この曲を初めて聴いたとき、"Running On Empty(孤独なランナー)"を想い出しました。
歌の出だし…主人公は「走ってる」んです。

 曲を作って歌ったのは"Running On Empty"の方が先になりますが、両曲がジャクソンが自分の自伝を歌っているとしたら、この"The Barricades Of Heaven"で歌われている時代の方が前ですね。歌詞は、ジャクソンが音楽を始めた頃のことから歌われています。


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Writer(s): Jackson Browne, Kevin Mccormick, Mauricio Lewak, Scott Thurston, Luis Conte, Mark Goldenberg, Jeffrey Young 

Released in 1996
From The Album“Looking East”

*原詞の引用は太字

Running down around the towns along the shore
When I was sixteen and on my own
No, I couldn't tell you what the hell 
those brakes were for
I was just trying to hear my song

海辺の町を駆けずりまわってた
俺は16歳 たったひとりで
前へ進もうとすると どうして
止めようとするのか意味がわからなかった 
自分の歌をただ聴こうとしていただけだった

Jimmy found his own sweet sound 
and won that free guitar
We'd all get in the van and play
Life became the Paradox, 
the Bear, the Rouge et Noir
And the stretch of road running to L.A.

ジミーは自分の素敵なサウンドを見い出して
ギターをタダで手に入れた
俺たちはヴァンに乗り演奏してまわったんだ
音楽生活が"パラドックス"や"ベアー" 
そして"ルージュ・エ・ノワール"で始まった
ロスへと続く道を駆けて行ったんだ

Pages turning
Pages we were years from learning
Straight into the night our hearts were flung

Better bring your own redemption 
when you come
To the barricades of Heaven 
where I'm from

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何年も学んでいった時代のページさ
心が躍ったあの夜へとまっしぐら

来るときは罪の償いになるものを
持ってきた方がいい
天国のバリケードに来るときは
そこは僕が生まれたところ

All the world was shining from those hills
The stars above and the lights below
Among those there 
to test their fortunes and their wills
I lost track of the score long ago

あの丘では世界はすべて輝いて見えた
天空の星たちも 地上の灯りも
自分の運勢や意思を試そうとする
そんな人達もいた
ずいぶん前に忘れてしまったけれど

Pages turning
Pages we were years from learning
Straight into the night our hearts were flung

Better bring your own redemption 
when you come
To the barricades of Heaven 
where I'm from

ページをめくる
学んでばかりだったあの時代へ
心が躍ったあの夜へと一直線に

きみが来るときは
償いを持ってきた方がいい
僕の生まれた
天国のバリケードに来るときは

Childhood comes for me at night
Voices of my friends
Your face bathing me in light
Hope that never ends

夜にふと子どもの頃を思い出す
友だちの声が聞こえるんだ
きみの笑顔が眩しくて 僕は涙にくれる
ずっとこうしていたいと願うんだ

Pages turning
Pages torn and pages burning
Faded pages, open in the sun

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破れたページ
日焼けしたページに
太陽のなかで
色あせたページ

Better bring your own redemption 
when you come
To the barricades of Heaven 
where I'm from.

Better bring your own redemption 
when you come
To the barricades of Heaven 
where I'm from. 

きみが来るときは
償いを持ってきた方がいい
僕の生まれた
天国のバリケードに来るときは
 

(Words and Idioms)
stretch of=長く伸びた~、一続きの~ 
flung=→fling の過去形・過去分詞
fling=〔荒々しく〕~を放り投げる[投げ捨てる] 
redemption=(神学)キリストによる罪の贖(あがな)い
lose track of~=~の跡を見失う、~を忘れる
bathe=入浴する、浸す、おおう

日本語訳 by 音時

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◆2nd verseに出てくる"Jimmy"が誰だかはわかりません。色々探してみたところ、こちらのWebサイトに憶測ではありますが、"Jimmy"のことや興味深いことが沢山書かれていました、<a href="http://markcz.com/barricades-of-heaven/" target="_blank" title="(こちらをクリック)">(こちらをクリック)</a>
 こちらのサイトでは、若い時にジャクソンはニッティ・グリッティ・ダート・バンドと交友を深めていたことがあり、このバンドのギタリストがジミー(Jimmie Fadden)だったので、彼のことではないか?という話が書かれています。

また“the Paradox, the Bear, the Rouge et Noir”という固有名詞が出てきますが、これはカリフォルニアのオレンジ・カウンティに存在していたバーの名前であるとのこと。こちらのバーでジャクソンは演奏をしてた。音楽の生活が始まっていった…ということなのでしょう。

また、さらに興味深い話があります。"The Barricades Of Heaven"の原曲には最終的にレコーディングされなかった一節があるとのことをジャクソン本人が話しています。レコーディングされなかった歌詞は以下の通り、和訳は僕のいいかげん和訳です(^▽^;)。

************

Michael robbed a liquor store 
in some god-forsaken mall
Must have crossed some kind of line in his head
He stopped to shoot a goddamn bottle off the wall
And in that moment, he turned, he was dead

マイケルは盗みを働いたんだ
さびれたショッピングモールの酒屋でね
ヤツは頭のなかで一線を越えてしまったに違いない
壁から落ちた瓶の音に驚いて 打つのを止めたんだ
その瞬間 振り返ったとたん 撃たれて死んだのさ

************

このマイケルが誰だかはジャクソンは明らかにしていません。


◆うーん、この曲にまつわる話は調べると色々出てくるなあ(^▽^;)。

僕の持っている本「INSPIPRATION」(アミューズブックス)のジャクソンへのインタビューでは、「The Barricades Of Heaven」のタイトルについて聞いています。

Q:この曲はタイトルが先にあって書いた曲ですか?

Jackson:ううん、あれは見つけ出さなければいけない曲だ。いくつものヴァージョンを書いてしまったよ。しまいには、脚本家で詩人の友人にまで助けを求めたくらいだ。この場合「バリケード」という言葉を探していたんだけど、それがわからず。そこら中を探していたんだ。そのたった一つの言葉を探して。曲を書いている時というのは。直感的に。曲に合う何かを探しているものなんだ。(中略)あのタイトルだけを取ってみても、数ページに及ぶ候補があったんだ。見せてあげてもいいよ。あの言葉を、どれだけの言葉のなかから見つけ出したことやら。

ああ、あのときは探している言葉が見つからないので助けてほしいと友人に頼んだんだけど、どうやら僕は彼を誤解させてしまっていたようなんだ。と言うのも、ようやく僕が探していた言葉を見つけ、それを彼に告げたら、彼はすごく気に入ってはくれたものの、「なんだ、探していた言葉と全然違うじゃないか」と言ったんだ。つまり僕らはずっと違う場所にいた、ということなんだ。お互いひとつ峡谷を挟んで、別の場所を掘り起こしていたんだよ。


◆ジャクソンは自分の若かりし頃から今までのことを想い出し、この曲では「天国」について歌いたかったのでしょうか。天国への道のりを歌うのに何かしっくりとこない感じや自分が言いたいことについてもやもやとした何かがあったんでしょう。でも何と言って表現すればよいのか、ぴったりとした言葉が出てこない…。そしてそれが「Barricade(バリケード)」という言葉だった、というわけです。

ここで天国にちなんだ有名な2曲を想い出します。レッド・ツェッペリンの代表曲"Stairway To Heaven(天国への階段)"、そしてボブ・ディランの曲"Knockin' on Heaven's Door(天国への扉)"。両曲とも"天国にどうやって魂がたどり着くのか"を歌っているのだと解釈しますが、階段を昇って天国にたどり着き、扉をノックした後、歌詞では特に歌われていませんが、ほぼ何も問題なく天国に入っていけそうに思います。たどり着けば何も障害はそこにはない、といった感じです。

 この2曲は有名ですから当然ジャクソンも知っているはず。でもジャクソンはここで自分の考えにピッタリとくる言葉を苦労したあと探し出した。それが"バリケード"でした。
 そうなんです。ジャクソンにとっては天国はたどり着けば入れるものではなく、"バリケード"で覆われているもの、だったんです…。そしてこの"バリケード"を越えて天国に入るためには、"your own redemption(償い)"を持ってくる(Bring)のがいい、と歌います。

その"Redemption"とは何なのか…これは人によって異なるのでしょう。あなた自身の"償い"は? 僕にとっての"贖うべきこと"は何? 天国に辿り着くときにはそれを持って行くこと、をジャクソンはおすすめしてくれてます…(^▽^;)。

仕事を定年したら考えようかな…。






◆Glastonbury Festival on Saturday 26th June 2010.