この曲の後半から終盤、フリートウッド・マックのスティーヴィーのコーラス、リンジー・バッキンガムのギターとジョン・スチュワートの歌が絡んできます。「圧巻」!

◆トップ40ファンの皆さまでしたら、John Stewartさんと言えば「Gold」ですね。

この曲"MIdnight Wind"はJohn Stewartが1979年にリリースしたアルバム"カリフォルニア・タウン(Bombs Away Dream Babies)"からのセカンド・シングル。「Gold」のようにトップ10ヒットにはなりませんでしたが、気になる曲でよく聴いていました。

 ちなみにアルバムの邦題"カリフォルニア・タウン"は"Gold"の出だしの歌詞で"When the lights go down in the California town…♪"からきています。

◆そしてJohn Stewartさんと言えば、往年のフォーク・ロックグループ"キングストン・トリオ"のメンバー。50年代後半から60年代前半に多くのヒットを放ちました。John Stewartはオリジナルメンバーではなく、グループの中心人物だったデイヴ・ガードの脱退(1961年)に伴い加入したメンバーでしたが、グループの音楽に変化をもたらした重要な役割がありました。

 有名なのが、ソングライターとしての才能です。モンキーズに提供した"デイドリーム・ビリーバー"は超有名曲ですね。(いまは故忌野清志郎さんバージョンが某コンビニさんのテーマソングっぽくなっていますよね…これちょっと悔しいですね…僕はほぼ毎日セブンコーヒー←あっ言っちゃった、利用してるけど)


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written by John Stewart

Released in 1979
US Billboard Hot100#28
From The Album"Bombs Away Dream Babies"

*原詞の引用は太字

Come on down Miranda
Your window's open wide
Take a chance on a midnight dance
So I can see it in your eyes

さあおいで ミランダ
きみの窓は大きく見開かれたよ
真夜中のダンスをするチャンスじゃないか
きみの瞳は踊りたがってるよ

Come on down Miranda
No need to fix your hair
Shake the town with the windows down
Fly in the midnight air
Fly in the midnight air

こっちにおいで ミランダ
髪をとかさなくたっていいさ
窓を閉めて 町を揺るがせようか
真夜中の風に乗って夜空に飛び立とう
真夜中の風に乗って夜空を飛んで行こう...

There are dreams 
that fly in the midnight wind
Souls that cry in the midnight wind
Lovers who try in the midnight wind
You and I in the midnight wind

真夜中の風に  たくさんの夢が乗っていく
真夜中の風に 声を上げて泣く魂が見える
真夜中の風に 愛を確かめ合う恋人たちがいる
真夜中の風に吹かれてる 君と僕も

Come on down Miranda
You know your time has come
You beauty queens come on so clean
But you're, you're missing all the fun
Yeah you're missing all the fun

降りておいでよ ミランダ
もう行かなきゃいけない時間だね
美しいきみ さらに清らかになるんだ
でもきみは 
きみは楽しみをすべて忘れてしまった
そうさ きみはもう笑顔を見せてはくれないのか

There are dreams 
that fly in the midnight wind
Souls that cry in the midnight wind
Lovers who try in the midnight wind
You and I in the midnight wind

真夜中の風に たくさんの夢が乗っていく
真夜中の風に 声を上げて泣く魂が見える
真夜中の風に 愛を確かめ合う恋人たちがいる
きみと僕も 真夜中の風に吹かれてる

Midnight wind
Midnight wind

真夜中の風に
真夜中の風に

There are dreams 
that fly in the midnight wind
Souls that cry in the midnight wind
Lovers who try in the midnight wind
I said you and I in the midnight wind

真夜中の風に 飛んでいくたくさんの夢
真夜中の風に 声を上げて泣く魂
真夜中の風に 愛を確かめ合う恋人たち
そして真夜中の風に吹かれてるきみと僕・・・

Midnight wind 
C'mon down 

真夜中の風に・・・
降りておいでよ・・・

There are dreams 
that fly in the midnight wind
Souls that cry in the midnight wind
Lovers who try in the midnight wind
You and I in the midnight wind

Midnight wind 
C'mon down
Oh please babe

真夜中の風に・・・
降りておいでよ・・・
お願いだから・・・

日本語訳 by 音時

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◆"Gold"や"Midnight Wind"でどうしてスティーヴィーがジョンと共演に至ったかというと…ジョンとリンジーの共演にスティーヴィーも一緒に参加した、というのがきっかけですね。

フリートウッド・マックの"オフィシャルウェブ"に書かれていたジョンのページから引用します。

 ジョン・スチュワートは1979年を想い出す、"僕はエレクトリック・ギターの弾き方をリンジー・バッキンガムのレコードを聴いて習ったのさ、同時にリンジーがアコーステッィク・ギターを弾くのにキングストン・トリオのレコードを聴いたって話を聞いたんだよ。だから僕らは実際に会う前に、8年もの間、ずっと会話してきたってことなんだ。

 この話ってちょっと素敵じゃないですか?そして二人はジョンの1970年代の復活において共演します。
ジョンは言います。

レコードを作る際に共演したなかで、"神秘的なモノ"を作る才能に出会ったのはほんの数人しかいないよ。一人はブライアン・ウィルソン(ビーチ・ボーイズ)だけど、リンジー・バッキンガムは別格だね。

たしかにリンジーの加入でマックのサウンドも明らかに変わりました。"Gold"や"Midnight Wind"はソングライターとしてのジョン・スチュワートの才能に、アレンジャー・パフォーマーとしてのリンジーの才能、そしてスティーヴィーの参加による、フリートウッド・マック的な仕上げ、が施された楽曲と言えますね。


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◆"Midnight Wind"について…うーん、この曲は何を歌っているのだろう?歌詞に出てくる"Miranda"という女性の名前は誰のことなんだろう?

ネット検索などだいぶしましたが、はっきりとはわからず…でもいくつかのヒントは得ました。こちらのサイトに1979年のジョン・スチュワートへのインタビューが載っています。
(英語なので僕のつたない英語力での訳・解釈となることをお許しを…)

(1)"Wind"は"Sun"と並んで、ジョン・スチュワートの書く歌詞にはよく出てきます。彼は重要な言葉と考えていたようです。

Q:あなたは(作品のなかで)"wind""sun""rain"などの言葉をよく使いますね?
A:本当のことを言うと僕は理由を深く掘り下げたりはしないんだ。それらの言葉を何で気に入ってるかといえば、それらは"永遠のこと"だろ?"風"は船乗りたちを呼び寄せる、旗をなびかせる、塵や埃を運んでくる、嵐になったりする、風は宇宙からのメッセンジャーだし、宇宙の言葉なんだ。

(2)"Midnight Wind"の歌詞の主人公は、ジョン・スチュワート自身のこと。

:"ミッドナイト・ウインド"のキャラクターは僕がなりたかった姿なんだ。僕は高校時代は本当に変わったヤツだった。1年で4インチ太ったかと思えば、20ポンド痩せてしまったり。女の子にもちっともモテやしない。車を乗り回したりする、どこにでもいる男子の一人さ。何も起こりやしない。そんなとき音楽を始めたんだ。音楽は自分自身の世界を作ることができるって発見したんだ。

(3)"Midnight Wind"について話すなかで、トム・ウェイツの"Tom Traubert's Blues"について触れている。

Q.いろんな名前が出てきたけど、ほかにこの人のソングライティングはすごいって思う人はいますか?
A.いろんなことから毎日のようにインスピレーションを得ているよ。ホイト・アクストンには驚かされる。彼の作品はバッチリだ。ボブ・シーガーも好きだね。本物のソングライターの1人さ。彼の描く世界は僕のイメージも広げてくれる。歌詞を書くのに情景がイメージできているなら、できたも同然さ。 'Come on down Miranda, the window's open wide.  Come on down Miranda, no need to fix your hair.  We will shake the town with the windows down and fly in the midnight air.' ジョン・プラインはすごいソングライターだし、トム・ウェイツはその才能にたけていて映画監督のようだ。すごいソングライターだよ。彼の'Tom Traubert's Blues'は僕が聴いたことのあるなかで最も心を締め付けられる曲のひとつだ。初めて聴いたときに泣いてしまったよ。


◆"Miranda"についてのコメントは見つかりませんでしたが、上記3つのジョンのコメントを聞くなかで想像できることは…

この曲"Midnight Wind"のなかで、
ジョンは自分の人生を振り返っています。人生における苦悩は誰もが運命として(宇宙からの言葉として)受け入れる必要があるということ。その言葉を耳にでき、感じられるのは昼間ではなく、真夜中の風。

そしてこれはちょっと飛躍してるかもしれませんが、"Miranda"という女性の名前は、トム・ウェイツの"Tom's Traubert's  Blues"でいう"マチルダ(Matilda)"と同じ。ジョンはトムにインスパイアされて、女性の名前を敢えて歌詞に入れたのではないか?というのが想像です。

 トムの"Tom's Traubert's  Blues"は、ご存じの方も多いかと思いますが"Walting Matilda"という言葉が歌詞のなかに使われますよね。"ワルチング・マチルダ"はオーストラリアの伝承曲で、毛布一枚を持って"オーストラリアを放浪する"歌。その毛布に付けた名前が"マチルダ"。"マチルダ"という名前の女性が出てくるわけではありません。
 
真夜中にさまよう心や魂、夜は冷えます。苦しい心や魂を温める毛布が必要、ってことで"ミランダ"はその毛布のこと。"Come on down、Miranda"は"毛布をくれ"っていう意味じゃないかな?と思います。

◆さて真相はいかに…?でもジョンから直接聞くことはできません。

John Stewartは2008年1月19日にサン・ディエゴの病院で動脈瘤による脳卒中で天に召されています…。享年68歳でした。彼がアリゾナにてコンサートを行う予定の10日前のことでした。
John Stewart、R.I.P…。


◆全米5位の"Gold".このリズムと黒い感じ。スティーヴィーのボーカルとリンジーのギターがあって、このサウンドが完成しました。



◆これがオリジナル。ジョンの歌う"Daydream Believer"!



◆アルバム"カリフォルニア・タウン"からの第3弾シングル「Lost Her In The Sun」(80年;最高位34位)スティーヴィーのコーラスが聴けますが、彼女の特徴は、低いドスのある声なのでやっぱ"Gold""Midnight Wind"のような怪しい曲?の方が光る感じがするんですよね。



(この記事で参考にしたページ)
・http://bitemyfoot.org.uk/omaha
・www.fleetwoodmac.net
・Wikipedia ウォルチング・マチルダ