アルバム「狂気」(Dark Side Of The Moon)は、精神世界を表現したトータルアルバムだよな…と思っていたら、この“Money“の始まり…。冒頭から聞こえてくる効果音が印象的です。
お金(硬貨のカチャカチャした)の音、レジの音、紙の破れる?音など…ロジャー・ウォータースがエフェクト・ループを作りました。
この音源はピンク・フロイドの初期のライブ演奏にも使用されましたが、アルバム用にマルチトラック・テープに再録音する必要がありました。ウィキペディア情報では、その後、「The Dark Side of the Moon」のトラックミックスで4トラックに変更され、「部屋の中を歩き回る」効果を出すことを狙ったそうです。
◆この曲はなんと全米チャートで13位にランクイン。ピンク・フロイドの代表曲にもなりました。この当時のことなどを、デヴィッド・ギルモアは、In The Studioのポッドキャストで、次のように言っているようです。(この曲のGenuin.comページより)
このシングル“Money"の後、騒ぎが止まらなかった。子供たちが「マネー!マネー!」と叫んでいたのを覚えているよ。
それが俺たちの音楽を変えたんだ。以前はとても静かで繊細だった小さなことも、そのようなことをいくつかカットしなければならなくなったんだ。文字通り、不可能になったんだ。音が鳴っていたら、人に聞こえないようなことをする意味がない。それが僕らの音楽の形を変えたんだろうね。
(Roger Waters)
Released in 1973
US Billboard Hot100#13
From the Album “Dark Side Of The Moon”
*原詞の引用は太字
[Intro]
Money, get away
You get a good job with more pay,
and you're okay
Money, it's a gas
Grab that cash with both hands
and make a stash
カネ…逃げるんだ(近づくな)
いい仕事についてもっと稼いだら それでOK
カネ…おかしなものさ
両手で現ナマを掴んでみろよ
盗られないよう隠すんだ
New car, caviar,
four-star daydream
Think I'll buy me a football team
新車 キャビア
四つ星ホテルに泊まって白昼夢を見よう
フットボールチームを買うのもいいな…って
Money, get back
I'm alright, Jack,
keep your hands off of my stack
Money, it's a hit
Ah, don't give me
that do-goody-good bullshit
カネ 戻ってこいよ
他のヤツのことなぞ知らん
俺の札束に触れないでくれ
カネ アタリだよ
「お金じゃ幸せは買えない」とか
キレイ事なんか聞きたくない
I'm in the high-fidelity first class travelling set
And I think I need a Learjet
俺は最上級クラスの上客だぜ
マイジェット機だって買うつもりなんだ
[Saxophone Solo]
[Guitar Solo]
Money, it's a crime
Share it fairly, but don't take a slice of my pie
Money, so they say
Is the root of all evil today
カネ 罪なヤツさ
公平に分けるが 俺の分は少しも渡さないぜ
カネ こう言われるよな
今じゃ カネが“諸悪の根源“さ
But if you ask for a rise, it's no surprise
That they're giving none away
賃上げ要求したって 驚くことじゃない
ヤツらタダじゃ何も与えないんだ
Away, away, away
Away, away, away
Away, ooh…
近づくな
カネは怖いぜ
とっとと逃げるんだ
(Words and Idioms)
it's a gas. =まったくおもしろい
stash 【1他動】〈話〉〔秘密の場所に金・貴重品などを〕隠す、しまう
stacks(of money)=大金
i'm all right, jack.=(人のことは知らないが)自分は大丈夫だ
https://oggi.jp/6825655#:~:text=%E6%AD%A3%E8%A7%A3%E3%81%AF%EF%BC%9F-,%E3%80%8CI'm%20all%20right%2C%20Jack.%E3%80%8D,%E3%82%82%E3%82%93%E3%81%8B%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E6%84%8F%E5%91%B3%E5%90%88%E3%81%84%E3%81%AB%EF%BC%81
bullshit · 〈卑俗〉たわ言、でたらめ
Learjet=アメリカのビジネスジェットのメーカー
give away=(ただで)(…を)与える、贈る、寄付する
日本語訳 by 音時
◆"It's a gas" って言葉は、Rolling Stones の「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」でも出てきましたね。「面白い」とか、「盛り上がる」とかいう意味でしょう。「お金」=「燃料」=ガス、という意味にもなりそうです。
◆"Alright Jack "はイギリスの俗語で、他人を助けようとしない利己的な人間を指すようです。ただそれが転じて、「人のことは知らないが、自分は大丈夫だ」「自分は満足だ、他人のことなど知るもんか」という意味合いになるようです。
(こちらのページをご参照)Oggi.jp
◆最後に、この曲の最後に出てくる「会話」ですが、アルバム「狂気」全体でも突然の笑い声など、ランダムな声が出てきてびっくりしますよね。
これはロジャー・ウォーターズは、何か哲学的な質問をフラッシュカードに書いて、アビーロード・スタジオの周りの人に見せて、その答えをテープに録音し、その中から気に入ったものをアルバムの効果音にしたそうです。
質問された人の中には、ドアマン、ローディ、そして、ポール・マッカートニーもいたそうですよ。
採用された質問は、
「最後に暴力を振るったのはいつですか?」
というものと
「あなたは正しいですか?」
という質問だったようです。(ほんとかな)
"- I don't know, I was really drunk at the time…(わからない、あの時は本当に酔っていた "と答えて、使われてしまった(^_^;)のは、ポール・マッカートニー&ウイングスのギタリスト(1972〜1973)だったヘンリー・マックローという話です。前の日に奥さんとケンカをしてしまったらしい…。
[Spoken Outro: Interview excerpts]
- Yeah – (chuckles) – I was in the right!
— Yes, absolutely in the right!
— I certainly was in the right!
— Yeah, I was definitely in the right; that geezer was cruising for a bruising…- Yeah
— Why does anyone do anything?
- I don't know, I was really drunk at the time…
— I was just telling him it was in, he could get it in number two. He was asking why it wasn't coming up on fader eleven. After, I was yelling and screaming and telling him why it wasn't coming up on fader eleven. It came to a heavy blow, which sorted the matter out
うん - (笑) - 私は正しかった!
- そうだ、絶対に正しい!
- 確かにそうだ!
- ああ、確かに俺は正しかった。あの爺さんはあざを作るために巡っていたんだ...-ああ
- なんでこんなことするんだ?
- わからない、あの時は本当に酔っ払っていたから......。
- 俺はただ、2番を取ればいいと言っただけだ。彼はなぜ11番のフェーダーで出てこないのかと聞いていた。その後、私は大声で叫びながら、なぜフェーダー11で出てこないのかと彼に言っていました。激しい一撃になり、それで問題は解決しました。
(faderとは何?) わかりやすく解説 Weblio辞書
ミキシング卓などの、各入力チャンネルや出力のレベルを調整、設定するために使用する機能で、主にスライドボリュームのコントロールを指します。
コメント
コメント一覧 (4)
間違いなく彼らの代表作にして時代を象徴する作品だった
TIMEでのギルモアのソロ、クレア・トゥリーのシャウト、ブルース・リー映画での採用など
発売からしばらくして話題になったのは、キャロル・キングの「タペストリー」と「狂気」のロングセラー記録
結果としてビルボードのアルバムセールスTop100に15年連続チャートインするギネス記録を達成、全世界で5000万枚以上を売り上げた
ピンク・フロイドは「ウマグマ」(1969)以降の10年がピークだった
中でも「原子心母」「おせっかい」「狂気」「炎」と続いたシリーズは、聴く度に感心させられた
1971年には早くも来日
箱根でコンサートを開催したが、私は見ていないな(残念)
このコンサートは、前年に米Shureとの代理店契約を締結したヒビノ音響の初仕事でもありました
今でこそ当たり前のPAも当時は来日アーティストが自前で用意したのです
ビートルズとピンク・フロイドと言えば、東芝EMIの石坂敬一ディレクター
何ともアレな邦題も氏のアイデア
TRex「電気の武者」なんていう傑作もあった
戦後日本の音楽界で最も初期にA&R(Artists and repertoir)を意識した仕事を実践
洋楽ファンの憧れでもありました
1945年生まれ・慶應義塾大学卒
1993東芝EMI専務取締役
1998ユニバーサルミュージック社長
2007日本レコード協会会長
2009紫綬褒章
2011ワーナーミュージック会長
2015旭日中綬章
2016死去(享年71)
同年生まれ、同大学卒にアルファレコード設立者村井邦彦がいます。
日本のポピュラー音楽界を背負う業界人二人が同年生まれで同じ大学卒というのも奇縁ですね
この選曲は実にタイムリーです。先日、友人に勧められて『シャイロックの子供たち』という映画を観ました。銀行員にまつわる「マネー」の話でした。お金は人生を狂わせてうしまうこともあるんですね。
「フットボールチームを買うのもいいな」「マイジェット機だって買うつもりなんだ」 そんなことも歌っていたんですね。(まったく知りませんでした)
興味深い始まり方です。
拍子は…。始めは7拍子(3拍子+4拍子)かな? でも、途中から分からなくなってしまいます。
エフェクト・ループも凄いインパクトです。レジスターの音は編集にナント30日を要したそうな。
ほんと、マニアックなオープニングです。ここにも、アラン・パーソンが関わっているんですね。