この曲を初めて聴いたときは、港に一日中座って船が行ったり来たりしているのを見て、ほんわか、なんか楽しい歌なのかなという印象がありました。

 でも歌詞を味わってみると…仕事も住む場所もなく、ただ海を見つめている男…ホームレスなのでしょうか。格差社会のなかではじかれた悲哀が歌われてるんですね…。ラストの口笛ももの哀しい感じです。


ドックベイ


Songwriters CROPPER, STEVE / REDDING, OTIS
Lyrics c Warner/Chappell Music, Inc., Universal Music Publishing Group

Released in 1968 
US Billboard Hot100#1
From The Album"The Dock of the Bay"

*原詞の引用は太字


Sittin' in the mornin' sun
I'll be sittin' when the evenin' comes
Watchin' the ships roll in
Then I watch 'em roll away again, yeah

朝日のなかで座ってるんだ
夜が来るまでずっとこのまま…
船が港に入ってくるのを眺めてる
そしてまた出ていくのをじっと見てる俺…

I'm sittin' on the dock of the bay
Watchin' the tide roll away, ooo
I'm just sittin' on the dock of the bay
Wastin' time

港のドックにじっと座って
引き潮を見てるだけさ
港のドックにただ座ってる俺
時間をつぶしてるんだ

I left my home in Georgia
Headed for the Frisco Bay
'Cause I had nothin' to live for
It look like nothin's gonna come my way

ジョージアの家を出て
サンフランシスコ湾を目指したよ
生きる目的も持っていなかったから
たぶんこの先も何もないのさ

So I'm just goin' 
sittin' on the dock of the bay
Watchin' the tide roll away, ooo
I'm sittin' on the dock of the bay, 
wastin' time

だから俺は
港のドックにじっと座ってる
引き潮をじっと見てるだけ
港のドックに座ったままで
時間を無駄に費やしてるんだ

Look like nothin's gonna change
Everything, still remains the same
I can't do what ten people tell me to do
So I guess I'll remain the same, yes

何も変わりやしないさ
何もかもがそのまんまなんだ
10人に何か言われたところで
俺には何もできやしない
だから俺もこのまんまなんだよ 

Sittin' here restin' my bones
And this loneliness won't leave me alone, yes
Two thousand miles, I roam
Just to make this dock my home

ここで座って骨休めをしてるんだ
この寂しさも俺を一人にはしてくれない
俺は2000マイルもさまよったのさ
そしてこのドックが
俺の居場所になったのさ…

Now I'm just gonna sit, 
at the dock of the bay
Watchin' the tide roll away, ooo yea
Sittin' on the dock of the bay
Wastin' time (whistle)

そしていま 俺はただ座ってる
港のドックにね
潮の満ち引きを眺めてるんだ
港のドックにただ座ってる
ただ座ってるだけなんだ

(Words and Idioms)
rest one's tired bones=骨休め

日本語訳 by 音時


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◆この曲をオーティスと共作したギタリストでプロデューサーのスティーヴ・クロッパーが1990年のインタビューで次のように述べています(In a 1990 interview on NPR's Fresh Air)

:オーティスは100ものアイデアを持っていたよ。サンフランシスコのボートハウスに滞在してたときに船が港に来るのを見てるうちにアイデアが沸いたんだ。この曲を聴くと、オーティス自身のことを書いてるんだって思うよ。彼はいつもは自分のことを書いたりはしないけどね。""I left my home in Georgia, headed for the Frisco Bay"も彼が音楽を演りにサンフランシスコに来たってことをまさに歌ったんだと思うよ。


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◆こうして名曲が誕生したわけなのですが、その後に悲劇が訪れます。(wikipediaより)

:12月6日と12月7日にメンフィスでこの曲の録音を完了させた。しかしその3日後の12月10日、オーティスの自家用飛行機が、ウィスコンシン州マディソンに向かう途中マノマ湖に墜落、オーティスと、バックバンドバーケイズのメンバー、スタッフ、パイロットの4人が死亡した。(中略)ビルボード・チャート1位、この年の年間ランキングでは6位と、オーティス最大のヒット曲。また、ロック時代(1955年7月9日以降)では初めて、アーティストの死後に発表されてチャート1位を獲得したシングルとなった。

 オーティスにとっての唯一の全米No1ヒットの「ドック・オブ・ベイ」は事故の3日前の録音だったんですね…。
 それまでのオーティスの曲調とは違った曲だったので周りのメンバーは戸惑っていたようですが、オーティス本人は「この曲はナンバーワンになるぜ」とレコーディング中からシングルにすることにこだわっていたようですよ。



◆Michael Bolton の"The Dock of the Bay"。1987年に全米11位になりました。



◆1982年、オーティスの息子2人と従兄弟で結成した3人組"レディングス"。父親のヒットをカバーして全米55位を記録しました。