いつのまにか、この哀愁深いナンバーが全米チャートのトップになっていました。
シンプリー・レッドの“Holding Back the Years”です。

◆イギリスのマンチェスター出身の赤毛のボーカリスト“ミック・ハックネル”。友人のニック・モスらと結成したグループの名前は、フランティック・エレベーターズ。そのグル−プを3年続けた後、再編成してできたのがシンプリー・レッドでした。

 僕の持っている「ビルボード・ナンバー1・ヒット Ⅲ 1985ー1988」(音楽之友社)のこの曲の解説にはミックのコメントが書いてありました。

 「ソロになることを考えて作ったバンドだったよ。最初に考えた名前は“レッド”だった。僕は髪が赤いからね。“シンプリィ”が付いた理由だけど、マネージャーがバンド名を聞かれて、“ただの(シンプリィ)レッドだよ”って答えたからさ。」

 という話。ちょっとウソみたいだけど、ありうる!とも思いました(^_^;)。


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◆“Holding Back the Years”はミックの自伝的な歌とのことです。

 ミックは17歳の時、父親の家に住んでいる時にこの曲を書いたと言います。」2018年のインタビューでミックは次のように言っています。


 この曲は美術を学んでいたマンチェスター・スクール・オブ・アートの教員からインスピレーションを得ました。教員は、アーティストが意識の流れの中で作業しているときに最も素晴らしい絵画が生まれると示唆してくれたので、それを曲作りに応用しようとした、とのこと。("Holding Back the Years" はこの方法を使って書いた2曲目でした)

 2歳のとき母親が家族を捨てて出ていってしまい、ミックは父親と叔母のネリーさんと4人の娘と代わる代わる育てられたと言います。この曲はそんななか、父親からの期待と母親への愛情を求めて耐えていた思いが込められているようですね。
特に「父(pater)の願いで息がつまり、母(mater)の腕に抱かれたくて…」という歌詞はじーんときます。

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Songwriter(s)
Mick Hucknall、Neil Moss

Released in 1986
US Billboard Hot100#1
From the Album “Picture Book”

*原詞の引用は太字

Holding back the years
Thinking of the fear I've had so long
When somebody hears
Listen to the fear that's gone

ずっと耐えてきた年月
長い間 抱えてた恐怖のことを考えていた
誰か話を聞いてくれるなら
やっと消えていった不安の話を聞いてくれ

Strangled by the wishes of pater
Hoping for the arms of mater
Get to me the sooner or later

父親の願いに 息が詰まりそうに苦しんで
母親の腕に抱かれたくて仕方なかった
いつかは イラついて爆発するって思ってた

Holding back the years
Chance for me to escape from all I've known
Holding back the tears
'Cause nothing here has grown

自分を押さえつけてきた年月
自分の知るすべてから逃れたかったんだ
涙をこらえてきたんだよ
だって泣いたって何も育ってはいかないから

I've wasted all my tears
Wasted all those years
And nothing had the chance to be good
Nothing ever could yeah, oh

沢山の涙をむだにしてきたんだ
何年も時を費やしていった
何も良くなるチャンスは訪れず
何も変わったりしなかった

I'll keep holding on
I'll keep holding on
I'll keep holding on
I'll keep holding on
So tight

それでも頑張ってきたよ
それでも耐えてきたのさ
あきらめないでやってきた
胸に秘め 持ちこたえて
ぐっとこらえて

Well, I've wasted all my tears
Wasted all of those years
And nothing had the chance to be good
'Cause nothing ever could, oh, yeah
Oh...

ああ 涙も無駄に流したし
月日も費やしてきた
いいことなんて何もなかったし
僕のできることなんてなかったんだ
ああ…

I'll keep holding on
I'll keep holding on
I'll keep holding on
I'll keep holding on
Holding, holding, holding

Ahh, la-la, la-la, la-la
I say ooh yeah
That's all I have today
It's all I have to say

ああ 今話したとおりさ
今日は話せるのはこれくらい
話せることは話したんだよ…

(Words and Idioms)
strangled 【形】〔声が〕喉を締められたような、息の詰まるような
pater=((主に英学生俗やや古))おやじ, 父
mater=〈英〉母親、お母さん

日本語訳 by 音時

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◆邦題は“The”が取れて“ホールディング・バック・イヤーズ”ですね(^_^;)。

◆また、この曲のWikipediaに次のような解説もありました。

ミックによると…

 この曲が完成するまで何の曲か気づいていなかった。「家を出て自分の印を付けなければならないと分かっているが、外の世界は怖いという瞬間についての曲なんだ。外の世界は怖い。だから、年を取るのをためらうんだ。

◆この曲の作曲クレジットはミックと、フランティック・エレベーターズを一緒に組んでいた友人のニール・モスの名前があります。 しかしミックによると、モスはこの曲を共同作曲をしたわけではないとのこと。ただ、この頃、2人は他の多くの曲を一緒に書いていたことから「僕たちが過ごした素晴らしい時間を思い出すために」クレジットが追加されたとのことです。


 この曲はフランティック・エレベーターズ時代からのレパートリーの1曲だったんですね。下の動画が、フランティック・エレベーターズの“Holding Back the Years”。うーん、哀愁の感じが薄いなあ。この曲の「I'll keep holding on…」のコーラスは、シンプリー・レッドを結成した後、何年も経ってから加えられた部分であるとのこと。