あれ?この曲、まだ和訳記事にしてなかったんだ...!

このブログでこれまで取り上げてきたFleetwood Mac の楽曲の和訳記事はこちらです。

スティーヴィーのこの曲好きな人、きっと多いでしょうね。僕も大ボリュームの2枚組アルバム「Tusk」を聴いたとき、この曲が一番気に入りました。
 アルバム「Tusk」はリンジーがリードを取って作ったと言われていますが、リンジー曲は皆小粒で、クリスティン曲は地味で静かなものが多い(シングルになった“Think About Me”は相変わらずのクリスティン節が聴けた)ところ、スティーヴィー曲はみな秀逸!
   僕はこれまでのアルバムからもスティーヴィー曲だけ抜いたカセットを作って聴いておりました(^_^;)。
 なかでもこの曲“Sara”..."Wait a minute baby..."と語りかけるように歌い始めるスティーヴィー。そのあと曲はストーリーが語られるようにアップテンポになっていき、コーラスで"ねえ、セーラ"と呼びかけます。

◆女性の名前で"Sara"、70年代ではホール&オーツの「Sara Smile」は「微笑んでよサラ」、ボブ・ディランのアルバム「欲望」のラスト曲「Sara」は「サラ」(当時のディランの奥さんの名前)と日本語読みは「サラ」でしたが、1979年の12月にリリースされたマックのこの曲が「セーラ」、80年代に全米No1になったスターシップのナンバー「Sara」も「セーラ」と、日本のどこかで「サラ」ではなく「セーラ」にしようと、どこかで取り決めがあったのではないか(^▽^;)と思われます!


◆「Sara」はアルバムでは6分の長さなのですが、シングルは4分41秒のエディットバージョンでした。アルバムで聴いていた僕はシングルバージョンを聴くと、ムムっと物足りなさが残りましたが、この曲はなんと当初のデモでは16分あったとのこと。スティーヴィー嬢(当時)、やりすぎだぜ(^▽^;)。

 それがどのようにしてこうなったのか。そしてパッと読むだけでは難解な歌詞を持つこの曲の背景について、ちょっと調べて考察していきましょう...。


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Writer(s)
Stevie Nicks

Released in 1979
US Billboard Hot100#7
From The Album“Tusk”

*原詞の引用は太字です


Wait a minute, baby.
Stay with me awhile
Said you'd give me light
But you never told me 
about the fire...

ちょっと待って ベイビー
もうちょっとだけそばにいて
あなた私に“光をくれる”って言ったけど
“燃える恋をしてる”なんて
言わなかったじゃない...

Drowning in the sea of love
Where everyone would love to drown
But now it's gone
It doesn't matter what for
When you build your house
Then call me home

恋の海に溺れてるあなた
恋したら誰でも溺れたがるものよ
でもそれはもう終わった話ね
もうどうでもいい話なの
あなたが家を建てるときが来たら
そのときは...私を呼んでね

And he was just like a great dark wing
Within the wings of a storm
I think I had met my match
He was singing
And undoing
And undoing the laces
Undoing the laces

そう 彼はまるで"大きな暗闇の翼"だった
嵐の翼のなかに隠れてた存在なの
私は自分とピッタリな相手だと思ったわ
彼は歌を歌ってくれたわ
そして ほどいてくれたの...
...レースのドレスをほどいてくれた
...レースをほどいてくれたのよ…

Said, Sara
You're the poet in my heart
Never change
Never stop
But now it's gone
It doesn't matter what for
But when you build your house
Then call me home

言わせてね セーラ
あなたは私の"心のなかの詩人"
変わらないで
立ち止まらないで
でもそれは終わってしまったこと
もうどうでもいい話なの
あなたが家を建てるときが来たなら
そしたら 私を呼んでほしいのよ

Hold on
The night is coming 
and the starling flew for days
I'd stay home at night all the time
I'd go anywhere, anywhere, anywhere
Ask me and I'm there
Ask me and I'm there, 
I care

じっとしてて...
夜がやってくるわ
ムクドリは何日も飛び回ってるけど
私 夜は家にいるわ いつだって
どこにだって行く どこへでもよ
私を呼んで 駈けつけるから
私を呼んで そばに行くわ 
気になってるの...

In the sea of love
Where everyone would love to drown
But now it's gone
They say it doesn't matter anymore
If you build your house
Then, please, call me home

恋の海に飲まれてしまうと
誰でも自分から溺れたがるものよ
でもそれは過ぎたこと
もうどうでもいい話だわ
私が言いたいのは
あなたが本当の愛をつかんだのなら
そのときは お願い
もう私に遠慮しないでってことなの

Sara
You're the poet in my heart
Never change
And don't you ever stop
Now it's gone,
No, it doesn't matter anymore
When you build your house
I'll come by

セーラ
あなたがいたから私は詩が書けるの
変わらないで
立ち止まらないで
私の恋はもう終わったことよ
もうどうでもいい話なの
幸せな家庭を作ってよね
私 ふらっと寄るからね

Sara
Sara

セーラ
セーラ


 (Words and Idioms)
meet one's match 
=対等な相手と出会う、好敵手に出会う、困難に遭う
undo=元に戻す、ほどく、はずす
starling=【鳥】 ホシムクドリ 

日本語訳 by 音時(On Time)

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◆ムムム...相変わらず、まとまりのない(失礼)難解なスティーヴィーの書く歌詞...僕が購入したアルバム「Tusk」のエクスパンデッド・エディションのライナーノーツに載っている、メンバーへのインタビューを見てみましょう。

リンジー:
スティーヴィーの歌はうまくまとめるのが難しいことがあるんだ。歌詞が優先で、タイミングや構成のことはあまり気にしないようであれば、フリーフォームに近いものになる。スティーヴィーの曲の多くがそうだし、6分以上というのは珍しくないんだ。9分バージョンもレコーディングしたけど、その長さで発表するつもりはなかったはずさ。
 当時はスティーヴィーのプライベートな生活に関わりを持っていなかったし、歌詞の本当の意味は教えてもらっていない。ずっと当時ミックの奥さんだった彼女の友人に向けた歌詞だと憶測していたけどね。

 リンジーの言っている「ミック(・フリートウッド)の奥さん」ですが、その名前が「セーラ」って言うんですね(Sara Recor)
 セーラはモデルでスティーヴィーの昔からの友だちでした。ミックはセーラと1978年のスティーヴィー主催のNew Year's Eveのパーティーで知り合いました。スティーヴィーはミックと付き合っていた時期があったのですが、もうこのときは二人は破局していましたが、それでもそのスティーヴィー主催のパーティーでその友達に恋しちゃうっていうのですから、ミックもちょっと節操ないんじゃないかな(^-^;。セーラもジムという夫がいた既婚者だったのをミックが結局略奪し、セーラと結婚...ムムム…。

スティーヴィー:
16分のデモだったわ。この歌詞を書いたとき、セーラという友だちがいた。彼女はコーヒーを作ってくれて、カセットテープを用意したり、電池が切れないようにしてくれた。あのデモを録ったのは長い、長い夜だった。彼女は最高のソングライター・ヘルパーだった。セーラは"私の心の詩人"ね
 彼女はこの歌詞のすべてが自分について歌っていると思いたがっているけど、そうではないのよ。確かに彼女のことも歌っているけど、他の人のこともいろいろ歌ってる。"嵐の中の/大いなる間の翼"はミックのことだけど、ミックと付き合っていた頃、J.D.サウザーとよく話していたのよ。彼は「ミックとの関係がうまくいくわけがないこと、わかってるよね?」と何度も言っていたわ。

(この後、さらにスティーヴィーの話が続き、ミック・フリートウッドのコメントが続きます。続きが知りたい人は…“Tusk(Expanded Version)”を買いましょう(^▽^;)

 おおっここで歌詞に出てくる「私の心の詩人」(poet in my heart)という言葉が飛び出しました。そうか、セーラはスティーヴィーの友人でスティーヴィーが曲作りに専念できるようにするために色々骨を折ってくれた友達なんですね。スティーヴィーからすると、彼女が書いた沢山の作品はセーラが協力してくれたからできたっていう気持ち。作品のクレジットはもちろん「Stevie Nicks」と記録されるわけですが、スティーヴィーからするとセーラは「私の心の詩人」として感謝してたということなのでしょう。

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◆この曲「セーラ」の背景ですが、スティーヴィーがイーグルスのドン・ヘンリーとも交際していて、彼の子どもをお腹のなかに宿したときに、その名前を「セーラ」にしようとしていた、なんていう説もありますね。スティーヴィーは上記のコメント以外にもいろんな場面で小出しにするようにこの曲についてのコメントを残しています。興味がある方は、こちら「 Steivie Nicks On Her Own Word」というサイトをご参照ください。

◆そんなわけでしてこの「セーラ」に出てくる「セーラ」が"Sara Rector"さんであることはほぼ間違いないのですが、スティーヴィーは上記コメントでも「ほかの人のこともいろいろ歌ってる」と言っていました。でもこれってちょっと「Sara Rector」が調子こいて(?)"あの曲は私のことを歌っているのよ"なんて発言しているようなのでスティーヴィ―がそんな言い方をしたくなったのでは?なんて想像しています。
 
 まとめますと、
・出だしの部分は、スティーヴィーがミックとの恋を歌ってる。「光をくれるといったけど、炎のことは聞いてないわ」 の意味は「愛してくれるって言ったけど、他の女にも恋してるなんて知らなかったわ」って意味だと取りました。

・「恋の海にみんな溺れたがる」は「恋に夢中になるときってあるわよね」とミックに語りかけてます。でも私たちの関係はもう終わってしまった。だからミック、セーラといい家を建てたら、私のことはもう気にせず家に呼んでよね。

・そしてセーラ。私が歌詞を書いているときいろいろ気を使ってくれてありがとう。あなたがいたから沢山の作品ができたの。あなたは私の心の詩人よ。私たちはいつまでも友達よ。だからお願い。あなたとミックの家ができたら、遠慮しないで私を呼んでちょうだいね。

・でもうーむ。ムクドリが出てくるVerseがよくわからないなあ。
飛び回ってるムクドリを誰に例えているのかな?ミック?それともセーラ? それに引きかえ、私はいつも家にいて、いつだって呼ばれれば飛んでいく…ってスティーヴィー、自分のことをそう歌ってる?


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◆なんにしても、男女混合のグループであるフリートウッド・マック。やはり恋愛・男女関係がいろいろ渦巻いていたんですねえ。マックの素晴らしい作品はこうしたドロドロした男女関係のなかで生まれてきてることを改めて、恋愛の力はすごいんだって思ってしまいますね。←それがまとめですか!(^-^;


◆ああ この頃のスティーヴィーはいいなあ。 まさに歌姫。




◆“Sara”のデモバージョン。出だしにスティーヴィーの会話が入っていて"Cleaning Lady Version"とも言われています。



◆これは貴重!本番のステージ前にリハーサルをしているビデオです。メンバー各人もラフな髪型、格好。(1979年 L.A)




(この記事で参考にしたページ)
・Wikipedia Tusk
・CD「タスク」エクスパンデッドエディション ライナーノーツ
・「Steivie Nicks On Her Own Word」