"ナイロン・カーテン"のB面、実はあまり聴かなかったな…。
もちろんアルバムを買って、買ったばかりの時は聴いていたけれど、やっぱりA面の"アレンタウン"~"ローラ"~"プレッシャー"~"グッドナイト・サイゴン"の方と比べると、回数でいうと半分、いや1/3くらいかな。これは「LP時代」だからかもしれません。
 A面を聴き終わったあと、自分で盤をひっくり返してB面にいかないといけないのですが、なんとなくもう一度A面を聴いたりしてしまいました。(CDの時代だったらまた違ってただろうな)

◆僕の持っているムック本「大人のロック ビリー・ジョエル 永遠のピアノ・マン」(日経BP)にビリーが自分のアルバムについて語っているインタビューが掲載されているのですが、「ナイロン・カーテン」については、こんなことも話しています(P.34)。

 "ナイロン・カーテン"は"とにかくたくさんの音ネタを録音した。様々な楽器、オーケストラ、パーカッション、ヴォーカル、シンセ。音数がとにかく多い作品だ。「サージェント・ペッパーズ」を目指していたかのようだった"。

A面はまだシングルヒットもあったので、単品曲を覚えていますが、B面にはA面の曲ほど印象に残る曲がなく(僕にとっては)歌詞も当時の国内盤の解説・対訳を読んでも、今いちよくわからず…。いま改めて鑑賞していくと、なんとなくビリーの言っていた"サージェント・ペッパーズ"は、このB面について感じたりするようになってきました。この曲もメロディやアレンジもなんとなくビートルズっぽいし、ほかにも"スカンジナヴィアン・スカイ"などは特にそれっぽいですよね。


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Writer(s): Billy Joel 

Released in1982 
From The Album“The Nylon Curtain”

*原詞の引用は太字


Don't get excited
Don't say a word
Nobody noticed
Nothing was heard

It was committed discreetly
It was handled so neatly
And it shouldn't surprise you at all
You know

興奮したりするなよ
何も言うんじゃない
誰も気づいてないし
何も聞こえなかったんだ

そいつは慎重に執り行われ
とても巧妙に操作されたんだ
何も驚くべきことはないんだよ
そうだろ

Break all the records
Burn the cassettes
I'd be lying if I told you
That I had no regrets

There were so many mistakes
And what a difference it makes
But still it shouldn't surprise you at all
You know
I said it shouldn't surprise you at all
You know

レコードはみんな燃やしてしまえ
カセットもみんな焼き払うんだ
きみに"後悔なんてしてない"なんて言ったら
僕は嘘を言ったことになるけれど

あまりにも沢山の間違いを犯したのさ
でもどんな違いがあるって言うんだい?
それでもなお 
ビックリするようなことなんてないんだ
そうなんだよ
驚くようなことなんて何もない
そうだろ?

Don't look now but you have changed
Your best friends wouldn't tell you

聞いてほしいんだよ きみは変わったね
きみの親友にも言われてないだろうけど

Now it's apparent
Now it's a fact
So marshal your forces
For another attack 

You were so young and naive
I know it's hard to believe
But now it shouldn't surprise you at all
You know
No it shouldn't surprise you at all
You know

今や もう明らかなんだ
そう それが真実なのさ
そしたら 次の攻撃に備えて
きみの軍隊を集結させておくかい?

きみはとても若くて純粋だ
だからきみには信じ難いことだろう
でもね 驚くことなんて何もないんだよ
そうだろ
そう ビックリすることなんて何もない
そうなんだ

What has it cost you
What have you won
The sins of the fathers
Are the sins of the sons

It was always within you
It will always continue
But it shouldn't surprise you at all
You know
I said it shouldn't surprise you at all
You know 

きみは何のコストをかけて
そして何を得たんだい?
父親たちが犯した罪は
息子たちの罪でもあるんだ

そいつらはいつだってきみの中にあって
いつまでも続いていくんだよ
でもだからといって
驚く必要なんて何もない
そうなんだ はっきり言おう
何も驚くことなんて何もないんだよ
わかるかい

(Words and Idioms)
commit=罪などを犯す、悪事をはたらく
discreetly=慎重に、控えめに
neatly=巧妙に、うまく
Don't look now, but...=今見ないでほしいんだけど~だ
「(第三者に)気づかれないように何の素振りも見せずにこれから言うことを聞いてほしいんだが」という前振りのことば
marshal=〔部隊が〕整列する、集結する 

日本語訳 by 音時

NCBJ


◆この曲"Surprises"について、ビリー自身のコメントです。

この唄を聴いた人から、様々な解釈を聞いた。エリザベスは、この唄には何か意味があると言った。フィル・ラモーンは彼女とはまた違った意味があると考えた。僕はと言えば、ここにこうして座って、"え、本当かい?きみはそういう解釈をしたわけ?"などと言っている。というのは、僕自身としては、この唄には僕でさえうまく説明できないほど、広い抽象的な声明が込められていると思っているのだ。この歌は基本的に、誰も、自分自身の運命を支配することもできなければ、コントロールできるわけでもないということを歌っている。だが、ただ、僕としては、この唄に大袈裟な説明を加えたくはない。(訳:山本安見さん…国内盤「ナイロン・カーテン」ライナーノーツより)


◆ビリー自身が「大袈裟な説明をしたくない」と言っているので、解釈は人それぞれ、でいいのでしょう。この曲を聞いたときのその人の現在の状況によって、この歌の解釈も違ってくる、という気もします。
 でも、"驚くようなことは何もないんだ"…人生にポジティヴな印象を持てる言葉ではないですね。うーん、あっそれでも、何でも自分のことのように思って、重い荷物をすぐに背負ってしまうようなひとに対しては…ようやく肩の荷が降ろせるような言葉でもあるかもしれないですね…。

 アルバム自体も、ヴェトナム戦争や冷戦構造の社会と人々の意識、そして私的にはバイク事故での入院やエリザベスとの離婚…そうしたなかで作られた…全体が内省的な雰囲気にならざるをえなかったんだろうな。

 "Surprises"はとりたてて「名曲」とは言えないだろうけど、"ナイロン・カーテン"をアルバムとして聴くなかで、とても味わい深い1曲だなあと思います。


◆ライヴでの"Surprises"の演奏。 MSG NYC 3/21/14。日本では演奏されたこと…ないよね。



◆「ナイロン・カーテン」が"サージェント・ペッパーズ"だったら、やっぱりこの曲が「A Day In The Life」なんだろうな。"スカンジナヴィアン・スカイ"です。



◆そしてアルバムはピアノで始まるこの曲で締めくくられます。"オーケストラは何処へ?"