このブログでこれまで取り上げてきたリンダ・ロンシュタッドの和訳記事はこちらから。
リンダのアルバム「夢はひとつだけ(Simple Dreams」で“It's So Easy”と並んで、気合十分のロックを聞かせてくれたのがこの「私はついてない」=“Poor Poor Pitiful Me”でした。
歌詞に「YOKOHAMA=ヨコハマ」が出てくることもあって日本でも人気を集めた曲でしたね。(そのあとの"Mama"と韻を踏むために"Yokohama"としたんでしょうね)

◆作者は"ロンドンの狼男"のヒットのあるシンガーソングライター“ウォーレン・ジヴォン(Warren Zevon)”。
ウォーレンの"Poor Poor Pitiful Me"は1976年リリースのアルバム「Warren Zevon」に収録されているので、リンダはこのアルバムを聴いて、自分でも歌いたいと思ったのではないかな。ちなみに、このアルバムにはリンダがカバーした"Hasten Down The Wind"や"Carmelita"も収録されています。また、1曲めが"Frank And Jesse James"という曲が入っているので、ウォーレンのファンはこのアルバムを聴くと“Poor Poor Pitiful Me”の歌詞に“Jesse James”が再度出てくるので、ニヤッとする…のでしょうね。

僕の持っているムック本「ジャクソン・ブラウンとカリフォルニアのシンガー・ソングライターたち」(シンコー・ミュージック)では、このアルバム「Warren Zevon」について以下のように紹介しています。
舞台になっているのはアメリカの夢の終着駅になっているカリフォルニアのハリウッドであり、その点はイーグルスやジャクソン・ブラウンとが、彼らがロマンティックな光景を描きがちなのに対して、ジヴォンはジャンキーやギャンブラー、自称女優といった裏通りを生きる人を主人公に、そこに皮肉やブラックユーモアをこめて物事を語る。
ウォーレンはジャクソン・ブラウンやブルース・スプリングスティーンなどと親交もあり、ウエスト・コーストのアーチストを中心に大きな影響を与えたミュージシャンでした。2003年9月、闘病の末に肺癌により死去しています(R.I.P…)。

Written by Warren Zevon
c 1973 Warner-Tamerlane Publishing Corp & Music (Bmi)
Released in 1978
US Billboard Hot100#31
From The Album"Simple Dreams"
:原詞は太字
Well I lay my head on the railroad track
Waiting on the Double E
But the train don't run by here no more
Poor poor pitiful me
そうアタシは列車の線路に頭を寝かせて
ダブルE 機関車を待ってたの
でも もう機関車はここでは走ってないんだって
かわいそうでついてないアタシ
Poor poor pitiful me
Poor poor pitiful me
Oh these boys won't let me be
Lord have mercy on me
Woe woe is me
かわいそうでついてないアタシ
哀れで みじめなアタシ
ああ 男たちはアタシを放っておかないの
神さま 哀れんでちょうだい
このアタシを…
Well I met a man out in Hollywood
Now I ain't naming names
Well he really worked me over good
Just like Jesse James
そう ハリウッドのはずれで男に会ったわ
名前も名乗ったりしなかったけどね
そう アイツは本当にアタシを痛めつけてくれたわ
まるでジェシー・ジェイムスみたいにね
Yes he really worked me over good
He was a credit to his gender
Put me through some changes Lord
Sort of like a Waring blender
そう アイツはアタシを
本当にひどい目に合わせてくれたのよ
男はそうあるべきって思ってるのね
神さま アタシを何か変えてちょうだい
ジューサーみたいにかき混ぜて
Poor poor me
Poor poor pitiful me
Oh these boys won't let me be
Lord have mercy on me
Woe woe is me
かわいそうでついてないアタシ
哀れで みじめなアタシ
ああ 男はアタシを放っておいてくれないわ
神さま 哀れんでちょうだい
このアタシを
Well I met a boy in the Vieux Carres
Down in Yokohama
He picked me up and he threw me down
He said "Please don't hurt me Mama"
そうよ 一人の男と出会ったの
ヨコハマの古い町でね
アタシをナンパして押し倒しておきながら
そいつはこう言ったのよ
“ママ お願いだから痛くしないでね”って
Poor poor pitiful me
Poor poor pitiful me
Oh these boys won't let me be
Lord have mercy on me
Woe woe is me
ああ アタシって かわいそうでついてない
アタシって 哀れで みじめよね
ああ 男たちはそんなアタシを放っておかないの
神さま 哀れんでちょうだい
このアタシを
Poor poor poor me
Poor poor pitiful me
Poor poor poor me
Poor poor pitiful me
Poor poor poor me
Poor poor pitiful me
かわいそうでついてないアタシ
哀れで みじめなアタシ
ああ 男たちは放っておいてくれないわ
神さま 哀れんでちょうだい
このアタシを…
(Words and Idioms)
Double E= EE train=アメリカの鉄道路線の幅規格。ダブルE型機関車の通称。
pitiful=かわいそうな,哀れな.
poor=哀れな,不幸な,気の毒な
Have mercy on=哀れむ、慈悲をかける
work over=を殴りつける、(人)を痛めつける
Jesse James=アメリカ西部開拓時代のガンマン、無法者。
gender=性、ジェンダー
credit for=〔功績・性質などがあると〕認めること,信じること
put thruogh=~を成し遂げる、成就する
Waring blender=粉砕機、ジューサー
Vieux Carre=仏語(ヴュー・カレ)=古き街-Old Square
日本語訳 by 音時

◆ところでウォーレンのオリジナルは主人公が男なので、リンダバージョンの歌詞で「Boys」とあるところを「Girls」と変えれば基本的によいのですが、3rd verseの歌詞(YOKOHAMAが出てくるところ)は全面的に変えられています。ウォーレンのオリジナルの歌詞では次のようになっています。
Well, I met a girl at the Rainbow bar
She asked me if I'd beat her
She took me back to the Hyatt House
…I don't want to talk about it
そう 俺はレインボー・バーである女に会ったのさ
そいつは俺に“いじめてくれ”って言って
俺をリゾートの部屋に連れていったんだ
・・・もうその話はしたくないんだよ…
はい、なんでしょうねえ。この曲は。
おそらく「S」とか「M」とかの世界を歌っているんでしょうね(-_-;)。
考えてみたら冒頭の歌詞も「線路に頭を寝かして機関車を待っていた…」って、自殺未遂…。主人公は「みじめでついてない」自分を嘆いていますが、そんな脅迫観念のあるちょっと精神的に病んでしまっている人を歌ったのではないでしょうかね。
◆“私はついてない”・・・アトランタでのライヴ(1977)
◆ホワイトハウスでのクリントン夫妻の前で歌うリンダです。(May 6, 1996 at the White House)
◆ウォーレンの“Poor Poor Pitiful Me”.ちょっとおとぼけた感じのロックですね。
◆ジャクソン・ブラウンが歌っている動画もありました。コーラスはボニー・レイット。
(demaさんご紹介ありがとうございました)
(この記事で参考にしたページ)
・Wikipedia Poor Poor Pitiful Me
・「ジャクソン・ブラウンとカリフォルニアのシンガー・ソングライターたち」
コメント
コメント一覧 (6)
音時
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音時
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音時
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"Jesse James"は無法者の犯罪者なので、それだけにこうした例えに取り上げられることもあるのでしょうね。シェールも1989年に"Just Like Jesse James"というタイトルの歌を歌ってます。
音時
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当時、リンダは、①「絶対、ビートルズをカヴァーしない。」②「絶対、ライブ盤を出さない。」というお約束があったのですが、「FM」という映画(日本では公開されなかったけど、タイトル曲はSteely Danでした。)の中で、この曲と「ダイスを転がせ」のライブをやっているというので、ついついLPを買ってしまったことを思い出しました。
オリビアは美人タイプだったけど、リンダは可愛いタイプでしたね。
音時
が
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Yes he really worked me over good
の一節をどう訳すべきか、何十年も悩みました(笑)
あと、この曲がきっかけで、Jesse Jamesについてずいぶん調べてしまいました。
ところでこの曲、ぼくは個人的にジャクソンブラウンのバージョンが一番好きです。すごくノリがいいです。
https://www.youtube.com/watch?v=uJPKBXdaKDc
彼が歌うこの曲は、歌詞がリンダの方に近い気がします。それを男版に素直にひっくり返したみたい。
音時
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