スティーヴ・ミラーは、ラジオ番組「全米トップ40」を聴き始めてから知ったアーティストです。

1976年から1977年にかけてアルバム「鷲の爪」(Fly like an Eagle)からはシングルヒットが沢山生まれました。"Take the Money and Run"に、全米No1"Rock'n Me"が気に入って、そのあと表題曲"Fly like an Eagle"がカッコ良かったですね。色んな曲で色んな顔を見せてくれるアーティストだと思いました。

◆ですので、1974年の全米No1ヒットとなった"The Joker"は後から聞いたわけですが、またもや面白い曲だなあと思い、曲のバラエティさ(層の厚さ?)を感じましたね。

これも後から知ったのですが、彼の長い音楽キャリアを踏まえて、ローリングストーン誌がスティーヴを「顔のない男」と呼んでいたとのこと。ああ、そうなのか、この曲"The Joker"もそんな風に言われている自分のことをスティーヴが歌った歌なんだろうな、と思いました。

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◆冒頭の歌詞では「人は俺を◎◎と呼んだり、××と呼んだり…」、サビでも「俺は◆◆だし、▽▽で...」と自分のことをあれこれと呼び名を変えたりしていますが、これもそう言われたりしてることを皮肉ってるんでしょうね。

ちなみに、最初に出てくる“space cowboy”, “gangster of love”そして“Maurice”はすべてスティーヴの曲のタイトルを歌詞にしています。

"Space Cowboy"...アルバム「Brave New World(1969)」(すばらしき新世界)B面2曲め 

"Gangster of Love"...アルバム「Sailor(1968)」B面3曲め
*ちなみにボズ・スキャグスはこのアルバムまでスティーヴ・ミラー・バンドの一員でした。

"Maurice"...アルバム「Recall the Beginning...A Journey from Eden(1972)」(エデンからの旅)A面2曲め
*曲のタイトルは"Enter Maurice"で、この曲のなかに"ポンパトゥス(pompatus)"という歌詞が出てきます。

この"pompatus"という言葉ですが辞書にも載っていない単語であったため、話題になり、注目を集めたようですね。でも実はこれ、スティーヴの"聴き間違い"のようです。
 この曲のSongfactsページに出ていたのですが、スティーヴは"メダリオンズ"というグループの"The Letter"という曲を聴いてから、"Enter Maurice"を書いたようなのです。そしてこの曲の歌詞に"puppetute"(意味は"あやつり人形")という歌詞があったのを、間違えて"pompatus"と書いてしまった、ということが真相のようです(^▽^;)。

◆また、こんな話もありました。

僕の持っている「ビルボード・ナンバー1・ヒット1971-1985下(音楽之友社)」のこの曲の解説にスティーヴのコメントがありました。(1978年の"ギタープレイヤー"誌でのコメントのようです。)

"ぼくは挑戦を受けたんだ。2分半の歌を作って、ラジオの「トップ40」でかかるようにしよう。ソウル・ディスコのシンフォニーががカバーするような曲をつくろう。シングルを出したいとはずっと思っていたんだ。それはゲームやクロスワード・パズルみたいなものだった。心をとらえる、ソウルやリアリティを感じさせる節があったら、よし、これで行こうって風だった"
(ビルボード・ナンバー1・ヒット1971-1985下(音楽之友社))

ムム?でもこの曲"The Joker"は上記のアルバムバージョンは4分半、シングルバージョンもそれでも3分半の長さじゃないか。スティーヴ、「2分半」はあきらめたか…(笑)


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Songwriter(s)
Eddie Curtis、Ahmet Ertegun、Steve Miller

Released in 1974
US Billboard Hot100#1
From The Album“The Joker”

:原詞は太字

Some people call me the space cowboy, yeah
Some call me the gangster of love
Some people call me Maurice
'Cause I speak of the pompatus of love

俺のこと"宇宙のカウボーイ"と呼ぶヤツもいる
"愛のギャング"って呼ぶヤツもいるんだ
それから"モーリス"なんて呼ばれたりもするよ
俺は"愛のポンパトス"について語ってるからね

People talk about me, baby
Say I'm doing you wrong, doing you wrong
Well, don't you worry, baby, don't worry
'Cause I'm right here, right here, 
right here, right here at home

みんな俺のこと噂してるよ ベイビー
"俺がおまえを傷つけたりしてヒドい"ってさ
でも心配しないでいいよ 信用してくれ
だって俺はここにいるじゃないか すぐここに
こうしてここでおとなしくしてるじゃないか

'Cause I'm a picker, I'm a grinner
I'm a lover, and I'm a sinner
I play my music in the sun

I'm a joker, I'm a smoker
I'm a midnight toker
I sure don't want to hurt no one

だって俺はギター弾きで にやけた野郎さ
恋人であって 罪作りな男
お日様の下で音楽を奏でるんだよ

俺は冗談野郎 タバコも吸うし
夜には「×××」の愛好家さ
誰も傷つけたりしたくない それが俺

I'm a picker, I'm a grinner
I'm a lover, and I'm a sinner
I play my music in the sun
I'm a joker, I'm a smoker
I'm a midnight toker
I get my lovin' on the run

ギターを弾くとニヤニヤ笑っちまう
恋人にするとモテモテで罪作り!?
太陽のもとで弾くのが一番気持ちいいんだよ

冗談好きで スモーカーなのさ
夜には気持ちいいことをするんだ
走り回ってだって好きなものを手にするのさ

Whooo
Whooooo


You're the cutest thing that I ever did see
I really love your peaches, wanna shake your tree
Lovey-dovey, lovey-dovey, lovey-dovey all the time
Oee, baby, I'll sure show you a good time

おまえは出会ったなかで一番キュートな娘だよ
おまえの"桃"が大好きさ からだを揺らしたいよ
ラブラブ すきすき いつだっていちゃつきたい
ああベイビー いい想いをさせてあげるさ

'Cause I'm a picker, I'm a grinner
I'm a lover, and I'm a sinner
I play my music in the sun

I'm a joker, I'm a smoker
I'm a midnight toker
I get my lovin' on the run

だって
俺はギター弾き にやけ野郎って言われるよ
みんなの恋人さ 罪作りなんだね
音楽を太陽のもとで奏でよう

俺はジョーカー そんでスモーカー
夜には「×××」の愛好家
欲しいものは何だって手にするよ

I'm a picker, I'm a grinner
I'm a lover, and I'm a sinner
I play my music in the sun

I'm a joker, I'm a smoker
I'm a midnight toker
I sure don't want to hurt no one
Whooo Whoooo

誰も傷つけたくないんだ
自分勝手な男だよ

People keep talking about me, baby
Say I'm doing you wrong
Well, don't you worry, don't worry, no, don't worry, mama
'Cause I'm right here at home

You're the cutest thing I ever did see
Really love your peaches, wanna shake your tree
Lovey-dovey, lovey-dovey, lovey-dovey all the time
C'mon baby, now I'll show you a good time

おまえは出会ったなかで一番キュートな娘だよ
おまえの"桃"が大好きだ からだを揺らしたいよ
ラブラブ すきすき  いつだってイチャつきたい
ああベイビー いい想いをさせてあげる...

(Words and Idioms)
picker=つつく[選ぶ]物[人]、泥棒、スリ
〈俗〉〔ギターやバンジョーなどの〕弾き手
grinner=〔歯を見せて〕ニヤニヤ笑う人
toke=
((略式))名(マリファナ)タバコの一服
[動]他〈タバコに〉火をつける,…を一服する
lovey-dovey 【形】 恋に夢中の 〔異性などに〕のぼせた、イチャイチャした

日本語訳 by 音時


◆はい、途中でだいぶ意訳させていただきましたが、まあ、端的に言えば、"自己紹介"ですね!
後半、ちょっとオジサン風の"エロい感じの歌詞"になります(^▽^;)が、ちょっと表現をぼかしつつ…(苦笑)

◆ちなみにこの曲のSongfactsに、スティーヴがこの曲を書くのに影響を受けた曲が2曲紹介されていました。

ひとつがアラン・トゥーサンの "Soul Sister"という曲で、ゆっくりした曲のテンポや雰囲気が"The Joker"そっくりです。
(アランは、グレン・キャンべルの"Southern Nights"や、ポインター・シスターズの"Yes We Can Can"などの作者ですね)

また後半のエロいところ(!)の歌詞は、1954年の"ザ・クローバー"の "Lovey Dovey" だそうです。

◆これは知らなかった!"The Joker"は1990年に全英でチャートのNo1を記録していたんですね。


(こちらご参照)
スティーヴ・ミラー・バンド「The Joker」:発売から16年、さらに11年後にも1位を記録した名曲(undiscoermusic.jp)

2001年にはシャギー(Shagyy)の全米No1シングルになった"Angel"でもサンプリングされています。