「ビルボードチャート日記」by 星船


 日本での表記はピート・タウンゼンドですね。この曲“Face the face”。

この曲が収録されたアルバム「White City :The Novel」は僕はまだ聴いていないのですが、コンセプトアルバムのようです。

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 Wikipediaによると、このアルバムのコンセプトは

・タウンゼンドが育った西ロンドン地区ホワイトシティの低所得者向け住宅地が舞台となっている。
・この物語は、1960年代の文化的対立、人種間の緊張、若者の夢と希望を描いている。・「売春婦の子供たち」「暗闇に続く道、家に続く道」「ごみ箱とフォード・コルティーナが見える独房」に住む絶望した住人たちの世界 (後略)

であるとのこと。


 最初に“Face the face”というタイトルを聴いた時、1981年のThe Whoのアルバム「Face Dances」(全米シングル18位“You Better You Bet“)を思い出しました。何か関係があるのかなと思っていたのですが、それは関係ないのかな。

◆この曲のサウンドについては、この曲のWikipediaに次のように紹介されていました。

ピート・タウンゼンドがこの曲について聞かれたとき、こう答えました。
“Face the Face“はDX7のような新しいキーボードで作ったんだけど、すごく速くてアップビートなものを作りたかったんだ。そこで僕はいくつかのブロックを作り、ラビットに「これを40個作ってくれ」と言ったんだ。これは非常にニューエイジ的なレコーディングで、だからかなりモダンなサウンドになったと思うよ。サイモン・フィリップスがドラムをオーバーダビングし、その後ブラスをオーバーダビングし、バッキング・ボーカルをオーバーダビングし、すべてをオーバーダビングしたんだ。ラビットのシンセサイザー演奏にすべてオーバーダビングされたんだ。

 なかなかカッコいいこの曲、ピートはリズムを強調したサウンドとコーラスをバックに、ギターを持たずに、メッセージのある歌詞を歌います。


 さて、それはどんなメッセージなんでしょうか?


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Songwriter(s) Pete Townshend

Released in 1986
US Billboard Hot100#26
From the Album “White City: A Novel”

*原詞の引用は太字

Face the face, 
got to face the face
Face the face, 
got to face the face

顔を見てみろよ
顔と向き合うんだ
顔を見ることだ
顔と向き合わなきゃダメさ

You must have heard the cautionary tales
The dangers hidden on the cul-de-sac trails
From wiser men who've been through it all
And the ghosts of failures spray-canned up on the wall

教訓ってヤツを色々聞いてきたよな
行き止まりの道には危険が潜んでるんだ
あらゆることを経験した賢者が言ってるぜ
失敗した亡霊たちは壁にスプレーで書かれてる

We've got to judge the judge
We Got to find the finds
We've got to scheme the schemes
We got to line the lines
We must stake the stakes
We got show the shown
We must take the takes
And know the known

俺たちは審判を下さなければならない
掘り出し物を見つけなきゃいけない
俺たちは計画を立てなきゃならない
線を引かなきゃいけないんだ
俺たちは杭を打たなければならない
好機を逃しちゃダメだ
俺たちは自分の考えを持つことだ
知るべきことを知ることさ

Try to place the place
Where we can face the face.
We got to face the face
Try to place the place
Where we can face the face

居場所を確保するんだ
俺たちが顔を合わせることができる場所
俺たちは向き合う必要がある
俺たちの居場所を決めようぜ
そこで俺たちは顔を合わせるのさ

Face the face,got to face the face.
Face the face
got to face the face.

顔を向けろ 顔を向けなきゃいけない
顔をあげろ 
顔をあげるんだ

Got to
Got to

そうするんだ
それが重要なんだ

You must have tried and defied belief
Maybe found futility in insular grief
I need your hunger you need mine
A million appetites can swallow up time.

試行錯誤しても信念を曲げなかったよな
孤立した悲しみの中じゃ
見つけるのは無駄なことだけかもしれないな
俺にはおまえの飢えが必要で
おまえは 俺の飢えが必要なんだ
百万もの食欲が  時間を飲み込んでしまうんだ

We've got to fool the fools
We got to plan the plans
We got to rule the rules
We got to stand the stands
We got to fight the fight
We must fall the falls
We got to light the light
We got to call the calls

馬鹿者たちを騙さなくちゃいけない
俺たちは計画を立てなくちゃだめさ
俺たちはルールを守る必要がある
自分の立場を明確にしなきゃいけない
俺たちは戦わなきゃだめなんだ
倒れることになってもね
俺たちは光を照らさなくちゃいけない
自分を呼ぶ声を求めなきゃいけない

We must race the race
So we can face the face
We got to race the race
We must race the race
So we can face the face

俺たちは競争しなきゃだめなんだ
だから顔と向き合うことさ
競い合って成長するんだ
自分の人種を認識して
俺たちは顔と向き合う必要がある

Face the face
We got to face the face
We got to race the race
We got to

顔と向き合うんだ
そうしなくちゃいけない
自分の人種を認識して
そうするんだ

Keep looking

見続けることさ

New York! Chicago!
London and Glasgow!
Keep looking!

ニューヨーク! シカゴ!
ロンドン! グラスゴー!
目を離さないで

Keep on looking
Keep on cooking
Got to stay on this case
Study the pix
Watch the flix
We've got to find the face.

見続けることさ
調理しつづけるんだ
このことから離れちゃいけない
写真の研究
映像を見る
俺たちは 顔を見つけなきゃいけない

Face the face ,got to face the face
Watch the flix
Got to

顔と向き合う そうしなきゃだめさ
映像をよく見ろ
そうするんだ

We've got to judge the judge
We got to find the finds
We've got to scheme the schemes
We got to line the lines
We got to fight the fight
We got to fall the falls
We got to light the light
We got to call the calls

俺たちは審判を下さなければならない
掘り出し物を見つけなきゃいけない
俺たちは計画を立てなきゃならない
線を引かなきゃいけないんだ
俺たちは戦わなきゃだめなんだ
たとえ倒れることになっても
俺たちは光を照らさなくちゃいけない
自分を呼ぶ声を求めなきゃいけない

Try to place the place
Where we can face the face.
We got to face the face
Try to place the place
Where we can face the face.

居場所を確保するんだ
俺たちが顔を合わせることができる場所
俺たちは向き合う必要がある
俺たちの居場所を決めようぜ
そこで俺たちは顔を合わせるのさ

Try to place the place
Where we can face the face.
Keep looking, keep looking
We must race the race
So we can face the face.
We got to race the race
We must race the race.
So we can face the face
We got to face the face
We got to race the race

居場所を確保するんだ
俺たちが顔を合わせることができる場所
見続けろ 目をそらすな
自分の人種を認識して
そうして向き合うのさ
俺たちは競いあって生きてる
俺たちは競争しあうんだ
だから顔を上げて向き合うんだ
顔を見合って
人種を認識して

(Words and Idioms)
cautionary tale 《a ~》教訓(となる話)
cul‐de‐sac=袋小路.窮地,窮境; (議論の)行き詰まり
    【語源】フランス語「袋 (sack) の底」の意
trail=引きずった跡、通った跡、痕跡、(山中などの)小道
find=掘り出し物,めっけもの;(考古学的な)発掘物
cf‥show=機会, 好機
take=個人の見解、見方、解釈
known=知られている事、既知の物質
insular [形] 島の;島に住む[ある]島のように)孤立した、偏狭な
futility 【名】 無用[無益]であること 目的[効果]のない行為
flix=licks(映画)

日本語訳 by 音時

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◆“Face the Face”…顔に向き合えよ、っていう意味なんでしょう。

目に見えるものは自分の外側のものだけだと、自分勝手な思考に陥り、自分を見失う…そういうことありますよね。そんなとき問いかける言葉は「おまえ自分の顔を見てみろよ」…。
 ナルシスト?じゃない僕は、あまり鏡でも自分の顔は見ないなあ…(^_^;)。

◆“Face the face”、その言葉のように、同じように「動詞+名詞」の言葉遊びも兼ねて歌詞が続きます…。
「 judge the judge」「find the finds」「scheme the schemes」「line the lines」「stake the stakes」「show the shows」「 take the takes」「know the knows」 …。
 でもはっきりしているのは、人生における困難に立ち向かえ、直視しろ、ってことなんだろうと思いました。

 "Try to place the place Where we can face the face." という歌詞は私的な話だけでなく、私たちが生きる社会をどうしていかなきゃいけないのか、という社会的な問題提起も含まれているのかな。

 それがこのコンセプトアルバムのなかで、どんなメッセージになっているのかはアルバムを聴かなきゃわからないんだろう。この曲のアルバムのなかでの位置はA面の3曲め、まだオープニングを受けての展開、の位置で、これだけ“前向きな“(僕の受け止めです)歌詞の曲を入れるのは、そのあと「起承転結」の「転」が気になります。

White Cityimages

◆この曲の歌詞でちょっと解釈に迷うのは、この曲およびひいてはアルバムの意味にもつながりそうな“race the rece”。“race”とは「競争」「レース」の意味と、「民族」「人種」という意味がありますよね。ダブルミーニングなんだろうと思いますが、「レースに勝つんだ」(=タフに生きろという意味)という意味以外に「民族競争に勝つ」という意味に取ったいいのかは、ちょっと日本生まれの日本育ちの僕は感覚的にわからないと思ってしまいました。これはやっぱり…アルバム全体のなかから意味を類推しないといけないかな。

Peteimages


◆この曲が最高位28位を記録した週の全米ビルボードチャートはこちらです。
 1986年1月18日付 全米シングルチャート

◆TV(1985)でマイクで歌うピート…回ってます!