僕の初めて買った洋楽のレコードは、サイモン&ガーファンクルのゴールデン・ベスト。これは2枚組で日本編集盤でした。

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「擦り切れるまで聴いた」とはこのことでしょう。“明日に架ける橋”のイントロはチリチリ静電気がして、“サウンド・オブ・サイレンス”ではなんと“針飛び”するようになってしまいました…(悲)。


 そのなかで、D面に収録された、ちょっと変わった雰囲気の「コンドルは飛んでいく」はそのタイトルも、サウンドも他の曲とは違って、印象的でした。この楽器何使っているのかな?なんて考えたり…。


◆「コンドルは飛んでいく」(El Cóndor Pasa)。Google翻訳さんで「スペイン語→日本語」翻訳をしたら「コンドルが起こる」と出ましたが、まあ「コンドルは飛んでいく」ということなのでしょう。


 パリでのツアー中のポール・サイモンが、ペルーのアンサンブル、ロス・インカの "El Cóndor Pasa"を聴いて、気に入ったのでアルバム「Bridge Over Troubled Water」に収録するために英語の歌詞を提供できないか、とお願いして許可を得たといいます。
 英語歌詞をつけ、ポールが「El Cóndor Pasa (If I Could)」という曲名で作者クレジットに記載されるようになりました。

コンドル…優雅に空を舞う姿などからも、アンデスの神話などでも重要な役割を果たしてい、ますよね。


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Songwriter(s)
Daniel Alomía Robles (music), 
Paul Simon (English lyrics), 
Jorge Milchberg

Released in 1970
US Billboard Hot100#18 
From the Album “Bridge Over Troubled Water”

*原詞の引用は太字

[Verse 1: Paul Simon]
I'd rather be a sparrow than a snail
Yes I would
If I could
I surely would

できるならカタツムリじゃなく
スズメになりたいよ
そう 僕だったらそうするよ
できるものならば
きっと そうするよ

[Verse 2: Paul Simon]
I'd rather be a hammer than a nail
Yes I would
If I only could
I surely would

釘よりはハンマーになりたいよ
そうさ 僕はそうする
もしできるならばね
間違いなくそうするさ

[Bridge: Art Garfunkel]
Away, I'd rather sail away
Like a swan that's here and gone
A man gets tied up to the ground
He gives the world
Its saddest sound
Its saddest sound

遠く 遠くに 船出したい
あちこち移動する 白鳥のように
人間は大地に縛り付けられて
世の中に聴かせてる
その いちばん悲しい声を…

[Verse 3: Paul Simon]
I'd rather be a forest than a street
Yes I would
If I could
I surely would

街路より 森林になりたいよ 
そうさ そうするよ
できることならば
間違いなく そうするさ

[Verse 4: Paul Simon]
I'd rather feel the earth beneath my feet
Yes I would
If I only could
I surely would

自分の足元の大地を感じてみたいんだ
そうさ そうしたい
もしかなうことならば
きっとそうするよ

(Words and Idioms)
would rather=~する方が良い、むしろ~したい、むしろ~した方が良いと思う
snail=カタツムリ、のろま
here and gone=今日はここにあるが明日は消え去る、来たかと思うとまた行ってしまう、絶えず動き回って、つかの間の、はかない、
get tied up=完全に縛り付けられる、忙殺される

日本語訳 by 音時

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「B」より「A」の方になりたい…という歌詞。

・「カタツムリ」より「スズメ」になりたい。
…のろのろ這い回るカタツムリより、自由に飛び回れるスズメがいい。また、スズメはカタツムリを見つけて捕食すると思うので、食べられるより食べる方の側になりたい…ってことなのでしょうかね。カタツムリが“snail”というのは初めて知りましたが、そのあとの釘(nail)と韻を踏むので選ばれたんでしょうね。

・「釘」より「ハンマー」になりたい。
…やはり「打たれる」より「打つ」側になりたいってことでしょうかね。

・「白鳥」のように
…白くて優雅、という意味ではなく、そのあとの“here and gone“をみると、回遊する「渡り鳥」の習性をうらやましく思ってる、って意味なのでしょう。それに対して人間は地に縛り付けられて…悲しげな声を上げている…。

・「街路」より「森林」になりたい。
…都市計画のもと人工で作られる「街路」よりも、自由に生きたい…ってことでしょうね。でも森林も間伐しないと育たないのでは…←無粋なツッコミ。

…やはりこのときのポール・サイモンは「自由」にとっても憧れを持っていたんだろうと思います。でも、「B」より「A」になりたい、という言葉にも、できるならば…いやゼッタイに…と自分のなかでも揺れている感情が伝わってきませんか…。そうでない自分(たち)について歌った歌なんでしょう。

 ポールが80年代以降、アフリカ音楽、ワールド・ミュージックに傾倒していくことを思うと、うなずけますね…。

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◆僕は知らなかったのですが、この曲の英語のWikipediaに「訴訟」のことが大きく取り上げられておりました。その情報によると、

1970年末、ダニエル・アロミア・ロブレスの息子でペルーの映画監督であるアルマンド・ロブレス・ゴドイは、ポール・サイモンを相手取り著作権訴訟を起こし、成功した。訴訟の理由は、この曲が1933年にアメリカ合衆国で著作権を取得した彼の父親によって作曲されたものであるというものでした。アルマンド・ロブレス・ゴドイは、「誤解」と「正直な間違い」であると考え、ポール・サイモンを悪く思っているわけではないと述べています。

「ポール・サイモンは他の文化にとても敬意を払っていたので、それはほとんど友好的な裁判でした。アルマンド・ロブレス・ゴドイは、彼はパリで、現地語グループであるロス・インカの曲を偶然耳にした。彼はその曲が気に入り、バンドに許可を求めに行ったが、バンドが間違った情報をポールに与えた。ホルヘ・ミルヒベルクは「それは18世紀の伝統的な民謡で、父の作曲したものではない」と言った。それ以上こじれることなく裁判になった。
…そうです。

◆ポールの弾き語り。TV番組「セサミ・ストリート」から。




◆2003年ニューヨークでのS&Gのステージから。