「なんじゃこりゃ?」ソング!?ですね。

トップ40にはもう一歩だったのですが、こちらレイ・スティーヴンスの「おもしろソング」は当時も話題になりました。バリー・マニロウを知らない方には普通の曲に聴こえるかもしれませんが、知ってる方にとっては…爆笑もののおもしろソングです。
 
「哀しみのマンディ」「歌の贈り物」「涙色の微笑」「コパカバーナ」etc...…シンガー、エンターテイナーとしてバリー・マニロウの人気が最大になったのは1977年から1978年でしょうか。そのとき、バリーの楽曲のマネをして、バリー風の歌い方をして、おまけに歌詞もバリーへのお願い、とバリーづくし(!)のこの曲。原題は"I Need Your Help Barry Manilow"ですが、邦題は「バリー・マニロウに捧ぐ」となっています。

◆シンガーはレイ・スティーヴンス。ジョージア州出身のレイは1962年「Ahab,The Arab(アラブのアハブさん)」を全米5位のヒットに、以降はコメディタッチやミステリアスなちょっと変わった曲を歌うことでも注目されました。そしてそのなかから全米No1ヒットが2曲生まれています。

 1曲目は子ども達のコーラスも印象的な"Everything Is Beautiful(みんなビューティフル)"(1970年2週間No1)、なかなかいい曲です。そして若い人は知らないかなあ。2曲目は"The Streak(ストリーキング)"(1974年3週間No1)。裸で公衆の面前を駆け抜ける!"ストリーキング"が70年代、流行しましたね。1974年のアカデミー賞授賞式の会場、突然ひとりの裸の男がプレゼンターの後ろを駆け抜けました。レイの「The Streak」はこの放送の5週間には全米No1に輝いてます。

これが世界発!?"ストリーキング"の瞬間だな!(^▽^;)



◆そんな風刺も持ち味のレイが目をつけたのが"バリー"の人気!でした。(続きは後半で)


BarryHelp

(Date Gonyea)

Released in 1979
US Billboard Hot100#49
From The Album
“The Feeling's Not Right Again”

:原詞は太字

My account is overdrawn, 
My car slid down the hill
I'm givin' up
I've got no more to give

My beagle bit the vet, 
and my daughter's on the pill
And my ficus plant has lost 
it's will to live

銀行口座はマイナスだし
丘に停めてた車は滑り落ちちゃった
もう僕はダメさ
もう何もできない

飼ってるビーグル犬は獣医を噛んじゃうし
ムスメはピルを飲んで避妊してる
イチジクの苗木は
しおれて育つ気もなくしちゃってるんだ

I owe Mastercharge my life, 
I've got adolescent skin
My doctor says I can't use any salt

My waist is getting thick,
but my hair is getting thin
And my house 
is on the San Andreas fault...

クレジットカード頼みで生きてるんだ
顔には"大人ニキビ"ができちゃったよ
塩分は取っちゃダメって医者に言われてる

腰回りは太っていく一方で
髪の毛は薄くなってきた
おまけに自宅は
サンアンドレアス断層の上にあるのさ…

I need your help, Barry Manilow
I'm miserable and I don't know what to do
Sing me a song, sing it sad and low
No one knows how to suffer quite like you

助けてください バリー・マニロウ
僕はみじめで どうしていいかわからないのです
僕に歌ってください あなたの歌を悲しく 低く
あなたなら苦しみ方を知ってるはずですよね

My shrink is out of town
My love life is a joke
My ex-wife sold my diary to Rona

All my ashtrays are overflowed, 
and I don't even smoke
And my sinuses came back from Arizona...

精神科医は町を離れちゃってるし
僕の性生活なんて冗談みたいさ
別れた女房は僕の日記をロナに売っちゃった

灰皿は吸い殻でいっぱい
僕は煙草なんて吸わないのに
おまけに鼻炎がアリゾナから戻ってきたよ

(Spoken)
"Hello, Mandy?
 It's me. I'm here at the Copa
You know, the Copacabana
I know I don't write the songs 
that make the whole world sing but
I do know one thing, Mandy...
I can't smile without you... 
Forget Lola...
Remember that weekend in New England?
I thought then that
This could be the magic at last... 
Now here I am...
Tryin' to get the feelin' again! "

"やあマンディ
僕だよ。いまコパにいるんだ
知ってるよね コパカバーナだよ
僕には世界のみんなが歌う歌なんて
書くことはそりゃあできないけど
ひとつだけわかってるんだ マンディ…
きみがいないと笑顔になれない…
ローラのことは忘れてくれ…
"ニュー・イングランドの週末"を覚えてるかい?
あのときこう思ったんだ
最後に魔法が起きたんだって 
そしていま僕はここで
あのときの感情を再び取り戻そうとしてる"

I need your help, Barry Manilow
I'm all alone and sitting on a shelf
Sing me a song, sing it sad and low
I feel like feeling sorry for myself

助けてくれよ バリー・マニロウ 
僕は一人ぼっち 屋根の上で座ってる
歌っておくれ  悲しく 低く歌ってよ
僕は自分が不憫でならないんだ

I need your help, Barry Manilow
Your songs can really comfort the unlucky
Sing me a song, sing it sad and low
I wish I didn't have to feel so yucky...
I wish I didn't have to feel...

助けてください バリー・マニロウ
あなたの歌は「不幸」を慰めてくれるのです
歌ってくださいあなたの歌を 悲しく低く
こんな嫌な気分から抜け出したいのです
こんな気持ちから逃れたいのです…


(Words and Idioms)
account=預金額
overdraw=引き(出し)過ぎる、〔口座を〕借り越す
beagle=ビーグル 《ウサギ狩り用の小型の猟犬》. 
vet=獣医
ficus=イチジク
Mastercharge=Maser Cardの旧称
adolescent=思春期、青年期
San Andreas Fault=サンアンドレアス断層。カリフォルニア州南部から西部にかけて約1,300kmにわたって続く巨大な断層。断層の活動によって周辺地域は地震の多発地帯となっている。
shrink=精神科医、精神分析医◆軽蔑的に使われることが多い。◆【語源】headshrinkerから。◆【語源】妄想に取り付かれて大きくなった頭を縮めて(shrink)あげる人というイメージから。
sinus infection=副鼻腔感染症、鼻炎(sinus=洞)
yucky=気持ちの悪い 不快 ぞっとする

日本語訳 by 音時

81fNsgC39hL._SL1500_
こちらバリーのオリジナルのアルバムジャケット!


◆歌い方、アレンジ、そのあたりもバリー。アルバムジャケットはバリーの「哀しみのマンディ」のパロディ、シングルは「歌の贈りもの」のパロディ。そして注目は歌詞。途中のレイの語りの部分の歌詞です。

"Hello, Mandy?
→ご存じ「哀しみのマンディ」(Mandy)ですね。

 It's me. I'm here at the Copa
→ディスコヒット「コパカバーナ」(Copacabana)

I know I don't write the songs 
→バリーの代表曲「歌の贈りもの」(I write the Songs)

I can't smile without you... 
→イントロの口笛が印象的。「涙色の微笑」(Can't Smile Without You)

Forget Lola...
→コパカバーナに登場するヒロイン"ローラ"

Remember that weekend in New England?
→いつまた会える?「ニュー・イングランドの週末」

This could be the magic at last... 
→コン、コン…「恋はマジック」(Could It Be the Magic)

Now here I am...
Tryin' to get the feelin' again! "
→あの気持ちを取り戻したいよ。「フィーリング」(Tryin’To Get The Feeling Again)

歌詞にバリーの楽曲を散りばめてるんですね!

◆バリーにはこの曲以降もヒットが沢山。僕が続編?を作ってみました(創作です)。

夜のしじまに(Somewhere In The Night)、
想い出のなかに(Looks Like We Made It)、
忘れ得ぬ面影(Even Now)があるんだ。

でも夜明け(Daybreak)はきっと来る。
僕らは愛に生きる二人(Ready To Take A Chance Again)なんだから、
人生は航海(Ships)のようなもの。

悲しみをこえて(I made It Through The Rain)いけば、
いつかどこかで(Somewhere Down The Road)、
ふたりのオールド・ソング(The Old Song)が聞こえてくるよ…。

邦題やないか!(-"-)

◆上がレイのこの曲のシングルジャケット。下がバリーのアルバム「BarryⅡ」のジャケット。

I_Need_Your_Help_Barry_Manilow_-_Ray_Stevens

0000297247


◆歌詞で意味がわからなかった箇所を少し調べてみました。

1.別れた女房が日記を売ったという"Rona"について

 正直いって正確にはわかりません。でも、一般人の日記を売ろうとして買ってくれる場所があるもんでしょうか? そこで考えたのは夫と妻とどちらかの不貞などがあった場合に財産分けをする際に有利な証拠を見つけるために、相手の日記をどこかに"持ち込んだ"のでは…?

 そう思って「Rona」という有名な"離婚相談所?"のようなものがあるのかなと「Rona divorce」でググってみました。すると…

 "Rona Barrett how to spent 40 years as the top gossiper in Hollywood"という記事を見つけました。この記事で紹介されている"Rona Barrett"さんはプレスリーのプリシラとの結婚や離婚をスクープしたことなどで有名なようです。ボウイへのインタビュー写真もありました。現在80歳でご健在。日本でいう芸能レポーターの故梨元勝さんっていうところでしょうか。
 この“Rona”さんではないかなーというのが僕の推理!? (^_^;)。
Mail online

ですので、ゴシップを買ってくれる人=Rona、というブラックジョークことなのかなと思いました。(Nativeの人に聞く機会があったら確認してみらいところです)

2.鼻炎がアリゾナから帰って来た、について my sinuses came back from Arizona…

風邪クスリの「ドリスタン」(日本では香取慎吾さんがCM)。海外では"Dristan Sends Your Sinuses To Arizona!"(ドリスタンはあなたの鼻炎をアリゾナへ運びます=スッキリした気分になれて、リゾート地のアリゾナに行った気分ですよ)ってコマーシャルがあったようですね。

これだ。Dristan Sends Your Sinuses To Arizona!




◆ユーモアのあるこの曲、当のバリーはどう思ったんでしょうね(笑)。

パロディ・ソングを歌うっていうことだと、アル・ヤンコビックが80年代に出てきますが、その時代で風刺される曲、アーティスト、ってやっぱりその時代を作ったスターです。レイ・スティーヴンスというアーティストの幅の広さと、バリー・マニロウの偉大さを再認識しました。


◆レイの初の全米No1ヒット"Everything Is Beautiful"。とてもいい曲です。



◆そして"ストリーキング"!さすがに今の時代はすぐ捕まっちゃうだろうなあ(^▽^;)。



◆80年代のパロディ・ソング。アル・ヤンコヴィックの"Eat It"。