ジャニス・ジョプリンの全米No1ヒット「Me and Bobby McGee」を和訳しようとしたのですが、色々歌詞を味わっていると、どうもこちらの作者のオリジナルバージョンを先に和訳して、ジャニスがどこを変えて歌ったか、を見ていくのがいいように思いました。
はい、「ミー・アンド・ボビー・マギー」は作者はクリス・クリストファースンとフレッド・フォスターなのです。

◆僕にとってクリスは何と言っても、バーバラ・ストライサンドと共演した映画「スター誕生」です。
クリスはバーバラの相手役で超売れっ子のロックスター"John Norman Howard(ジョン・ノーマン・ハワード)"役で、大観衆を前に"俺を見つめているか(Watch Closely Now)"を歌う姿がカッコ良かった。オトナの色気ってこういうのを言うのかな?なんて思ったり。

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 また、ラジオ番組「全米トップ40」で、湯川さんだか矢口さんだか記憶があいまいなのですが、とにかく1973年のクリスの最高位全米16位ながらもその年の年間チャートで6位に食い込んだ「Why Me」の話が出たのを覚えています...。「Me and Bobby McGee」の作者がクリスだって話をしてくれてたらもっと早く聴いていたかもしれないのに←自分の勉強不足を棚にあげて「At40」のせいにするなよ。

◆クリスがこの曲を書いたときのエピソードは有名な話ですね。彼のウィキペディアにも書いています。

"ある晩クリス・クリストファーソンは、彼が所属するモーメント・レコードの設立者、フレッド・フォスターから電話を受ける。「君の曲にいいタイトルがあるよ。"Me and Bobby McKee" というんだ」..."

「ボビー・マッキー」は実在する人物。でもクリスは聞き間違えて「ボビー・マギー」だと思って曲を書きました。そして彼は…(続きはウィキペディアでどうぞ)


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 (Kristofferson, Fred Foster) 

Released in 1970
From The Album“Kristofferson”

:原詞は太字


Busted flat in Baton Rouge
headin' for the trains
Feelin' nearly faded as my jeans

Bobby thumbed a diesel down
just before it rained
Took us all the way to New Orleans

バトン・ルージュで一文無し
何かしらの列車に乗ろうとしてたんだけど
気分がは滅入ってる
俺の色あせだジーンズみたいに

ボビーが親指を出して
ディーゼルトラックを止めた
雨が降る直前のことさ
俺たちはずっと
乗せてもらうことになったのさ
ニュー・オーリンズまで

I took my harpoon 
out of my dirty red bandana
And was blowin' sad 
while Bobby sang the blues
With them windshield wipers 
slappin' time and
Bobby clappin' hands 
we finally sang up every song
That driver knew

汚れた赤いバンダナから
ハーモニカを取り出し
俺はそいつを悲しく吹いたら 
ボビーがブルーズを歌い出す
ウインドワイパーが時を刻んで
ボビーは手拍子
俺たちは運転手さんの知ってる曲を
ぜんぶ歌っちまったんだ

Freedom's just another word 
for nothin' left to lose
And nothin' ain't worth nothin' but it's free
Feelin' good was easy, Lord, 
when Bobby sang the blues
And buddy, that was good enough for me
Good enough for me and my Bobby McGee.

"自由"なんてどこにでもある言葉
そいつは"失くす物などない"ってことさ
何もないのは価値はない 
でも"自由"こそが大事なんだ
ボビーがブルーズを歌えば 気分もよくなるし
なあ 俺はそれだけでいいんだ
俺とボビー・マギーにゃそれで十分なんだ


From the coalmines of Kentucky 
to the California sun
Bobby shared the secrets of my soul
Standin' right beside me 
through everythin' I done
And every night she kept me from the cold

ケンタッキーの炭鉱から
カリフォニアの太陽へ行く間に
ボビーと俺は魂の秘密を分かち合った
俺が何かするときはいつでも
横にボビーがいてくれて
毎晩 俺を寒さから温めてくれた

Then somewhere near Salinas,
Lord, I let her slip away
She was lookin' for the home I hope she'll find
Well I'd trade all my tomorrows
for a single yesterday
Holdin' Bobby's body close to mine

でもどこかサリナスの近く辺りで
ああ あいつがいなくなるのを止めなかった
あいつは生まれた家を探してるんだ
俺は見つかるといいなと思ってる
ああ できることなら俺の全部の明日を 
たった一日の昨日と取り替えてしまいたい
ボビーの身体を
近くに抱きしめたあの日と引き換えに…

Freedom's just another word 
for nothin' left to lose
And nothin' left was all she left to me

Feelin' good was easy, Lord, 
when Bobby sang the blues
And buddy, that was good enough for me
Good enough for me and Bobby McGee

"自由"は言い換えれば
"失うものは何もない"こと
"何もない" 
それがあいつが俺に残してくれたもの
いい気持ちになれたんだ 
ボビーがブルーズを歌ってくれりゃ
なあ 俺はそれだけでいいんだよ
それでよかったんだ 
俺とボビー・マギーには…

(Words and Idioms)
I'm [flat] busted.=out of money (お金がない)
Baton Rouge=バトン・ルージュ=ルイジアナ州の州都;ニューオーリンズに続き州内第二位の規模を誇る都市。
thumb=〈ヒッチハイカーが〉親指をあげて乗せてもらう
harpoon=銛、皮下注射器 〈米俗〉ハーモニカ 
windshield wiper =(自動車などの)ワイパー
just another=(どこにでもある)ありきたり
coalmine=炭鉱,炭山
Salinas=カリフォルニア州中部のモントレー郡に位置する都市

日本語訳 by 音時


◆この曲は、主人公(男)と旅を続ける相棒である"ボビー・マギー"の物語。2人の旅は自由な旅。いわゆる"ヒッピー"のいう生き方のスタイルが流行していた頃の代表曲ですね。
 ヒッチハイクしたトラックでもハーモニカと歌で楽しくやっちゃいます。でもある日、ボビーは出て行きます。自分が育った家を見てみたいと言って…。
 これは二人の生き方にずれが生じてきたことを表しているように思います。このまま旅を続けたいと考えた主人公に対して、"home"を探したい=家庭を持って落ち着くことを考えたボビー・マギー、と思いました…。

"Freedom's just another word 
for nothin' left to lose.

のフレーズはあまりにも有名ですね。"自由"って言葉は言い換えたら"失うものは何もない"ってこと。
ただその次のフレーズはちょっと解釈が難しかったです。

And nothin' ain't worth nothin' but it's free

僕の解釈は
"何もないのは価値はない でも"自由"こそが大事なんだ"。

これは歌詞のラストで、出て行ったボビー・マギーが残していったものは…「何もない」ってことだった、と歌っています。この箇所の主人公の気持ちはどうだったんだろう?

俺が「モノなんてなくたって自由であればそれが価値」と言っていたから、アイツは何も残していかなかったんだ…。本当に何も残していかなかったことについて、この主人公はちょっと後悔しているように思いました。なので、このフレーズについては、主人公は「自由こそが大事、モノなどなくていい」と訳したかったんです…。

◆はい、ここまで「Me and Bobby McGee」のオリジナルバージョンについて取り上げてきましたが、
次にジャニスの歌った全米1位になった「Me and Bobby McGee」を見ていきます。

ジャニスのバージョンは主人公とボビー・マギーの性別が逆転、そして歌詞やこの有名なフレーズも若干変更して歌っているようですね。

◆映画「スター誕生」(1977)より。ロックスターのジョン・ノーマン・ハワード(クリス・クリストファーソン)が歌う「Watch Closely now」。



◆クリスの1973年のヒット「Why Me」。