こちらのライブ動画 "One,Two,Three,Four,One,Two!"のカウントから始まるオープニングがカッコいいです!

アルバム「The River」から"Jackson Cage"(邦題;ジャクソン刑務所)です。

◆邦題の通り"ジャクソン刑務所"の話かと思いきや、歌詞を味わってみると、実際の刑務所の話ではやはりありませんね。

 "ジャクソン"という町…ブルースの育った場所はニュージャージー州のフリーホールドという町ですが、この隣に"ジャクソン"(Jackson Township)があります。

この町を特定しているというわけではないと思いますが、ブルースがフリーホールドに住んでいた子どもの頃から成長するまでの間にきっと感じてきたことがモチーフになっているのでしょう。
アルバム「The River」に収録された"Out In The Street"や表題曲"The River"などの曲のように、米国の"こうした町"で日々暮らしている労働者について歌った歌なんだろうと思います。


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(Bruce Springsteen)

Released in 1980
From The Album"The River"

:原詞は太字

Driving home she grabs something to eat
Turns a corner and drives down her street
Into a row of houses she just melts away
Like the scenery in another man's play

家に帰る途中で彼女は何か食べものをつまむ
角を曲がって 自分の家へと車を走らせる
立ち並ぶ家のなかに彼女はただ溶け込んでいく
別なヤツの劇に出てきそうな よくある光景さ

Into a house where the blinds are closed
To keep from seeing things she don't wanna know
She pulls the blinds and looks out on the street
Where the cool of the night 
takes the edge off the heat

彼女は家ではブラインドを降ろしてる
見たくもないものを見ないで済むように
でも彼女はブラインドを上げ通りを見てみる
夜の冷気が広がって
昼の熱気を穏やかにしているのさ

In the Jackson Cage
Down in the Jackson Cage
And you can try with all your might
But you're reminded every night
That you been judged and handed life
Down in the Jackson Cage

ジャクソンの監獄のなかで
ジャクソンの監獄の底辺で
力の限りを尽くすことはできるけど
毎晩 思い出させられるだけなんだ
裁かれて判決を言い渡されてきた人生をね
ジャクソンの監獄の底辺で

Every day ends in wasted motion
Just crossed swords on the killing floor
To settle back is to settle without knowing
The hard edge that you're settling for

毎日が疲れ切って動けなくなって終わる
殺戮が行われる場所で決闘してるようなもの
落ち着いてしまうのは何も知らずにいることだ
おまえが我慢して受け入れようとしてるのは
堅い切っ先だというのに

Because there's always just one more day
And it's always gonna be that way
Little girl, 
you've been down here so long
I can tell by the way 
that you move you belong

だって 
あるのはいつも また変わらない一日さ
いつも同じように過ごすだけ
なあおまえ
もう長くここにいすぎたんだ
俺にはわかるんだ
おまえの一挙一動を見てるとね

To the Jackson Cage
Down in Jackson Cage
And it don't matter just what you say
Are you tough enough to play the game they play?
Or will you just do your time and fade away
Down into the Jackson Cage?

おまえはジャクソン監獄の囚人さ
ジャクソンの監獄の底辺に生きてる
おまえが何を言おうと関係ない
ヤツらが楽しむゲームを
おまえは参加できるくらい強いのか?
それともただ
刑期を過ごして消え失せるだけか?
ジャクソンの檻の底辺で

Baby, there's nights
when I dream of a better world
But I wake up so downhearted, girl
I see you feeling so tired and confused
I wonder what it's worth to me or you

ベイビー 俺はもっといい世界を
夢見る夜があるんだ
でも目覚めると 落ち込んでしまうのさ
おまえが疲れ切って困惑してるのがわかる
何が俺やおまえにとって
価値あるものなんだろうか

Just waiting to see some sun
Never knowing if that day will ever come
Left alone standing out on the street
Till you become the hand that turns the key

いつか太陽を見ることをただ待つだけか
その日がいつ訪れるのか知らないまま
一人取り残され 通りに立ちつくしてるんだ
そして おまえ 鍵をかける側の人間になるのさ

Down in Jackson Cage
Down in Jackson Cage
Well, darlin', can you understand
The way that they will turn a man
Into a stranger to waste away

Down in the Jackson Cage

ジャクソンの監獄の底辺で
ジャクソンの檻のその下で
ああ おまえにわかるかい
一人の男をやせ衰えた見知らぬ他人に
変えちまうヤツらのやり方を

ジャクソンの監獄の底辺で…

(Words and Idioms)

a row of houses=立ち並ぶ家
take the edge off= 
〔刃物の〕刃をなまらせる
〔言葉・感情の勢いや激しさなどを〕鈍らせる
with all ones might=力いっぱいに, 一生懸命に, 全力を尽くして 
hand=(評決・判決)を言い渡す
wasted=衰弱した
cross swords=渡り合う;切り結ぶ試合;切り合う
settle for=・・・で我慢する、手を打つ
do time=服役する、刑期を勤める
hand=手を使う人 
cf.turn the key in the lock=施錠する
waste away=痩衰える;やせ衰える

日本語訳 by 音時



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◆"監獄に捉えられたような日々の暮らし"...歌詞のなかにも"刑務所"用語(!?)が使われていますね。

That you been judged and handed life(裁かれて判決を言い渡される人生)

will you just do your time and fade away(do one's time=刑期を務める)

Till you become the hand that turns the key(ここは和訳がいまいち自信のないところですが、turn the key(in the rock)=鍵をかけると解釈して、檻に入れられる側ではなく、"鍵をかける側"になる、と解釈)

◆あとちょっと解釈に?だったのが、歌詞の最初に登場してくる"she"は曲の中盤には姿を消し、中盤からの登場人物は"I"、"You"そして"They"になります。彼女とは誰?どこに行ってしまったの?"They"とは…??

ここはこう解釈しました。

"She"とはジャクソンに暮らす一般的な女性。この女性が"監獄に繋がれてる"ことをブルースは歌っています。そしてコーラス部分の"You"=彼女を指すのでしょう。(途中で、"Little girl"などと呼びかける言葉が入りますね)そして歌詞の最後には"一人の男(a man)を"見知らぬ他人(stranger)"に変えてしまう、と男も例外じゃない、と歌っています。男も女も…ってことなんでしょう。

 そして"They"とは…これはよくある"権力者"=あちら側の人間、ってことでしょうね(^▽^;)。
 
◆ジャクソンの"刑務所"に繋がれた人々はこれからどうなるのでしょうか…? ブルースのナンバーで、"Born To Run"や"Thunder Road"など、最後に主人公は恋人と一緒に"駈け出していく""勝利するためにこの町を出て行く"と歌われる歌が僕は一番好きなので(単純!)、こちらをその結論に持っていきたいところですが、リリースは"Jackson Cage"の方が後なんだよな…(-_-;)。

◆スタジオバージョン。LPレコードではA面3曲めでした。




◆2016年 ノルウェーのオスロでの"Jackson Cage"




◆1997年リリース、他のアーチストによるスプリングスティーン・カバーアルバム"One Step Up/Two Steps Back: The Songs Of Bruce Springsteen"にて、"Jackson Cage"を歌うのは John Wesley Harding。なかなか味わいのあるナンバーになってます。