ジャニスのこの曲。ヒットしていた1971年は僕はまだ洋楽を聴いていなかったので、リアルタイムでは知らなかった話です。この曲が全米1位になったのは、彼女が亡くなってから…なんですね。
◆ハリウッドのモーテルでヘロインの過剰摂取が原因でジャニスは天国に旅立ってしまいました。これが1970年10月4日の夜のこと。
アルバム「パール」を完成させる前に逝ってしまったジャニス。しかしこのアルバムは1971年1月にリリースされ、アルバムチャートで全米No1(9週間ん)に、シングルカットされた「ミー・アンド・ボビー・マギー」も3月20日から2週間に渡って全米No1になっています。
◆ジャニスはクリスと交際し男女の仲だったようですが、2人は1970年にはもう別れていました。この曲の「ボビー・マギー」は、当初、クリスはジャニスのことを歌ったわけではなかったようですが、ジャニスにとってはクリスの姿を投影して歌っていたんじゃないかなと思います。
ジャニスの死後、クリスは、「ジャニスのために書いたわけじゃないけど、ジャニスのことのようだ」と言っていたようですよ。
(こちらの記事をご参照)
Released in 1971
US Billboard Hot100#1(2)
From The Album“Pearls”
:原詞は太字
Busted flat in Baton Rouge,
waiting for a train
When I was feeling nearly faded as my jeans
Bobby thumbed a diesel down,
just before it rained
And rode us all the way to New Orleans
バトン・ルージュでお金も底をつき
とにかく列車が来るのを待ってたの
気分はアタシの
色あせたジーンズみたいにブルー
ボビーが親指で
ディーゼルトラックを止めたのは
雨が降る直前だった
運転手さんはアタシたちを
ニュー・オーリンズまで
乗せてってくれるって
I pulled my harpoon
out of my dirty red bandana
I was playing soft
while Bobby sung the blues, yeah
Windshield wipers slapping time
I was holding Bobby's hand in mine
We sang every song that driver knew
薄汚れた赤いバンダナから
ハーモニカを取り出して
優しく吹くと ボビーがブルーズを歌い出す
ウインドワイパーが時を刻むみたい
アタシはボビーの手をぎゅっと握りしめる
運転手さんの知ってる歌を
片っ端から歌ったわ
Freedom's just another word
for nothing left to lose
Nothing, I mean nothing,
honey if it isn't free, no no
Yeah feeling good was easy Lord,
when he sang the blues
You know feeling good was
good enough for me
Good enough for me and my Bobby McGee
"自由"という言葉は言い換えれば
失くすものなど何もないってこと
意味なんてない
そう 自由じゃなければ意味がない
すぐに気楽になれるのよ
彼がブルーズを歌えば
ちょうどいい気持ちになれたのよ
ちょうどよかったの
アタシとボビー・マギーには
From the Kentucky coal mines to the California sun
Yeah, Bobby shared the secrets of my soul
Through all kinds of weather, through everything we done
Yeah, Bobby baby kept me from the cold
ケンタッキーの炭鉱から
カリフォルニアの太陽へ向かったわ
ボビーとアタシは魂の秘密を分け合ったのよ
天気がどうであろうと
アタシたちが何をしようと
ボビーはアタシを寒さから温めてくれた
One day up near Salinas, Lord,
I let him slip away
He's lookin' for that home,
and I hope he finds it
But I'd trade all of my tomorrows
for one single yesterday
To be holdin' Bobby's body next to mine
ある日サリナスのそば周辺で
アタシは彼を出て行かせてしまったの
生まれた家を探してるなら
見つかることを願う
できるならアタシの明日を全部
過去のあの一日と取り替えたいの
ボビーの身体を
すぐ近くに抱きしめたあの日と引き換えに…
Freedom's just another word
for nothing left to lose
Nothing, and that's all that Bobby left me
Feeling good was easy Lord,
when he sang the blues
You know feeling good was
good enough for me
Good enough for me and my Bobby McGee
"自由"は言い換えれば
"失う物なんてない"ってこと
"何もない"
ボビーがアタシに残したものはそれ
すぐに気楽になれる
彼がブルーズを歌えばね
そんないい気持ちになれるのが
ちょうどいいの
それでよかったの
アタシとボビー・マギーには
La da la la la, la da la la la da la
La da da la la la Bobby McGee yeah
La da la la la, la da la la la da la
La da da la la la Bobby McGee yeah
La da la la la, la da la la la da la
La da da la la la Bobby McGee yeah
La da la la la, la da la la la da la
La da da la la la Bobby McGee yeah
Lord, I called him my lover,
I called him my man
I said called him my lover
just the best I can and come on
And and a Bobby oh, and a Bobby McGee yeah
Lo lo lo lo lo lo lo lo lo lo lo lo
Hey hey hey Bobby McGee, lord
La da la la la, la da la la la la la
Hey hey hey, Bobby McGee yeah
ああ 彼を恋人って呼んでたの
アタシのものって呼んでたのに
これまでの最高の恋人って呼んでいたのに
ああボビー ボビー・マギー
そうよボビー・マギー…
ラ・ダ・ラ・ラ・ラ
ラ・ダ・ラ・ラ・ラ
ヘイ ヘイ ヘイ ボビー・マギー‥
(words and idioms)
I'm [flat] busted.=out of money (お金がない)
Baton Rouge=バトン・ルージュ=ルイジアナ州の州都;ニューオーリンズに続き州内第二位の規模を誇る都市。
thumb=〈ヒッチハイカーが〉親指をあげて乗せてもらう
harpoon=銛、皮下注射器 〈米俗〉ハーモニカ
windshield wiper =(自動車などの)ワイパー
just another=(どこにでもある)ありきたり
coalmine=炭鉱,炭山
Salinas=カリフォルニア州中部のモントレー郡に位置する都市
日本語訳 by 音時
日本では「ジャニスの祈り」のB面としてシングルリリース。
ジャニスの歌う「ミー・アンド・ボビー・マギー」では、主人公はジャニス(女)でボビー・マギー(男)という設定で、クリスのオリジナルとは性別が逆転した設定になっています。
◆クリスの歌詞では、ヒッチハイクの車のなかで、自分(男)がハーモニカを吹くと、ボビー(女)がブルーズを歌って手拍子を取る、のに対し、ジャニスの歌詞では、アタシ(女)がハーモニカを吹くと、ボビー(男)がブルーズを歌ってくれたので、アタシはボビーの手をぎゅっと握った…
なんて違いも発見しました。
◆また、「自由」について歌われたあの有名なフレーズも若干歌詞が変えられているんですね。
クリス:
And nothin' ain't worth nothin' but it's free
何もないのは価値はない でも"自由"こそが大事なんだ
ジャニス:
Nothing, I mean nothing, honey if it isn't free, no no
意味なんてない そう 自由じゃなければ意味がない
この2つの違い「自由」であることの大切さ、こだわりはジャニスの言葉の方が強いように感じます。
クリスは「何もなくたって、自由があればいい」と気楽な感じで捉えているのに対してヒッピーのライフスタイル感を感じますが、それに対して、ジャニスは「自由じゃなければ何もならない」ですからね。ジャニスはクリスの作ったこの曲に込められたメッセージを受け止め、より「自由が大事なの」と歌いたかった?のかなと僕は想像しています。
◆この曲がヒットしていた頃の全米ビルボードチャートです。
US Top 40 Singles Week Ending 20th March, 1971
TW LW TITLE –•– Artist (Label)-Weeks on Chart (Peak To Date)
オズモンズに代わってジャニスが首位に立ちました。5位から2位にあがたトム・ジョーンズ。勢いがありましたが、次週もジャニスが1位を守り(計2週をキープ)、次の1位はこの週3位のテンプテーションズ「はかない想い」9位にトップ10入りしたサミ・スミス「Help me through the night」も作者はクリス・クリストファースン。クリス作の曲がトップ10内に2曲。時代を代表するソングライターでもあったのがわかりますね。さいごに邦題のご紹介。5位「ふたりの誓い」、7位「悲しき青春」、9位「ひとりぼっちの夜」、10位「心に秘めた想い」。
1 2 ME AND BOBBY McGEE –•– Janis Joplin (Columbia)-8 (1 week at #1) (1)
2 5 SHE’S A LADY –•– Tom Jones (Parrot)-7 (2)
3 4 JUST MY IMAGINATION (Running Away With Me) –•– The Temptations (Gordy)-7 (3)
4 1 ONE BAD APPLE –•– The Osmonds (MGM)-12 (1)
5 3 FOR ALL WE KNOW –•– The Carpenters (A&M)-7 (3)
6 7 PROUD MARY –•– Ike and Tina Turner (Liberty)-8 (6)
7 9 DOESN’T SOMEBODY WANT TO BE WANTED –•– The Partridge Family (Starring Shirley Jones and Featuring David Cassidy) (Bell)-6 (7)
8 18 WHAT’S GOING ON –•– Marvin Gaye (Tamla)-5 (8)
9 15 HELP ME MAKE IT THROUGH THE NIGHT –•– Sammi Smith (Mega)-10 (9)
10 10 IF YOU COULD READ MY MIND –•– Gordon Lightfoot (Reprise)-13 (5)
(PS) アルバム「PEARL」のジャケットで使われた独特のフォント。
「Me and Bobby McGee」や国内盤「ジャニスの祈り」でもこのフォントが使われてます。
「黒字看板」さんが調べて記事にされてます!(こちらをご覧ください)
(PS) アルバム「PEARL」のジャケットで使われた独特のフォント。
「Me and Bobby McGee」や国内盤「ジャニスの祈り」でもこのフォントが使われてます。
「黒字看板」さんが調べて記事にされてます!(こちらをご覧ください)
コメント
コメント一覧 (9)
70年以降ロック・スターの死はごく日常の出来事のように伝えられていく
逝くにはまだ若過ぎるという声と同時に、だからこそ「神格化」したという声も
27歳での死
ブライアン・ジョーンズ(ローリング・ストーンズ)
ジミ・ヘンドリックス(エクスペリエンス)
ジャニス・ジョプリン(ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニー)
ジム・モリソン(ドアーズ)
ピート・ハム(バッドフィンガー)
カート・コバーン(ニルヴァーナ)
リッチー・エドワーズ(マニック・ストリート・プリーチャーズ)
エイミー・ワインハウス(ロック・シンガー)
・・・
「ジャニスの死を聞いても、特に心が動くことはなかった」
「それから、だいぶ経った日の深夜、一人で彼女の遺作『パール』を聴いた」
「スピーカーから流れる歌を聴いていると、ああもうこの人の声は聴けないんだと理解する」
「涙が溢れた」
「その時、私の中のジャニスが死んだ」
/ミュージックマガジン・レコード評・湯川れい子
いつも音時さんが当時のヒットチャートを表示して下さいますが、この時期100%知っててと言うか思い出しては「あ〜なっつかしぃ〜」とひとり叫んでます。
今回は、ゴードンライトフットに反応しちゃいました(笑)
イフユークドゥリードマイマインド。どうです?
お返事ありがとうございます。
音時さんのサイトも大いに参考にさせていただき、ちょっと変わったフォントとかを見つけてみたいですね。
こちらこそよろしくお願いします。
他の場所に書いてしまって失礼しました。
恥ずかしながら(?)あまりジャニス・ジョプリンは馴染みがなく、今回いろいろ聴いてみて、ファンが多いことに納得出来た気がします。
古い曲だからよいのだとは思いません。時代に関係なく、よいものは残る。きっとそうなのでしょう。
実は音時さんの記事を見て、「これいいな」と思ったので書いたのでした。「ミー・アンド・ボビー・マギー」も同じフォントなので追加してます。
(音時)
「PEARL」のフォント、とても印象的でしたね!シングル「ジャニスの祈り」もそのフォントを模して作成されているのも凝っています。アルバム、シングルジャケットの楽しみ方の一つを教えていただきありがとうございます!