この曲が当時の音楽界に与えた影響は大きかったでしょう!シングルチャートでは最高位4位でしたが、ディスコサウンドが大流行していたなかで一石を投じましたね。

ボーカルはもごもごと聞こえにくかったのですが、何といってもピックを使わないギターの音。これ以降、この"音"はマークとダイアー・ストレイツの代名詞になりました。

◆さて、この曲は「悲しきサルタン」という意味不明な邦題がついていますが、原題は"Sultans of Swing"。日本のレコード会社さんがサウンドが「明るい」というよりは「暗い」「悲しい」印象を持ったのでつけた...というところでしょうか。では「サルタン」って何?

曲の歌詞の最後にジャズ・バンドが"私たちは"Sultans Of Swing"でした!"と名乗るのですが、"Sultan"の意味を辞書(英辞郎)で引くとこう出ました。

1.《the Sultan》オスマン・トルコ皇帝
2.サルタン、スルタン、〔イスラム教国の〕君主◆2007年時点ではブルネイ、オマーンおよびマレーシアの三カ国のみに存在する。◆Sultanとも表記される。
3,絶対君主、暴君

"Sultans of Swing"とは
"スウィング(ジャズ)の絶対君主"
というところでしょうかね。なかなかカッコいい、自信がなけりゃ名乗れないようなバンド名です。

db2d032e8e2bb520ac2d13cfa0801968.473x391x1

そんな「スウィングの絶対君主」というタイトルのこの曲、歌詞はどんなんでしょう?
後半に続きます。


(Mark Knopfler)

Dire_Straits_-_Sultans_Of_Swing_picture_cover

Released in 1978
US Billboard Hot100#4
From The Album“Dire Straits”

:原詞は太字

You get a shiver in the dark
It's raining in the park, meantime
South of the river you stop and you hold everything

A band is blowing Dixie double four time
You feel alright when you hear that music ring


暗いなか寒さで震えてる
公園に雨が降ってるそんななか
川の南で足をとめ じっと耳を傾けた

ディキシージャズを4分の4拍子のリズムで
演奏してるバンドの音だったんだ
こんな音楽を耳にするとホッとするよな

And now you step inside,
but you don't see too many faces
Coming in out of the rain to hear the jazz go down

Competition in other places,
a butter horn be blowing out sound
Way on downsouth,
Way on downsouth London town


でも 店のなかに入ってみると
客足はまばらだった
雨のなか わざわざジャズを聴きに来るなんてな

ほかの場所でもコンペはいろいろやられているが
カッコいいホーンが聴けたんだよ
南に下ったところ
ここはロンドンの南の方なんだ

You check out Guitar George,
he knows all chords
Mind he's strictly rhythm,
he doesn't wanna make it cry or sing

Left-handed old guitar is all he can afford,
when he gets up under the lights to play his thing


ギターのジョージに注目だ
あいつはコードをぜんぶ知ってるぜ
リズムも忠実に刻んでる ギターを
泣かせたり歌わせたりするのは好きじゃない

ヤツが持つのは左利き用のおなじみのギター1本
そいつでライトに照らされて演奏を聴かせるんだ

And Harry doesn't mind,
if he doesn't make the scene
He's got a daytime job,
he's doing alright

He can play the honky tonk like anything
Saving it up for Friday night
with the Sultans,
with the Sultans of Swing


ハリーは人気なんて
ちっとも気にしちゃいない
ヤツは昼間の仕事があって
そこそこ稼いでいるからな

ヤツはホンキートンクはお手の物さ
でも金曜の夜のために取っておくんだ
だって金曜は
"Sultans of Swing"のステージだから
 
Then a crowd of young boys,
they're fooling around in the corner
Jogging dressed in their best brown baggies
and their platform soles

They don't give a damn
about any trumpet playing band
It ain't what they call rock and roll
And the Sultans
Yea the Sultans played Creole ...Creole


それから若い連中は
店の片隅でバカをやってる
お気に入りの茶色いバギーパンツと厚底の靴をはいて
小突き合ってんのさ

トランペットのバンドなんてちっとも興味なし
ロックン・ロールじゃないからね
"サルタンズ"は
そう"サルタンズ"は初期のジャズ
~"クリオール"を演ったんだから

Then the man steps right up to the microphone,
says at last just as time bell rings
'Goodnight, now it's time to go home'
And he makes it fast with one more thing

'We are the Sultans ...
We are the Sultans of Swing'


メンバーの一人がマイクの正面に歩み出て
ベルが鳴るのに合わせ最後に言うのさ
"おやすみなさい お帰りの時間です"
そしてヤツは早口でもうひとつ言うんだ

"私たちはサルタンズ..."
"私たちはSultans of Swingでした"...!

(Words and Idioms)
cf.hold everything=動くな;じっとしていろ.
cf.Dixie land Jazz=19世紀末から20世紀初めのニューオーリンズで生まれた最も初期のジャズのこと。
cf.four-four time=4分の4拍子
butter=(Slang)とってもよい事・素晴らしいもの
(Saturday Night Liveで、司会者が褒め言葉として「Like butter」と言ってるのが広まった)
strictly=厳密に
mind=自分の注意を向ける(イギリス的な英語表現)
例文:mind your head!「頭上に注意して」
afford=余裕がある,買う余裕がある.
make the scene=華々しく登場する、人気を得る、成功する
like anything 〈強意〉激しく、猛烈に、ひどく、ものすごく
jog=注意を促すために〕~をちょっと突く、軽く押す
baggies= バギー(◇ゆったりした海水パンツ)2 バギーパンツ(◇だぶだぶの女性用ズボン) -
platform shoes=プラットフォームシューズ、厚底(の)靴 -
Creole=初期のジャズ音楽のこと(詳しくはこちら

日本語訳 by 音時

117174857


◆この曲の"Songfacts"にはこんなことが書いてありました。

(バンドの)グループリーダーのマーク・ノップラーは、この曲のアイデアを、お粗末なクラブバンドのパフォーマンスを見ることから得ました。 歌詞の物語ではこんな風に進みます...ノップラーは雨の夜にイプスウィッチ(Ipswich:イギリス;サフォーク州の州都))にいました。 彼はバーに潜り込み、平凡なバンドが見知らぬ4、5人の酔っ払ったオーディエンスに向かってステージを締めくくっていました。
 不運なバンドは、「おやすみなさい、ありがとう。私たちは"Sultans of Swing"でした」。 ノップラーは「そのバンドが"ありがとう、私たちは"Sultans of Swing"です"って挨拶したとき、すごい可笑しかったんだよ。"絶対君主(Sultans)がそんなことするはずないからね。」

513-IAppJ9L._SY355_

◆こんなこと歌ってたんですね! 何が「悲しきサルタン」じゃい(゚Д゚)ノ

当時、ディスコでもジャズでもない新しいサウンドを歌っていたバンド(ダイアー・ストレイツ)が、雨の日にとある街角にて、初期のジャズバンドと出逢ったときのエピソードを歌って大ヒットさせた、っていうのもね。だからこその可笑しさがあったのかもしれませんね。

マーク・ノップラーは曲の構想を得るのに、街に出て人々の生活を観察することがあったようですよ。有名になってからはなかなかできなくなったそうですが。

でも80年代になってから全米No1の大ヒットをかました「Money For Nothing」も歌詞は他愛のないもの=デパートの店内にあるテレビでMTVが映っていた時、登場するミュージシャンの悪口を店員が言っているのを見て、曲の着想を得た=だったからなあ(笑)。


◆圧巻の演奏です!



◆こちらはライヴ・エイドのステージ。




◆1985年に全米を制覇しました。"Money For Nothing"。