この曲"The Pretender"のsongfactsページに、この曲についての解説が端的に書いてありました。

"これは夢をあきらめて、お金を貯めるために、単調でルーティーンな人生を送る男についての歌である。彼は"プリテンダー"(偽って生きている男)なんだ。

はい、端的にいうとそういうことなんでしょう。でもこの曲はイントロからして気持ちを高揚させるサウンド・アレンジがされているように思います。そしてジャクソンの歌声も力強い。なんでなんでしょう?


Writer(s):Jackson Browne

Released in 1976
US BillboardHot100#58
From The Album“The Pretender”

:原詞は太字

I'm going to rent myself a house
In the shade of the freeway
I'm going to pack my lunch in the morning
And go to work each day

家を借りることにしよう
フリーウェイの陰になった場所に
朝にはお弁当を作って
毎日仕事へ出かけるんだ

And when the evening rolls around
I'll go on home and lay my body down
And when the morning light comes streaming in
I'll get up and do it again
Amen
Say it again
Amen

そして日が陰ってきたら
家に帰り 疲れた身体を横たえる
そしてまた 朝の光が差し込んできたら
起きて同じことを繰り返すのさ
アーメン
もう一度言おう
アーメンって

I want to know what became of the changes
We waited for love to bring
Were they only the fitful dreams
Of some greater awakening

何が変わってしまったか知りたいんだ
愛がもたらすものを僕たちは心待ちにしてた
それは気まぐれな夢に過ぎなかったんだろうか
何か大きな目覚めとなるはずだったのに

I've been aware of the time going by
They say in the end it's the wink of an eye
And when the morning light comes streaming in
You'll get up and do it again
Amen

時が移り行くものだとわかっていたよ
みんな言う 結局はあっという間の出来事なんだ
そしてまた朝陽が差し込んでくる時間になると
僕は起き上がり同じことを繰り返す
アーメン

Caught between the longing for love
And the struggle for the legal tender
Where the sirens sing and the church bells ring
And the junk man pounds his fender

愛を待ち焦がれていた自分と
金を稼ぐのにあくせくする自分の狭間の中で
海の精は歌い 教会の鐘が鳴り
くず鉄屋のクルマを叩く音がするこの街で

Where the veterans dream of the fight
Fast asleep at the traffic light
And the children solemnly wait
For the ice cream vendor

退役軍人が信号待ちで居眠りをして
勇敢に戦った夢を見る街
子供たちがアイスクリーム屋を
だまって静かに待つこの街で

Out into the cool of the evening
Strolls the Pretender
He knows that all his hopes and dreams
Begin and end there

そんな涼しげな夕刻の町のなかを
ぶらついてみよう "わかったふり"をして
本当はすべての希望や夢が
そこで始まり終わることを知っているのに

Ah the laughter of the lovers
As they run through the night
Leaving nothing for the others
But to choose off and fight

And tear at the world with all their might
While the ships bearing their dreams
Sail out of sight

ああ 笑い声に包まれて
恋人達は夜通し駆け抜けていくけれど
後には何も残していかないで
喧嘩して別れてしまうんだ

そして世界を許す限りの力で引き裂くのさ
彼らの夢を載せた船が
目の前から漕ぎ去っていく間に

I'm going to find myself a girl
Who can show me what laughter means
And we'll fill in the missing colors
In each other's paint-by-number dreams

恋人を見つけようと思うんだ
笑うことの意味を教えてくれる女性をね
パズル絵のような夢にまだ塗られてない色を
お互いに塗っていくんだ

And then we'll put our dark glasses on
And we'll make love until our strength is gone
And when the morning light comes streaming in
We'll get up and do it again
Get it up again

それから僕らはサングラスをかけるんだ
そして力尽きるまで愛し合うんだよ
そしてまた朝陽が差し込んでくる時間になると
僕は起き上がり同じことを繰り返す

I'm going to be a happy idiot
And struggle for the legal tender
Where the ads take aim and lay their claim
To the heart and the soul of the spender

僕は“幸せなバカ野郎”になるんだ
そしてお金を懸命になって稼ぐとしよう
広告が狙いを定めて
消費者の心と魂に売り込みをかけるこの街で

And believe in whatever may lie
In those things that money can buy
Though true love could have been a contender

Are you there ?

Say a prayer for the Pretender

そこにあるものならなんだって信じるんだ
金で買えるものならなんだってね
真実の愛こそ信じられると思われてたのに

神様 あなたはいらっしゃるのですか?

祈りを捧げよう
“本当の心を偽ってる人たち”に

Who started out so young and strong
Only to surrender 

始めはとても若く力強かったのに
降伏してしまった僕らのために


(Words and Idioms)
fitful=断続的な,とぎれがちな;変わりやすい,気まぐれな
legal tender=法定貨幣,法貨(国家から強制通用力の与えられている貨幣)
siren=〔ギリシア神話〕セイレン:Sicily 島近くの小島に住む,上半身女,下半身鳥の姿をした海の精;美声によって島の近くを通った船人を誘惑し,難破させたといわれる.
fender=車の泥よけ
solemnly【副】真面目に、厳粛に、心から、厳かに
choose off=((米黒人俗)) けんかを売る
tear at= ~を引きちぎろうとする
Ad=広告
lay a claim to=~に対する権利[所有権]を主張する、~を自分のものと主張する
spender=金づかいの(…の)人,浪費家
contender=競合者,挑戦者
数字絵(Paint-By Number


日本語訳 by 音時

◆同じSongfactページに、1997年にMojo magazineが行ったジャクソンへのインタビューが載っていました。訳は僕がしているので細かい点違ってるかもしれないのでご了承ください(^▽^;)

ブラウンはこの曲についてこう言っています。:僕は「不確かなもの」も好きだし「贅沢な報酬」も欲しいと思ってる人間だ。'The Pretender'はその両方をいっぺんに得ようとする人なんだ。高い理想を掲げている人でとりあえず妥協する人は、トリュフォーが言っているように"映画は撮り始めると同時に妥協していくものだ"ってことだと思うよ。真面目なことで言えば、'The Pretender'60年代の考え(idealism)なんだ。「愛」「兄弟愛」「正義」「社会的変革」「啓発」などの考えは僕らの世代にはとても影響がある考えだった。でも最近は僕たちもだいぶ変わってきたんだろう。だから僕は"Say a prayer for The Pretender"と歌うんだ。"こんな考えなんて何の意味もないのさ"と自分に言い聞かせている人たちに向けてね。

「生活」を受け入れることは理想主義者からすると妥協なのかもしれない。でも普通の生活をすることが何の意味もないのかと言われるとそんなことはないんだ。"The Pretender"="本当の自分を隠して生きる人たち"、"降伏してしまった人たち"に祈りを捧げよう。あなたの人生は決して終わったわけではないのだ、と。

◆そして2004年のインタビューではジャクソンはこんな風な話をしています。("ジャクソン・ブラウン カリフォルニアのシンガー・ソングライターたち"シンコー・ミュージック・エンターテインメント)より。

(前略)息子が5歳になって学校に通い始めたので3年ほどツアーをやめたし、ツアーにしても夏だけにするようにした。僕は変わったんだ。現実の世界を暮らさなきゃいけなかった。いつも思ってた。人生について曲を書くなら、普通の人達と同じような生活をする必要があると。人生におこる現実について書くことに興味を持つようになったんだ。

孤立した生活を送っていても、アーティストは人々にとって何が大事かを語れるかもしれない。でも、僕は普通の人々の毎日の生活ぶりに取り組もうと思った。そこでは子ども達は学校に行き、人々は仕事に励む。こういったことが素晴らしいんだ。(中略)誰もしていないことをして、すごく変わった生活をしたいかもね。でも、僕の場合はそういったことへの衝動や欲求が現実的な生活をしたいう欲求に取って代わられた。「プリテンダー」の頃だ。そう言った考えを「プリテンダー」で伝えた。みんなが暮らしているのと同じ生活をしたいという考えだ。生活における平凡な経験が重要だと言う考えを神聖なものとして受け入れたんだ。

自ら積極的に「生活」を受け入れた"The Pretender"は、ジャクソンの来日公演では毎回聴いている彼の代表曲です。

 2017年の来日公演では、会場からのリクエストに応え、各アルバムから万遍なくジャクソンの各年代でのヒット曲が歌われました。だからこそ、"For Everyman"や"The Pretender"、"Running On Empty"など前を見上げて自信を持って歌う清々しいジャクソンの表情が伺えました。
 この1976年に"The Pretender"を作って歌ったからこそ、自分自身で生活を受け入れたからこそ、ジャクソンは息の長いアーティストになってくれたんだなと感じています。




◆Jackson Browne with Crosby, Stills and Nash!
- Madison Square Garden - 2009/10/29&30



(この記事はこちらから引用させていただきました)
ジャクソン・ブラウン カリフォルニアのシンガー・ソングライターたち
シンコー・ミュージック・エンターテインメント)