◆a-haが、この007映画の主題歌に起用され、曲が作られるのには紆余曲折があったようですね。ウィキペディアの情報でも様々なエピソードがありました。

・当初は「ペット・ショップ・ボーイズ」が唄う"This Must Be the Place I Waited Years to Leave"の予定だったが、歌詞の内容が宗教色が濃いという問題で不採用になった。
・前作の成功から、本作も主題歌はボンド映画ベテランのジョン・バリーと、1980年代中期のポップシーンを代表するノルウェーのバンドa-haのコラボレーションによるものとなった。しかし前回とは異なりバリーと a-ha は意見がことごとく対立し、その結果主題歌 Living Daylights にはジョン・バリーのミックスによる版とa-haのミックスによる版の二つが存在するという異例の事態となった。これを機にバリーは「もはや自分の出る幕ではない」とボンド映画からの引退を表明している。

220px-Cover-daylights-big

・本作ではシリーズで初めて、オープニングとエンディングで異なるテーマ曲が歌われた。エンディングテーマを歌ったのは、イギリスのバンドのプリテンダーズである。
・a-haが担当した主題歌は、イギリスの「ミュージック・ウィーク」誌では、最高位5位と健闘したが、アメリカでは発売されなかった為チャート入りを果たせなかった。


などなど。

◆そうか、なんで「The Living Daylights」が全米シングルチャートに入ってこないのか不思議に思っていたのですが、上記のようなトラブルがあって、全米では発売されなかった、ってことだったんですね!

◆この曲、なかなか和訳にてこずりました...。続きは後半に。


96cbe6989589ec4925c01fd5e7e3c3d2f8dc8b3c_l


Songwriter(s)
Pål Waaktaar、John Barry

Released in 1987
UK Single Chart#5
From The Album“Stay on These Roads”

:原詞は太字

Hey driver, where we going?
I swear my nerves are showing
Set your hopes up way too high
The living's in the way we die

なあ運転手 どこに連れてくつもりだい?
さすがの俺も緊張しちまうよ
希望は持ちすぎてもいいもんだろ
死に様のなかにこそ生き甲斐があるんだ

Comes the morning and the headlights fade away
Hundred thousand people, I'm the one they frame
I've been waiting long for one of us to say
"Save the darkness, let it never fade away"


朝が来たぜ  ヘッドライトも薄らいでいく
大勢の人間たちが 俺だけに罪を着せるのさ
ずっと待っていたんだ 誰かが言い出すのを
"暗闇はそのままにしろ 消し去ってはいけない"と

Oh, the living daylights
Oh, the living daylights

ああ 意識をしっかり持て
ああ 生にしがみつくんだ

All right, hold on tight now
It's down, down to the wire
Set your hopes up way too high
The living's in the way we die


いいか 今は辛抱するときだ
最後の最後まで気を抜くんじゃない
希望は高く持っていけ
生き甲斐は 死に様のなかにこそあるんだ

Comes the morning and the headlights fade away
Hundred thousand changes, everything's the same
I've been waiting long for one of us to say
"Save the darkness, let it never fade away"


ほら朝が来た ヘッドライトも薄らいで
沢山のものが変わるけど 何ひとつ変わらない
誰かが言い出すのをずっと待ってたんだ
"暗闇はそのままに
   絶対に消し去ってはいけない"と

Oh, the living daylights
Oh, the living daylights
Oh, the living daylights

ああ 暗がりのなかに光を求めるんだ
ああ 生きる歓びを感じるがいい
ああ 生きていることを感じよう

[Interlude]

Comes the morning and the headlights fade away
Hundred thousand people, I'm the one they frame


ほら朝が来た ヘッドライトも薄らいでいく
大勢の人間たち 俺だけに課せられた任務

Oh, the living daylights
Oh, the living daylights
Oh, the living daylights


ああ 生死をかけたゲームさ
ああ 気を確かに持つんだ
ああ 暗がりのなかに光を探すんだ

Set your hopes up way too high
The living's in the way we die
Set your hopes up way too high
The living's in the way we die
Set your hopes up way too high
The living's in the way we die...

希望は高く持つんだ
死に様のなかにこそ生き甲斐があるんだから...
リヴィング・デイライツ...


(Words and Idioms)
cf.get one's hopes up=これから起こることに期待を寄せる
frame=〈人を〉罪に陥れる,〈人に〉ぬれぎぬを着せる.
 frame a person 人をはめる.
down to the wire=最後の最後まで、とことんまで必死になって

日本語訳 by 音時

a-haLiving

◆この曲を和訳のポイントは、やはりタイトルになっている"The living daylights"の解釈でしょう。上記の日本語訳はかなりの意訳(^▽^;)になっているかとは思いますが、どんな解釈をしたのかを下記に書きました。

⇒まず"the living daylights"の意味ですが、僕は当初は「日中」とか「陽の光」などの意味かなと思っていたのですが、タイトルになった由来は映画のなかでのジェームズ・ボンドのセリフから来ているようです。
映画の冒頭のアクションシーンにて、ボンドが空からパラシュートで降りてくるのですが、ゆったりと航海しているクルーザーに水着で横たわり『退屈で仕方ないわ…』とこぼしている女性を驚かせます。
 そのボンドのセリフ"I must have scared the living daylights out of her."(彼女を死ぬほど驚かせたに違いない)のなかに「The Living Daylights」が出てきます。

⇒ウィキペディアには原題=The Living Daylights=は"「意識、正気」などの意味"とありました。
他の辞書でも調べてみると、"daylights"という語自体でも、
・【語源】daylightsは人の目を意味する、18世紀初頭には使われていた古いスラングであり、もともと
の意味は「気を失わせる」であったと考えられる。(英辞郎 on the Web)
・「daylight」="日光、昼光、日中、昼、昼間、夜明け、(つながっている 2 つのものの間の)はっきり見えるすき間、あき、意識、正気"(Weblio辞書)
などの意味があるとのこと。
 映画のボンドの"I must have scared the living daylights out of her."のセリフは、「彼女をびっくりさせて"意識(生気)"を追い出せちゃったかな」ってことなんでしょうね。

MG 1986 AG

⇒そうすると"ア~アアア♪リヴィン・ディライツ♪"と歌われる部分は、激しいアクションなどを通じて生死の間をさまよって意識がもうろうとした状態を歌ったのかなと解釈しました。

⇒また一方で"The living's in the way we die"という歌詞も気になります。
ここでいう"The living"は「生き方」とか「生きるさま」。「生き甲斐」なんて意味でしょうか。主人公(ジェームズ・ボンド)は自分自身が死ぬことも決意していて、その「死に様」(=the way we die)のなかに自分の生き様がある、って歌っているんだろうと思いました。また、さらなる意訳になりますが、同じ"Living"が出てくることからも、もしかして"The living(Dailights)'s in the way we die"と"Daylights"が省略していると考えて、"自分の正気は死に様のなかにある"=生きるか死ぬかのスリルを味わわないと、自分は覚醒しない...?なんてニュアンスもあるのではと思いました。

MG1987 JUL


◆最後に、誰かが切り出した言葉"Save the darkness, let it never fade away"。どうして「暗がりを消すな」と言うんだろうか? 正直意味がよくわからなかったのですが、"Darkness"の反意語が"Daylight"かなと思うので、「暗がり」があるからこそ「光」の価値が出てくる"という意味ではないか? これも「生死をかけた闘い(=darkness)」と「生きる価値、生きる歓び(=daylights)」なんて対比した歌詞なんじゃないかな、と受け取りました。

unnamed