いよいよアルバム「Tapestry」も残すところあと2曲となりました。
ラス前のこの曲がアルバムタイトルにもなった「Tapestry」です。

このアルバムを全曲和訳するにあたって、すでに数年前に和訳記事にしたものから、今回の機会で初めて和訳した曲もあります。そういうなかでこのタイトル曲“Tapestry”が歌詞の物語も抽象的・比喩的でなかなか難しく、和訳は後回しにしてきました…(^_^;)。

あらためてこのアルバムの作詞・作曲を確認すると、B面はキャロルのセルフカバー曲も多いなかで…この曲はやはり作詞も作曲もキャロルなんですね。だから…やはりこの曲がこのアルバム全体でのメッセージである、とも思うのです。

(Side A)
01"I Feel the Earth Move" – 3:00
02"So Far Away" – 3:55
03"It's Too Late" (lyrics by Toni Stern) – 3:54
04"Home Again" – 2:29
05"Beautiful" – 3:08
06"Way Over Yonder" – 4:49

(Side 2)
01"You've Got a Friend" – 5:09
02"Where You Lead" (King, Stern) – 3:20
03"Will You Love Me Tomorrow?" (Gerry Goffin, King) – 4:13
04"Smackwater Jack" (Goffin, King) – 3:42
05"Tapestry" – 3:15
06"(You Make Me Feel Like) A Natural Woman" (Goffin, King, Jerry Wexler) – 3:59

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(Carole King)

Released in 1971
From the Album “Tapestry”

*原詞の引用は太字

My life has been a tapestry of rich and royal hue
An everlasting vision of the ever-changing view
A wondrous woven magic in bits of blue and gold
A tapestry to feel and see, impossible to hold

私の人生は豊かで気高い色の つづれ織り
常に変わりゆく眺めをした 永遠に続く未来像
青と金色で細かく素敵に織られた魔法 
見て心に感じる つづれ織り 
この手につかむことはできないの 

Once, amid the soft, silver sadness in the sky
There came a man of fortune, a drifter passing by
He wore a torn and tattered cloth around his leathered hide
And a coat of many colors, yellow, green on either side

あるとき 空の柔らかで銀色の悲しみの真ん中に
お金持ちがやってきた  でもその人は通り過ぎる放浪者
破れてボロボロの服で打たれた傷を隠してた
左右にそれぞれ黄色と緑 色とりどりのコートを着て

He moved with some uncertainty, as if he didn't know
Just what he was there for, or where he ought to go
Once he reached for something golden hanging from a tree
And his hand came down empty

彼は不安げに歩き回っていたの  まるで自分が
何のためにそこにいてどこに行くべきか知らないみたい
そして木からぶら下がった金色の何かに手を伸ばしたけど
その手のなかには何もなかったの

Soon within my tapestry, along the rutted road
He sat down on a river rock and turned into a toad
It seemed that he had fallen into someone's wicked spell
And I wept to see him suffer, though I didn't know him well

まもなくして 私のつづれ織りのなかで
わだちだらけの道に沿って進むと
岩だらけの河べりに座っていた彼が ヒキガエルに姿を変えた
誰かの邪悪な呪いにかかってしまったみたい
私は彼が苦しむのを見て泣いてしまった
彼のことそんなによく知らないのに

As I watched in sorrow, there suddenly appeared
A figure, gray and ghostly, beneath a flowing beard
In times of deepest darkness, I've seen him dressed in black
Now my tapestry's unraveling, he's come to take me back
He's come to take me back

悲しみに包まれて眺めていると そこで突然現れたのが
見た目が灰色で幽霊のような 長く伸びたあごひげの男
一番深い闇の時代に 私は黒い服を着た彼を見たことがある
そして私のつづれ織りの糸はほぐれたの
彼は私を連れ戻すためにやってきた
彼は私を連れ戻すためにやってきたの

(Words and Idioms)
hue=色相、色の属性(色相、彩度、明度)の一つで、赤や黄色といった色味の違いのこと
wondrous =驚くほど,不思議なほど; 実にすばらしく
woven =weave の過去分詞
bits of =ちっぽけな~ ~の破片
amid 【前】~に囲まれて、~の真ん中に、~の真っ最中に
man of fortune=財産家
tattered 【形】ぼろを着た、ぼろぼろの、ずたずたの
leather=〔~を〕皮ひもで打つ
on either side どちらの側にも、両側に、左右に
rutted=[形]〈道が〉わだちだらけの
flowing beard 長く伸びた顎ひげ
unravel · 〔絡んだ糸などを〕ほどく · 〔謎などを〕解く

日本語訳 by 音時

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◆はい、この物語は「おとぎ話」?それとも「夢に見た話」なんでしょうか。
 でも、解釈が難しいこの歌のタイトルは「Tapestry」であり、それがこのアルバムのタイトルにもつけられています。

 横糸と縦糸で複雑に編み込まれた織物が“タペストリー“。主人公はこの曲の冒頭で「私の人生は豊かで気高い色の つづれ織り」と言っています。
 そう、人生は、いろんなことの積み重ね=いろんな色の糸を編み込んだもの、という解釈はできるでしょうね。でも興味深いのはその“Tapestry”は“見て感じるものであって、掴むことはできない“ということ。

 自分が手にとって思うように編み込むことはできないもの…拡大解釈になりますが、人生は運命に身を任せるもの…と言っているように思いました。

◆金持ちだけど放浪者、ぼろぼろの服だけど、コートは左右別な色(派手!)な服を来た男が歌詞に登場します。
 この男は「不安げに動きまわり、自分が何のためにそこにいてどこに行くべきか知らない様子です。そして何か金色で価値のありそうなものを手につかもうとするのですが…その手のなかは空っぽでした。

 主人公の人生(つづれ織り)のなかで、わだちだらけ(でこぼこ)の道に沿って進むと先程の男は、ヒキガエルになってしまいました。(邪悪な呪いにかかってしまったみたい) 
 主人公は、その人のことをよく知っているわけではないのに、泣いてしまう…。

 主人公は、人間の人生の無常(無情?)について思い、沢山の人が人生の半ばで「邪悪な呪いにかかってヒキガエルになってしまうこと」を嘆き、共感しているのでしょうかね。

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◆そして最後のVerse。

 「見た目が灰色で幽霊のような 長く伸びたあごひげの男」というのはやはり「死神」でしょうかね。主人公は彼を前にも見たことがあり、そして、彼は「私を連れ戻すために来た」んです。
 この部分引っかかりました。でも…この部分を成り立たせる解釈は可能だと思います。

 「ひとは生まれて死んで、また生まれ変わる」=輪廻転生ってことなんじゃないでしょうかね。主人公は前世で死んだ(死神に召された?)記憶があり、生まれ変わった人生の終焉を迎え、また死神の姿を見たんです。

 私の人生のつづれ織りの糸は自然にほぐれて…私は人生を締めくくりまた地に還り、そしてまた次に生まれ変わる準備をするの…。

◆このアルバム「つづれ織り」…愛、友情、家族、素晴らしい音楽…そんないろんな色で織り込まれた人生と、さらにその先?生命は続いていくもの…を歌った作品集なのではないでしょうか。