アルバム「ナイロン・カーテン」のA面ラストのこの曲"Goodnight Saigon"は邦題は「グッドナイト・サイゴン」のあとに"英雄達の鎮魂歌"(レクイエム)と付けられていました。

 7分03秒というビリーの書いた曲のなかでも最長で、イントロが長い。イントロはコオロギの鳴き声からヘリコプターが近づく音が聞こえてくるなかで、ビリーのピアノが弾かれ始めます…。
 
 今ではこの曲がベトナム戦争に赴いていった普通の若い兵士たちを歌った歌であることは知られているかと思います。

GoodnightSai


◆詳しくは、こちらのサイトとこの曲のウィキペディアを御覧ください。

【ビリー・ジョエルが紡いだ究極の反戦歌】
TapThePop 佐々木モトアキさん)

ウィキペディア:グッドナイト・サイゴン~英雄達の鎮魂歌】


the-nylon-curtain


(Billy Joel)

Released in 1983

Belgium (Ultratop 50 Flanders)♯1
Netherlands (Dutch Top 40)♯1
Netherlands (Single Top 100)♯1
Irish Singles Chart ♯19
UK Singles Chart ♯29
U.S. Billboard Hot 100 ♯56

From The Album“The Nylon Curtain”

:原詞は太字

We met as soul mates on Parris Island
We left as inmates from an asylum
And we were sharp
as sharp as knives
And we were so gung ho to lay down our lives

俺たちはパリス・アイランドで出会い
魂の友となり
出所するみたいに「収容所」から旅立った
俺たちはギラギラに尖ってた 
まるでナイフのようにやる気に満ちてて
生命を投げ出さんばかりだった

We came in spastic like tameless horses
We left in plastic as numbered corpses
And we learned fast to travel light
Our arms were heavy but our bellies were tight

俺たちは慣れない馬のようにオドオドしてた
番号の振られた死体として ビニール袋入りさ
だから軽装で移動することをすぐに学んだ
俺たちの武器は重く 胃がキリキリ痛んだ

We had no home front
We had no soft soap
They sent us Playboy
They gave us Bob Hope
We dug in deep and shot on sight
And prayed to Jesus Christ
with all of our might

俺たちには後ろの守りもなく
やわらかな石鹸もない
「プレイボーイ」の雑誌を送られて
「ボブ・ホープ(コメディアン)」が慰問にやってきた
俺たちは深く穴を掘り 
何か見つけたらすぐに撃った
そしてキリストに祈ったんだ
必死の想いで精一杯

We had no cameras to shoot the landscape
We passed the hash pipe and played our Doors tapes
And it was dark, so dark at night
And we held on to each other
Like brother to brother
We promised our mothers we'd write

俺たちには景色を撮るカメラもなく
ハシシを回し飲みしてドアーズのテープをかけた
そこは暗く 夜になりおさら暗いなかで
俺たちは声をかけあい励まし合った
まる兄弟どうしがそうするように
俺たちは約束したんだ
何かあったら互いの母親に手紙を書くことを

And we would all go down together
We said we'd all go down together
Yes we would all go down together

そうさ 俺たちは一蓮托生だ
死ぬも生きるも一緒だと声をかけた
そうさ 俺たちは一緒に戦場から帰るんだ…


Remember Charlie
Remember Baker
They left their childhood on every acre
And who was wrong? And who was right?
It didn't matter in the thick of the fight

チャーリーを覚えてる?
ベイカーを覚えてるかい?
"子どもの自分"を それぞれ故郷の土地に置いてきだんだ
誰が悪い?誰が正しい?
そんなのは
戦地の真っ只中じゃどうでもいいこと

We held the day in the palm of our hands
They ruled the night, and the night
Seemed to last as long as six weeks
On Parris Island
We held the coastline
They held the highlands

俺たちは日中は掌握していたけれど
夜を支配していたのはヤツらだ
夜は延々と長く感じたよ
まるでパリス・アイランドの6週間のように
俺たちは海岸線を押さえたが
高地はヤツらのものだった

And they were sharp
as sharp as knives
They heard the hum of our motors
They counted the rotors
And waited for us to arrive

ヤツらはギラギラに尖ってた 
まるでナイフのように
ヤツらは俺たちのヘリのモーター音を聞き
回転音を数えて
俺たちがやってくるのを待ち伏せしてたんだ…

And we would all go down together
We said we'd all go down together
Yes we would all go down together

俺たちはみんな一緒に倒れていくんだ
みんな一緒に命を投げ出そうと言ったんだ
そうさ 俺たちは一緒に倒れていくんだ…


(Words and Idioms)
Parris Island=the training grounds for the Marines, on the South Carolina coast just north of Savannah.
inmate=(病院・刑務所などの)在院者,収容者
Asylum=避難所、保護施設
Gung-ho=血気盛ん、血の気が多い、やる気に満ち溢れた
spastic=けいれん(性)の、ばかな、へたくそな
tameless=飼いならされていない,なれていない
corpse=(人間の)死体
travel light=身軽な支度で旅をする, 軽装で旅行する
belly=(人間・動物・魚の)腹,
home front=(戦時中の)国内戦線、銃後(戦場の後方。直接戦闘に加わらない一般国民)
Bob Hope=コメディアン;1史上もっとも熱心に軍人慰問活動に取り組んだ芸能人の一人
shot on sight=《be ~》見つかった場合に直ちにその場で撃たれる
hash=ハシシ、ハシーシュ◆大麻に含まれる樹脂(幻覚物質)を乾燥させた作った麻薬
acre=エーカー 《面積の単位; =4840 平方ヤード,約 4047 平方メートル; 略 a.》
in the thick of the fight. =戦闘の真っただ中に
rotor=(ヘリコプターなどの)回転翼

日本語訳 by 音時

220px-GoodnightSaigon

◆新兵の訓練所(パリス・アイランド)で会ったソウル・メイトたちが旅立つときは「収容所から出る囚人」のような気持ち。
ナイフのようにギラギラ尖っていて命も投げ出さんばかり…そして、この表現が、後半に戦争の相手の表現描写でもう一度出てきます…。
 夜の高地での戦闘。暗闇のなかでヘリの到着を相手が待伏せしていたのがわかったその瞬間…死を覚悟したんでしょうね…。

正直、ここの歌詞は和訳していて、身が震えました。

◆2度出てくる"we would all go down together"というコーラスですが、最初と2度めと意味合いが違うように思いました。

(1)最初のコーラスは、戦場でお互い兄弟のように声をかけ支え合い、何かあったら互いの母親に手紙を書くと約束し
「みんな一緒に生きて帰るんだ」との誓い。

"go down"は色んな意味がある言葉ですよね。

文字面そのまんまでは「今いる場所から下る」という意味であることから「この戦場を出(て家に帰ること)」だと思いました。

(2)2回目(最後)のコーラスは…相手に待伏せされていたのがわかり死を覚悟し「俺たちはこうしてみんな一緒に倒れるんだ…」という意味(-_-;)。
ビリーは「(ベトナム)戦争に赴いて命を落としていった若者たちの死」を歌うことで大国が戦争という手段をとることに問題提起をしたのだろうと思いました。

(3)また、辞書を調べてみると"go down"にはこんな意味もありました。

→〔後世に〕伝わる 〔to〕; 〔歴史などに〕残る, 記録される, 書き留められる 〔in〕.
go down (in history) as a hero 英雄として(歴史に)残る.

→ 《英口語》 (休暇・退学・卒業などで)大学を去る; 〔…へ〕帰省する, 退学する 〔to〕.

ネイティブの方だともともと複数の意味に捉えられるのかもしれませんね。

GoodnightBillyJoel


◆今日は8月6日=ヒロシマから75年。戦争はしてはいけない、核兵器と人間は共存できない、ということを考えていきたいですね。
この曲を今日取り上げた背景にはそんなことがありました…。

新型コロナウイルスが猛威をふるっている、この2020年。人間どうし争うのではなく、力を合わせてウイルスに立ち向かって勝利しなくてはいけないですよね。
「戦争はやめよう」の声を上げていきましょう。


◆こちらのビデオは 歌詞にかなり忠実に作られています。この曲について何が歌われているかわかりやすいと思います。