい話だった
だけど僕はつい笑ってしまった
紙面に写真も出ていたよ

He blew his mind out in a car
He didn't notice that the lights had changed
A crowd of people stood and stared
They'd seen his face before
Nobody was really sure
if he was from the House of Lords


彼は車のなかで頭がイッちゃってたんだ
気が付かなかったのさ 信号が変わったことを
野次馬がいっぱい立ち止まってじっと見ていた
誰もが彼の顔は前に見ているはずなんだけど
誰もわからなかったみたいだ
彼がその上院議員かどうかなんて

I saw a film today, oh boy
The English Army had just won the war
A crowd of people turned away
But I just had to look
Having read the book

今日映画を見たんだ  なんか複雑な気持ちだよ
英国軍が戦争に勝ったって話さ
たくさんの観客が顔をそむけたけど
僕は見ずにはいられなかった
本も読んでいたからね



I'd love to turn you on

できたらきみを 気分良くさせたいよ

++++++

Woke up, fell out of bed
Dragged a comb across my head
Found my way downstairs and drank a cup
And looking up, I noticed I was late

Found my coat and grabbed my hat
Made the bus in seconds flat
Found my way upstairs and had a smoke
And somebody spoke and I went into a dream

目を覚まし ベッドから転がり落ちる
途中引っかかりながらもクシで髪をとかす
やっとのこと下に降りてお茶を飲み
時計を見上げると 遅刻しそうだ  ハッハッハ

コートを探し 帽子を掴んで
時間ぴったりバスに間に合った
どうにかこうにか2階にあがり一服したんだ
誰かが話してきたけど
僕は夢の中に入っていった
ア〜ア〜ア〜

ア〜ア〜ア〜…

I read the news today, oh boy
Four thousand holes in Blackburn, Lancashire
And though the holes were rather small
They had to count them all
Now they know how many holes
it takes to fill the Albert Hall


今朝のニュース  ため息だよ
4,000もの穴が空いてたんだ 
ランカシャーのブラックバーンにね
どの穴も小さめだったけど
全部数えたんだってさ
だから今じゃ もうわかってる
アルバートホールを一杯にするにはいくつの穴が必要かって


I'd love to turn you on

僕はきみを目覚めさせたいんだ…

…………

(Words and Idioms)
make the grade 基準[目標]に達する、合格[成功]する
blow one's mind (人)の心を吹き飛ばす
House of Lords=〈英〉上院議員、貴族院議員
find one's way 苦労して進む、やっとたどり着く -
made the bus=バスに間に合う
in __ seconds flat _秒フラット[ちょうど・ジャスト・きっかり]で

日本語訳 by 音時


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以下は“A Day In The Life”の解釈について、僕なりに考えたことなどをつらつらと書いています。
興味のある方だけどうぞ…!(^_^;)


【1】参考:この曲についてのジョンとポールのコメント


(1981年 John Lennon Playboy Interviewより):

タイトル通りさ。ある日新聞を読んでいて、ふたつの記事に気がついたんだよ。ひとつはギネス家の跡取り息子が自動車事故で死んだという記事で、これがトップ記事だった。ロンドン市内の事故で死んだんだ。次のページには、ランカシャー州ブラックバーンに4000もの穴ができたっていう話が出ていたんだ。道路にだよ。それで、そいつも埋めようとしてたのさ。あの歌の中の「君を燃え上がらせたいな」っていうきれいなリック(lick)はポールのものだよ。あの歌詞の大部分はぼくのものだけど、ポールの頭の中にありながらどの歌にも使えないでいたあのリックをこの歌のために出してきたんだ。とてもいい文句だって、僕は思ったよ。

(2018年『GQ』Interviewより)Songfacts:

 "A Day In The Life "はジョンが始めた曲だった。彼は最初のヴァースを持っていて、よくこんなことがあったんだ。僕らのうちの一人がちょっとしたアイデアを思いついたとき、座って汗をかく代わりに、それをもう一人のところに持っていって、一緒に仕上げるんだ。それで、彼が最初の詩を作ったんだ: ロンドンの僕の音楽室で、「今日のニュースを読んだよ、やれやれ」という感じで、遊びながら2番を作り、それから真ん中につなげようということになったんだ。お互いに顔を見合わせ、「I'd love to turn you on」というところで、ちょっとエッジが効いていることがわかったんだ。それが効果的であることは分かっていた。

それが功を奏したんだ。そして、僕が持っていた別のセクションを付けたんだよ: Woke up, fell out of bed…そして、この曲を完成させ、フルオーケストラを使った壮大なレコーディングを行ったんだ。


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【2】参考:「A Day In The Life  知られざる10の真実

歌詞のなかで出てくる「上院議員が起こした交通事故」「イギリス軍が勝利した戦争の映画」「4.000もの穴が空いていたというランカシャーブラックバーン」の話などについては、詳しくはこちらの記事をご参照ください。たくさんの情報が掲載されています。

ビートルズの名曲「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」知られざる10の真実
(Rolling Stone誌)




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【3】人生のある一日…主人公は…?

・ジョンとポールがそれぞれに書いた詞をつなぎ合わせた曲ではあるものの、その作品を【A Day In The Life】=“人生のある一日“とネーミングをされているので、この曲の主題はそこにあるのだろうと考えます。

・主人公は2人?ジョンが歌う部分と、ポールが歌う部分で別人の生活を歌ったとも言えるし、いや、もしかすると同じ人物なんだけど、生まれ変わった二度目の人生?(TV番組「ブラッシュアップライフ」を夢中になって見たの影響かな)、またはパラレルワールドが存在していて…なんてことなのかもしれない。

・新聞のニュースで悲惨な最期を遂げた上院議員。悲しい事故なのに主人公は笑ってしまった。誰でも見たことある顔をしてた有名人なのに、野次馬どもは誰も上院議員と気が付かない様子だった…原因は薬物をやっていたからとも聞くし、死は突然訪れる、笑ってしまったのは、その無力感?生と死は紙一重ってことなのかな…。

・戦争映画は「みんな目をそらした」というのですから、画面には相当悲惨な場面が出ていたのでしょうか。それでも本を読んでいた主人公は目を離さずに見ていました…。
 そして、有名な歌詞 “I'd love to turn you on…”

・上のジョン、ポールのコメントにもあるように、ポールが前々から温めていたフレーズをこの場面に当てはめた、とのこと。ジョンも「ポール、グッジョブ!」と思ったということですね。

「クスリによる交通事故」「戦争の映画」の話をして、サウンドも不吉な感じ、これからなにか嫌なことが起こるような雰囲気になってくるなかで、最後のワンフレーズの歌詞「きみを目覚めさせたい  /きみを気持ちよくさせたい」というのは、どうも場面的にはそぐわない。主人公の意識の切り替えがあるように思いました。



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【4】“I'd love to turn you on”について

◆まずは英語の文法上のことから意味を考えます。

(1)なぜ「want to... 」ではなく、また「I'd like to…」でなく、「I'd love to...」なのか?


・「would love to …」=「とても〜したい」。主語の強い願望を丁寧に言いたい時に使われるようです。
・「want to」が主語の願望をストレートに意味するのに対し、「would love to …」は婉曲的に主語の願望を言いたい時に使われることが多いです。

また、
・would love toは「ぜひ~したいです」であるのに対し、would like toは「~したいです」という意味。どちらも何かをしたいことを表すフレーズですが、loveの方が「何かをしたい」気持ちを強調した言い方でしょう。

一方、
(2)“turn you on”について

・スイッチを入れる
・ワクワクさせる、しびれさせる、メロメロにさせる、グッとくる
・〔性的に〕刺激する、興奮させる、関心を持たせる、その気にさせる

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◆2つくらい意味を考えました。

その1:主人公はポジティヴに世界に呼びかけている。

暗いニュースの多い社会のなかで誰もが世界の終わりを感じているかもしれないけど、このまま終わっていいはずがない。大変なのはわかっているけど、目を覚ますんだ…。僕も気づいてるけど、きみも目を覚ましてほしいんだよ…。


その2:主人公は自己中心的で、社会のことはそれはそれ、僕は幻想の世界に浸りたい…。

この曲がドラッグのことをほのめかしてるとして、BBCは放送禁止にしたということですが、まあそういうこと(^_^;)です。

 ポールの歌う部分の登場人物の最後の場面はバスの2階で一服をしてそのまま夢の世界と現実の区別がつかないようになっていきます。
 社会の出来事について、あれこれと考えない。4,000の穴が何で空いたのか?なんてどうでもよくてアルバートホールを埋めるにはいくつの穴があればいい、なんてだらないことを連想しって自由でしょ?いいんじゃない?
(ちなみに、アルバートホールの座席は8,000席あり、9,000人まで収容可能とのこと)

 なんかここで僕が思い出してしまったのは、井上陽水さんの「傘がない」の歌詞です。
(脈絡なしですが)(^◇^;)


【5】暴論:陽水さん「傘がない」と「A Day In The Life」

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「傘がない」もどう解釈するのかは色々人によって違うとは思いますが…

・今朝来た新聞の片隅に書いてあった記事「都会では自殺する若者が増えている…」
・テレビでは「我が国の将来の問題を…」誰かが深刻な顔をしてしゃべってる。

だけども、そんなことより、
主人公の心を占めるのは、彼女に会いに行くのに「傘がない」という私的な問題。
社会で色んな問題はあるのだけどきみのこと以外は考えられなくなってる自分だけど、
それはいいことだろう???


…この社会で色んな問題があり、若者としても将来の社会をどうするか考えなくてはいけないとわかっていても…僕は僕であり、僕が「自分ごと」に感じてるのはもっと身近なこと、なのだ。

“A Day in the Life”って「傘がない」と同じことを歌ってる?なんていうと、井上陽水さんのファンとビートルズのファンの両方からバッシングを受けそう(^_^;)だけど、“A Day in the Life”でも社会で起こっている問題を新聞や映画で見た主人公なのですが、それはそれだけど僕は僕、僕はいま社会のことなんか考える余裕はない。僕が関心のあるのは、それよりも どうしたら気持ちよくなれるのか?ってことなんだ。“I'd love to turn you on”ってそういうことなのかな、なんて思ったので「傘がない」を思い出してしまったのです。(^_^;)

 時代からすると、ビートルズの「サージェント・ペッパー…」の方が先なので、もしかすると陽水さんは“A Day In the Life”を聴いて「傘がない」を着想したのかな…なんて。
 井上陽水さんもそんなことイッてないと思うし、また、ファンの方に怒られてしまいそうだな…。

あくまでも個人の受け止めですので、怒らないでください…。

***********

名盤 The Beatles「Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band」の全曲和訳にお付きいただいてありがとうございました!

 またこれからも聴く中でたくさんの発見が出てくるものと思います。和訳の修正や、情報の付け足し修正なども行っていく予定ですので、どうぞよろしくお願いいたします!



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