フリートウッド・マック全盛期のギタリスト、リンジー・バッキンガムのセカンド・ソロ・アルバム「Go Insane」からのタイトル曲がこの曲です。全米23位のヒットになりました。
たしかカセット・テープには録って、ラベルに曲目を書いた記憶はあるけど、そんなに聴かなかったな。そんなに好きじゃなかった(コラ!)。

なんかサウンドも好きじゃなかったし、実験的な曲?って感じがしました。タイトルも好きじゃなかったしな。(でもこの3年後にマックの"Big Love"を聴いたときは、"Go Insane"の完成形?といった風に感じました。雰囲気は似ていますよね)

Go insanel


◆タイトル「Go Insane」ですが、これはイディオムでご存じの方は多いでしょう。"気がおかしくなる""正気でなくなる"なんていう意味ですね…。リンジーはどうしてそんな歌を作ったのか、しかもアルバムのタイトル曲してまで…。

このアルバムのWikipediaには、アルバムについての解説として

このアルバムはバッキンガムの前の恋人であった"キャロル・アン・ハリス"に捧げたものです。彼はちょうど関係を終わらせたところでした。

とあります(-_-;)。うーむ、別れた恋人に捧げる作品が"Go Insane"ってどういうことだ???


◆ところで、このソロ・アルバムは、フリートウッド・マックの年表を簡単に作ると…

(1982)
「Mirage」Fleetwood Mac

(1983)
「Wild Heart」Stevie Nicks

(1984)
「Chrisine McVie」Christine McVie
「Go insane」Linsey Buckingham

(1985)
「Rock A Little」Stevie Nicks

(1987)
「Tango In The Night」Fleetwood Mac

となっていて、マックでいうとアルバム「Mirage」と「Tango In The Night」の間の数年間=メンバーのソロ活動が活発な時期の作品でした。このリンジーの2nd ソロ・アルバムは、スティーヴィー・ニックスでいうと、2nd「Wild Heart」と3rd「Rock A Little」の間にリリースされています。スティーヴィーのこの2作品、そして同じく1984年にリリースされた、クリスティン・マクヴィーのソロと比べても、なんだか"Go Insane"はパッとしないイメージがありましたね…。

Goinsane


(Lindsey Buckingham)

Released in 1984
US Billboard Hot100#23
From The Album“Go Insane”


:原詞は太字

Two kinds of people in this world
Winners, losers
I lost my power in this world
'Cause I did not use it

この世界には2種類の人間がいる
それは 勝者 と敗者
この世界で俺は力を失った
力を使うことをしなかったんだ

So I go insane
Like I always do
And I call your name
She's a lot like you

そして... 俺は頭がおかしくなる
いつも俺がそうするように
そしておまえの名前を呼ぶ
彼女はおまえによく似てるんだ

Two kinds of trouble in this world
Living, dying
I lost my power in this world
And the rumors are flying

この世界では2種類のトラブルがある
それは 生きること と死ぬこと
この世界で俺は力を失った
いろんな噂が飛び交っているよ

So I go insane
Like I always do
And I call your name
She's a lot like you

そして 俺は気がふれていく
俺にはよくあることさ
そしておまえの名前を呼ぶのさ
彼女はおまえによく似てる


日本語訳 by 音時

lindsey-buckingham-1984-album-photo_1_5

◆うーん、意味深な歌詞で、ちょっと意味がわからないぞ。

この曲のWikipediaには、歌詞についてリンジーのコメントが書かれていました。大意がこんなところです。(英語の和訳は僕なので正確さは目をつぶって!)


リンジー:
狂気(Insanity)は自分自身が置かれてる環境に密接に関連してると言えるかもしれないね。
例だけど非常に受け入れられるかもしれないのはロックンロールをやってる少数の人たちのグループでは典型的な行動かもしれないし、銀行で働いてる人なんかにも関連するかもしれない。
そうしてみると、僕たちはみんな少し狂気に陥る傾向があるんだ。そういうことさ。このアルバムが言っていることの一つはこういうことなんだ。狂気に陥っても大丈夫さ。自分自身がギリギリのところまで行って、それでも戻って来られるのを見るのは実際のところ、イライラが解放されて気持ちよく(カタルシスを感じる)ものとも言えるんだ。うまくいけば 自分が元の自分に戻ったことがわかるだろう。


うん、この解説を見る限り、「Go Insane」って"気がふれる"、"おかしくなる"っていうのは、イライラを解放することが目的で、敢えて?"Go Insane"な状態になってカタルシスを感じることが大切ってことなのかな。本当の自分を再認識することにもなる。

また、上に書いてあるようなことを言った数年後に、リンジーは本音を明らかにした?ようです。

数年後 バッキンガムはこの歌は実際は スティーヴィーと別れて7年経ったときのことを書いた歌だと明らかにしました。
僕たちはそのときカップルとしては崩壊していた。そのせいで、ひとりの人間として苦しんでいたんだ。でもなんとかやってくために自分を否定するといった手の込んだ訓練をしなくてはいけなかったんだ…部屋の反対側にすべての手荷物を残して感情を区分するんだよ。目の前のことを片付けるには、根本的に解決する時間なんてないんだ。急速充電をしてあいまいな状況のなかでやっていかなくてはいけないんだ。

だから"Go insane"っていうのは、自分がガードを下げて、本当はなんとかしなくちゃいけないことに戻ったときいつでも起きることなんだ。それって"気がふれる(go insane)"ことに似ているんだ…僕にとってはいつものことなんだよ。 作られた環境のなかで自分個人を維持しながらやっていくのには、とても長い時間がかかったんだ。長いあいだ、やれていないことがとても沢山あるんだ。

スティービーは当時、ステージでの上の人格が彼女を支配していて、ある意味 大きな世界に呼ばれてしまってたんだ。そして僕から離れていったんだよ…。


◆えっ、キャロルに捧げたアルバムのはずなのに...スティーヴィーのことを歌っていたなんて、リンジー、そりゃあ罪だよ...。

このリンジーのコメントを元に、曲の大意を要約すると…


この世で生きていくのは残酷。
勝者か敗者のどちらかしかいないのだから。
僕はそういう世界でたたかっていくのを止めたんだ。

するとだんだん気がふれるようにおかしくなっていく。
でもこれが僕のよくやる自分を再認識する方法なんだ。
おまえの噂を耳にするたび自分がおかしくなっていく。

ああでもおまえ(スティーヴィー)の名前を呼んでしまうんだ…
彼女(キャロル)はおまえに似てるから、おまえを忘れられないんだ…

ってことなんですかね。もし本当にそうだったとしてもリンジー、それは言わないでほしかったよ…。
でももしかしてこのコメントは強がり?であって、ただのスランプだったようにも思えるか。

あとの祭りか、この曲は訳さない方がよかった曲なのかもしれません...(-_-;)

星船さん、こんなんなってしまいました…!(「ビルボードチャート日記 by 星船」)

◆"Go Insane"のアコースティック・ヴァージョン。



◆アルバム"Go Insane"に収録された曲 "D.W. Suite"。この曲は前年(1983年12月)に泥酔して溺死してしまってこの世を去った、デニス・ウィルソン(ビーチ・ボーイズ)に捧げた曲とのことです。