全米でブレイクした大ヒットアルバム"American Fool"、翌年の次作アルバムは"Uh-Huh"、邦題は「天使か悪魔か」と付けられました。
・・・この数年の間、彼のなかでは色んなことがあったようですね。

◆何といっても「名前が変わった」のはビックリしました。ずっと"ジョン・クーガー"という名で覚えてきたのですが、このアルバムから"ジョン・クーガー・メレンキャンプ"と彼は名乗りました。

 "メレンキャンプ"が本名、"Couger"はニックーム。彼にとって"Couger"は"名乗らされた"、気に入ってなかったニックネームであり、アーティストとしてはやっぱり本名を名乗りたかったのでしょう。(「Uh-Huh」のあとの2枚のアルバム「Scarecrow(1985)」「The Lonsome Jubilee」までが"John Couger Mellencamp"、1991年の「Wherever We Wanted」で"Couger"を取り、ようやく本名"John Mellencamp"になります)

◆早口でつぶやくような歌、とても荒削りな印象を持つこの曲。この曲のSongfactsページによると、"Crumblin' Down"はアルバム「Uh-Huh」のレコーディングの最後に作成された曲だったようです。

 ジョンはほとんどの曲を録り終えたあと、このアルバムにはリードシングルとなる曲がないと考え、そこで彼のソングライティングのパートナーである、ジョンと共に"Hurts So Good"を書いたことのあるジョージ・グリーンに相談しました。ジョージは最初に"walls crumbling down"という言葉を上げ、このことにアイデアを出し合って曲を作り上げていったと言います。
 ジョージによると"この曲は「一発でっかい仕事で当てたあと」(the big-time deal falls through)、成功がやがて消えていったとき、何をしたらいいかを歌ってる"と言っています。またジョンは、当時、エレクトリック・エンジニアだったジョンのいとこが失業したことからもインスパイアされたと言っているようです。

それではこの曲の歌詞と日本語訳(By 音時)です。続きは後半で。

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(John Mellencamp,George Green)

Released in 1983
US Billboard Hot100#9
From The Album“Uh-Huh”

:原詞は太字

Some people ain't no damn good
You can't trust 'em, you can't love em
No good deed goes unpunished
And I don't mind being their whipping boy
I've had that pleasure for years and years

どうしようもないヤツらがいる
信用もできず 好きにもなれない
悪いことをしたってお咎めなし
ヤツらの身代わりだって 俺は気にしない
もう何年もそんなんだけど楽しんでるのさ

No, no I never was a sinner
 -tell me what else can I do
Second best is what you get
 -till you learn to bend this rules
Time respects no person
 -what you lift up must fall
They're waiting outside
 -to claim my crumblin' walls

でもな 
俺自身が罪を犯したことなんてない
 …俺に何ができるって言うんだい?
二番煎じなんてよくあることさ
 …規則を曲げることも知らなくちゃ
時は誰も"えこひいき"しないんだ
 …上がったら落ちるのが必然さ
それをみんな外で待ってるんだ
 …壁が崩れ落ちるのを望んでるのさ

Saw my picture in the paper
Read the news around my face
And now some people
Don't want to treat me the same

俺の写真を新聞で見たよ
俺の周りのヤツらの記事も読んだ
いまじゃ 前と同じように俺を扱ったり
したくないヤツらもいるんだよ

When the walls come tumblin' down
When the walls come crumblin' crumblin'
When the walls come tumblin' tumblin' down

壁が崩れ落ちりゃそんなもんさ
ダメになったらそんな扱いだ
転げ落ち 壁が崩れ落ちるときにゃ

Some people say I'm obnoxious and lazy
That I'm uneducated and my opinion means nothin'
But I know I'm a real good dancer
Don't need to look over my shoulder 
to see what I'm after

俺が感じ悪いヤツで怠け者だって言うヤツら
無学で俺の意見なんてクソだとさ
だけど 俺は本物のダンサーさ
気になんてしなくていいのさ
俺のしたいことなんてな

Everybody's got their problems
 -ain't no new news here
I'm the same old trouble 
 you've been having for years
Don't confuse the problem with the issue, girl,
'Cause it's perfectly clear
Just a human desire to have you come near

誰だって問題を抱えてるさ
…別に目新しいことなんてない
俺だって同じ問題を抱えてる
…おまえだって何年もそうだろう
解決すべきことと議論すべきことを混同すんな
はっきりしてることじゃないか
おまえがそばにいてほしいんだ
人間だから求めてるのさ

Want to put my arms around you
Feel your breath in my ear
You can bend me, you can break me
But you better stand clear

おまえを抱きしめたいのさ
おまえの吐息を耳元に感じたい
俺を折り曲げたり 壊してもいい
でもいまは 離れてた方がいい

When the walls come tumblin' down
When the walls come crumblin' crumblin'
When the walls come tumblin' tumblin' down

壁が崩れ落ちる時にはな
俺の壁はお前の前じゃメロメロに崩れちまう
おまえの前じゃ 俺も"かたなし"なんだ

(Words and Idioms)
deed=行為、行い... 
go unpunished=罰を免れる
whipping boy=身代わり(イギリスで王子の行いを叱るとき、身代わりにむち打たれる少年。whipping boyは王子の唯一の友だち)
second best=2番目に良いもの、次善の策
obnoxious=反抗的な 〔人が〕感じの悪い、とても不快な、... 
uneducated=教育のない,無学な
look over one's shoulder.= 自分の肩越しに見る、後ろを振り返る[気にする]
"What I'm After"=Same as "what I am looking for" or "what I want"
stand clear=〔邪魔にならないように~から〕離れて立つ

日本語訳 by 音時

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 歌詞を全体見てみると、前半と後半で"Crumblin’ Down"の意味が違っているように思います。前半は上記エピソードのように、金を持ってりゃチヤホヤされ、いざ人気が落ちてくると見向きもしなくなる。”落ちぶれる”ことを”Walls tumblin’ down”と言っています。

 でも後半の歌詞は女性との恋について歌っていますよね。おまえを抱きしめたい、だけど今は俺から離れてた方がいい(you better stand clear)。何でか?っていうと、”When the walls come tumblin' down”。この壁は硬派でクールに振る舞ってることを言ってるんじゃないかなと思いました。おまえの前じゃ俺はメロメロになっちまうから、俺にいま近寄らないでくれ(本当は近くにきてほしいのに)。”カッコいい俺じゃなくなっちまうから”って意味に取りました。


◆歌詞で”Don't confuse the problem with the issue”という部分。”problem”も”issue”も日本語では「問題」と訳されますが、意味合いが違います。

 大きく言うと「problem」は「解決すべき困難な問題」。「深刻な」問題という響きがあります。「困難なこと」を意味する「difficulty」という言葉にニュアンスが近いです。

 一方「issue」は「議論されるべき問題点」のことを指します。「issue」は、「賛成する人がいたり反対する人がいたりする賛否両論の話題、論争点」を示し、「subject」や「topic」などの単語が近いです。国会などで取り上げられる問題、例えば選挙権の年齢制限などは、政治家や国民から賛否両論の意見が飛び交う議題なので「issue」を使います、とのことです。英語の勉強になりますね!

(英語部マガジン)さんのサイトを参考にさせていただきました。 

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◆“クランブリン・ダウン”が最高位9位を記録した週の全米チャートです。
US Top 40 Singles For The Week Ending November 26, 1983

ライオネル強し。翌週まで計4週間1位をキープしますが、12月10日からはポールとマイケル"言って、言って、言って"(^▽^;)が6週間1位を独占します。トップ10には洋楽ポップスの楽しい曲でいっぱい。ジョン・クーガー・メレンキャンプは勢いはよかったのですが9位で足踏み。結局これが最高位となります。

-1 1 ALL NIGHT LONG (All Night) –•– Lionel Richie
-2 2 SAY SAY SAY –•– Paul McCartney & Michael Jackson 
-3 3 UPTOWN GIRL –•– Billy Joel 
-4 4 ISLANDS IN THE STREAM –•– Kenny Rogers with Dolly Parton
-5 5 CUM ON FEEL THE NOIZE –•– Quiet Riot

-6 7 LOVE IS A BATTLEFIELD –•– Pat Benatar
-7 10 SAY IT ISN’T SO –•– Daryl Hall & John Oates
-8 12 HEART AND SOUL –•– Huey Lewis & The News
-9 14 CRUMBLIN’ DOWN –•– John Cougar Mellencamp
10 13 P.Y.T. (Pretty Young Thing) –•– Michael Jackson 

◆2005年のファーム・エイドでのステージです。



◆ビリーのマジソン・スクエア・ガーデンにゲストで現れたのは…!John Mellencamp!
"Crumblin' Down"を歌います。