"黒くぬれ!(Paint It Black)" は全英、全米でシングルチャートの1位を記録しました。ただし英国ではシングルのみの発売で、全米ではアルバム「アフターマス」に収録されています。(アメリカ版にしか収録されていないので輸入盤で買うときはご注意ください!)

 1966年にデッカ・レコードからリリースされた際は、タイトルは"Paint it,Black"と途中にカンマ(,)が入っていましたが、これはデッカの間違いだったようです。これが"人種差別だ"ということでファンの間で論争を巻き起こしてしまいました。今ではカンマを取ったタイトルになっています。
(Paint it black)だとそのまま"黒くぬれ"なのですが、"Black!"と呼びかけのようになると確かに別な意味が独り歩きしてしまった…とわからなくもないですよね(-_-;)。

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◆曲的にはストーンズが本格的にシタールを取り入れた最初の事例として知られています。シタールを弾いているのはブライアン・ジョーンズです。

Wikipediaには、ブライアンがストーンズの曲はだいたいミックとキ―スが作ってきていたのでそうでないサウンドを作ろうとシタールを持ち込んだように書かれていましたが、この曲のSongfactsページにはキース・リチャーズのコメントが出ていました。

 フィジー(Fiji)に何日か滞在しているときに、(その土地では)シタールやあらゆる種類のインドのものを手作りで作ってたんだ。シタールはスイカやカボチャなどを砕いて固くするんだ。それらはとっても脆く、取り扱いには注意が必要なんだ。俺達はシタールをスタジオで試してみようと思った。"Paint It Black"で正しい音を出すために、シタールがぴったり合っていることがわかったのさ。ギターじゃ、こううまくマッチはしないのさ"

◆日本語訳ですが、正直言いまして、最初は下調べをすることもなく"黒くぬれ(Paint it,Black)"の歌詞の意味については「世の中に不満を持った主人公」が「世界なんかみんな黒一色になっちまえばいいんだ!」とぶちまけた「反体制」ソングなのかと思っていました。
 でも歌詞を味わううちに、ちょっとこれは違うな…とわかりました…。

(続きは後半で)

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Songwriters: JAGGER, MICK / RICHARDS, KEITH
lyrics c ABKCO Music Inc.

Released in 1966
US Billboard Hot100#1
From The Album“Aftermath(American Version)”

:原詞は太字

I see a red door 
and I want it painted black
No colors anymore 
I want them to turn black
I see the girls walk by
dressed in their summer clothes
I have to turn my head 
until my darkness goes

赤いドアを見ると
黒く塗りつぶしてやりたくなる
色なんていらないのさ
全部黒くしてやりたいんだ
夏服を着た女の子達が
そばを通りすぎていったんだ
俺は見ないように反対を向いた
俺の中の闇が通りすぎるまで

I see a line of cars 
and they're all painted black
With flowers and my love, 
both never to come back
I see people turn their heads 
and quickly look away
Like a newborn baby 
it just happens ev'ryday

車が列になっていた
すべて黒い色の車だった
献花と俺の恋人
両方とももう戻らない
通りかかる人は何かと思って見るけど
すぐにあっちを向いてしまう
赤ん坊が生まれるのと同じさ
毎日どっかで起こってる出来事

I look inside myself 
and see my heart is black
I see my red door 
and it has been painted black
Maybe then I'll fade away 
and not have to face the facts
It's not easy facing up 
when your whole world is black

自分の心の中を覗き込んだよ
そしたら俺の心も黒い色だった
赤いドアを見かけたけど
黒く塗りつぶされていたよ
俺がいなくなってしまえば
事実に目を向けないで済むかな
俺の世界がすべて真っ黒になっちまったのを
見つめるのはツラいんだ…

No more will my green sea 
go turn a deeper blue
I could not forsee 
this thing happening to you
If I look hard enough 
into the setting sun
My love will laugh with me 
before the morning comes

俺の緑色の海が深い青色になることは
もうないんだろう
こんなことお前の身にも降りかかるなんて
俺には予知することなんかできなかったんだ
もし沈む夕陽をじっと見つめてたら
となりで笑いかけてくれてくれないか
朝が来るまでの間でいいから

I see a red door 
and I want it painted black
No colors anymore 
I want them to turn black
I see the girls walk by dressed 
in their summer clothes
I have to turn my head 
until my darkness goes

赤いドアを見ると
黒く塗りつぶしてやりたくなる
色なんていらないんだ
全部黒くしてやりたいのさ
夏服を着た女の子達が
そばを通りすぎていったけど
俺は見ないように反対を向いた
俺の中の闇が通りすぎるまで

Hmm, hmm, hmm...

I wanna see it painted black, 
painted black
Black as night,
black as coal
I wanna see the sun,
blotted out from the sky
I wanna see it painted, 
painted, painted, 
painted black
Yeah

全部黒くしてやりたい
黒くぬりつぶしたい
夜のようにまっ黒に
炭のようにまっ黒に
太陽なんか空から
消えてなくなっちまえ
黒くしてやりたい
黒く塗るんだ
塗っちまえ
みんな真っ黒に

Hmm, hmm, hmm...


(Words and Idioms)
forsee =予知する 見越す
look hard=見つめる
blotted out=無になる 見えなくなる

日本語訳 by 音時

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◆「黒い車が列になっていた」などから光景が浮かびました。"霊柩車"とそれに連なる数台の車…お葬式の風景です。「花と俺の恋人…両方とももう戻らない」...そして、

I could not forsee this thing happening to you...

「おまえの身にこんなことが起こるなんて、俺には予見できなかった」
…急なこと、だったんでしょうね。

時は夕刻。大きな沈む夕陽が目の前にあるってことは、もしかすると主人公は浜辺かどこか、沈む夕陽が見える場所にひとりいるのでしょうか。夕陽、その方向に恋人が逝ってしまった天国の方向と考え、朝が来るまでの間でいいから、おまえの笑顔がもう一度見れないだろうか…。

 主人公は"恋人に先立たれた悲しみを抱えている"。そのひとにとっては"世界はもう黒一色になってしまった。赤い色のドアやカラフルな夏服を着た少女たちを見たりすると無性に黒く塗ってしまいたい...そんな衝動に駆られている。でも「そうしない自制心と闘っている歌」なんだと思いました。
 もう少し色んな意味をもたせているのかもしれないけど、僕には主人公の悲しさが伝わってきました…。

◆先にふれたSongfactsページにミックのコメントも出ていました。

 どうして「死」について曲を書いたのですか?と彼に聴きました。ミック・ジャガーはこう答えました。"わからない。以前あったことだ。決して俺だけの独創的な考えじゃないさ。アンタがどう受け止めるかって話だよ"

ミックははっきりとは「死」について書いたとはコメントしていない?のかな。いろんな解釈があっていいのかもしれません。

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★Paint It Blackが1位になった週の全米ビルボードHot100チャートです。

パーシー・スレッジ"男が女を愛する時"に代わって1位に。2位は"心に決めたかい?"、3位には"アイ・アム・ア・ロック"も入ってますね。5位はマインドベンダーズ"A Groovy Kind Of Love"。1985年のフィル・コリンズのカバーが全米1位になりますね。そして28位に圏外から初登場はビートルズの"ペーパーバック・ライター"、翌週15位にジャンプアップして、次の週にいきなり1位を奪ってしまいます。す、スゴい…(゚Д゚)ノ。

US Top 40 Singles 11th June, 1966

1 3 PAINT IT, BLACK -The Rolling Stones
2 4 DID YOU EVER HAVE TO MAKE UP YOUR MIND - The Lovin’Spoonful 
3 5 I AM A ROCK - Simon and Garfunkel
4 1 WHEN A MAN LOVES A WOMAN -Percy Sledge
5 2 A GROOVY KIND OF LOVE - The Mindbenders

6 10 STRANGERS IN THE NIGHT - Frank Sinatra
7 6 MONDAY, MONDAY - The Mamas and the Papas
8 8 IT’S A MAN’S MAN’S MAN’S WORLD - James Brown and the Famous Flames 
9 9 GREEN GRASS - Gary Lewis and the Playboys
10 12 BAREFOOTIN’ - Robert Parker



◆LiveでのPain It Black。有名曲だけにイントロからすごい盛り上がりです。



◆ベトナム戦争が題材の映画「フルメタル・ジャケット」(1987年;スタンリー・キューブリック監督)。エンディングにこの曲が使われている。
 この曲の収録されたストーンズのアルバム「Aftermath(米盤)」は「災害の被害」「戦争直後の状況」等の意味。そんな意味も頭をよぎりました。