このブログでこれまで取り上げてきたビリーの楽曲の和訳記事はこちらです。

 洋楽アーティストで出世作のあと、期待された次のアルバムでコケて「一発屋」の称号をいただいてしまうアーティストが沢山います。ビリーの"ストレンジャー"に続くアルバムは世界が待っていました。でも"ニューヨーク52番街(52nd Street)"はさらに大きなヒットになりました。

◆「52nd Street」の盤に針を落とした世界が、最初に聞いたサウンドが、A面トップのこの"Big Shot"。ギターの音にガツン!とやられましたね。続く"Honesty"、そして1stシングル"My Life"、最後にドラマティックな構成をみせる"Zanzibar"と途中で止めることができなくて、ノンストップで聴いてしまいました。
この曲"Big Shot"は「52nd Street」からは第2弾シングルとして発売されて、全米14位のヒットになりました。

 "Big Shot"については、当初は歌詞をあまり気にしていませんでした。"My Life"や"Honesty"は詳細は別にしても、だいたい日本人でもどんな曲なのかはだいたい想像ついて、歌詞と合わせてメロディなどを好きになりましたが、やはりこの曲はサウンドに注目。アルバムのオープニングでガツンとくるこの曲で、ぐいっとこのアルバムに引き込まれました。僕にとってはそんな曲でありました。

◆でも今回は歌詞に注目しないとね。

まず"Big Shot"って何のこと?
辞書によると「big shot」=(話)有力者,重要人物,大物,大御所,顔役,お偉いさん,大スター(biggie).のことなんだそうです。

"You had to be a big shot, didn't you"
おまえは"大物"にならなきゃいけなかったんだよな、そうだろ?

ってことですね。"did't you?"は英文法では「付加疑問文」ですね。「前が肯定なら否定形、前が否定なら肯定」「前が過去形なら過去形、現在形なら現在形」でつけるんですよ。中学生のみなさん!?

そう、この曲の主人公は「大物に憧れて」「有名になりたくて」、いや"had to"があるから"ならなきゃいけないって思い込んで"そのような行動を取ってるんですね。「高価なもの」や「高級なもの」、モノ、場所(レストランの名前など)も歌詞に出てきます。なめられないよう、発言も「大口を叩かなきゃいけません」(open up your mouth)。「友達をみなノックアウト」は昨日とはまるで違うその人の態度に友だちも口をあんぐり…ってところでしょうかね。

では、この曲の歌詞と日本語訳を見てみましょう。続きは後半で。

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(Billy Joel)

Released in 1979
US Billboard Hot100#14
From The Album“52nd Street”

:原詞は太字

Well 
You went uptown riding in your limousine
With your fine Park Avenue clothes
You had the Dom Perignon in your hand
And the spoon up your nose

そう 
おまえはリムジンに乗って山の手に行った
カッコいいパーク・アヴェニューの服を着て
おまえの手にはドン・ペリニヨン
鼻にスプーンで一服やってたな

And when you wake up in the morning
With your head on fire
And your eyes too bloody to see
Go on and cry in your coffee
But don't come bitchin’to me

朝 起きたときには
おまえの気分はごキゲンだが
目は血走ってて視界はおぼろなんだ
そうしながらも気分は落ち込むのさ
でも俺に文句言わないでくれよ

Because you had to be a big shot, didn't you
You had to open up your mouth
You had to be a big shot, didn't you
All your friends were so knocked out

You had to have the last word, last night
You know what everything's about
You had to have a white hot spotlight
You had to be a big shot last night

だっておまえは
「大物」になりたかったんだ そうだろ?
大口を叩かなきゃいけなかったんだ
「大物」になろうとしてたんだ そうだろ?
友だちみんな ぶっ飛んじまったぜ

決めゼリフを言わなきゃならなかったのさ 昨晩
だって何でもあらゆることを知ってるからね
おまえは まばゆいスポットライトに照らされて
昨夜は「大物」にならなきゃいけなかったのさ

They were all impressed with your Halston dress
And the people that you knew at Elaine's
And the story of your latest success
Kept'em so entertained

みんなおまえのホルストン・ドレスに魅せられてたぜ
ヤツらエレインで知り合った連中さ
おまえの最新のサクセスストーリーは
ずいぶんヤツらを楽しませたんだ

Aw but now you just can't remember
All the things you said
And you're not sure you want to know
I'll give you one hint, honey
You sure did put on a show

おお だが今 
おまえは自分が口にしたことなんて
ちっとも覚えちゃいない
知りたいかどうかも定かじゃないのさ
ひとつヒントをやろうか ハニー
おまえのショーは見事だったよ

Yes, yes, 
You had to be a big shot, didn't you
You had to prove it to the crowd
You had to be a big shot, didn't you
All your friends were so knocked out

You had to have the last word, last night
You're so much fun to be around
You had to have the front page, bold type
You had to be a big shot last night

そうさ 
おまえは"大スター"になろうとしてたのさ
それを人々に証明しなきゃいけなかったんだ
"大スター"になるべき人間だと思ってんだろ?
友だちはみんなブッたまげちまったんだ

そう言い切らなきゃいけなかったのさ そうだろ?
有名人の仲間入りが楽しかったんだ
表紙に載りたかったんだろ?極太文字でね
昨晩 おまえは「大物」になりたがってたのさ

Well, 
It's no big sin to stick your two cents in
If you know when to leave it alone
But you went over the line
You couldn't see it was time to go home

ああ 
他愛のないことに固執するのは
そんなに悪いことじゃない
やめるタイミングがわかっているならね
でもおまえは一線を越えちまったのさ
家に帰る時間を見失っちゃったんだ

No, no, no, no, no, no, 
you had to be a big shot, didn't you
You had to open up your mouth
You had to be a big shot, didn't you
All your friends were so knocked out

ダメさ ダメダメ ノーノーノー…
おまえは"大物"にならなきゃいけなかった
大口をたたく必要があったんだ
おまえは"大物"になるのを目指してたのさ
友だちみんなは驚いてノックアウトさ

You had to have the last word, last night
So much fun to be around
You had to have a white hot spot light
You had to be a big shot last night

昨晩は言い切らなきゃならなかったんだ
大物の仲間入りはとても楽しいからね
スポットライトがあたる気持ちはどう?
大物になった気分はどんなもんなんだい?

(Words and Idioms)
cf.You're on fire= ノッてるね、調子がいいね
bitch=意地悪なことを言う、文句を言う
Elaine's was a bar and restaurant in New York City that existed from 1963 to 2011.
put on a show=ショーを開く(催す・見せる・披露する)
fun to be around=〔友達などが〕一緒にいて楽しい
put one's two cents=〔話に割り込んで〕自分の意見を言う[述べる]、

日本語訳 by 音時

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◆歌詞に出てくるホルストン(Halston)は米のファッション・ブランド。"Sex and the City"の登場人物がかっこよく着ているドレスをイメージするといいのかな。(Halston.com)

また、エレイン(Elaine's)はマンハッタンにあったレストランの名前。設立者でオーナーはエレイン・カウフマン。 多くの有名人、特に俳優や作家が頻繁に訪れたそうです。2011年年にカウフマンが亡くなってから数か月後にエレインは閉店したそうです。(NYの伝説的なレストランとして本も出ているようですね)

◆最初、僕は、ビリーが自分を客観的に見て歌ってるのかな?とか思っていたのですが、どうやら違うようです。"ホルストン・ドレス"を着てるなどの歌詞からわかるのは、主人公がどうやら女性であること。
 ここでこの曲の"Songfacts"ページを調べてみました。すると次のようにあります。

ビリーが"The Howard Stern Show"(2010)に出演し、次のように説明しています。彼はビアンカ・ジャガー( Bianca Jagger)に向けてこの曲を書きました。彼女はミック・ジャガーと結婚している"社交界の大物(socialite)"です。この曲はミックの視点から書かれています。ミックとビアンカはケンカをして、このアルバムがリリースされる前に離婚してしまいました。ビリーはミックだったらビアンカにこう歌うんじゃないか?と考えてレコーディングをしたのです。

 はい、歌詞的にはこういうことなんですね。ミックの愚痴をビリーは耳にして、それでピン!と歌詞とメロディが浮かんだんですかね。でも、この曲が、浪費して見栄っ張りの自分の奥さんにたいしての揶揄だけじゃないものを感じます。"had to be…"や"didn't you?"の使用には何かしら、相手への愛情が込められているのではないかな。彼女はそうしなければいけなかった、まわりがそうさせたんだ。もしかしたら、俺(ミック)のパートナーとしてそうならなきゃいけないって想いがそうさせたとしたら俺のせいなんだ…なんて。

Big Shot Billy


◆歌詞は結構面白い表現が使われています。さすが詩人のビリーと思った箇所があります。

"cry in your coffee"

"cry into your beer"=自分を哀れむ, 落ち込む、という表現があるんですね。朝のシーンだから"beer"を"coffee"に入れ替えたんでしょう。実際にコーヒーを飲んで泣いたわけではない(^▽^;)。

"It's no big sin to stick your two cents in"

「2セント」もホントのお金の話ではなく、「2セント(1ドル=100円計算で2円)の価値しかない」=他愛のない、くだらない、取るに足らない、という意味のようです。

(例) "That's just my two cents. You can believe what you like."
   "私の個人的な意見で、たいした意味も持ちませんが、○○と考えます"


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◆“Big Shot”が最高位14位を記録した週の全米チャートです。
US Top 40 Singles For The Week Ending March 24, 1979

「哀愁のトラジディ」「恋のサバイバル」「ある愚か者の場合」。邦題もユニークでした。7位"Sultans Of Swing"(悲しきサルタン)。好きな曲がいっぱいのチャートだなあ。"12位 リトル・リヴァー・バンドや13位ベイビーズもまた聴きたくなってしまった。

1 2 TRAGEDY –•– Bee Gees
2 1 I WILL SURVIVE –•– Gloria Gaynor 
3 6 WHAT A FOOL BELIEVES –•– The Doobie Brothers 
4 4 HEAVEN KNOWS –•– Donna Summer with Brooklyn Dreams
5 5 SHAKE YOUR GROOVE THING –•– Peaches and Herb 

6 3 DA YA THINK I’M SEXY? –•– Rod Stewart 
7 8 SULTANS OF SWING –•– Dire Straits 
8 7 FIRE –•– The Pointer Sisters
9 10 WHAT YOU WON’T DO FOR LOVE –•– Bobby Caldwell
10 9 A LITTLE MORE LOVE –•– Olivia Newton-John

11 11 DON’T CRY OUT LOUD –•– Melissa Manchester
12 14 LADY –•– Little River Band 
13 13 EVERY TIME I THINK OF YOU –•– The Babys 
14 16 BIG SHOT –•– Billy Joel 

◆大学生に「"Big Shot"は何にインスパイアされてできた曲なんですか?」と聞かれて答えるビリー。ちょっとごまかしたな(^▽^)。