【これまで取り上げてきたダン・フォーゲルバーグの曲たちはこちら


先週、職場の同僚(後輩)に久しぶりに会ったところ、海外出張に行っていたとのこと。どこに行っていたのか聞いたら「アリゾナ州のツーソンです」。

「ん?」...確か「ツーソン、アリゾナ」という曲をダン・フォーゲルバーグが歌ってたな、と思い出し、こんな機会でもないと和訳しないかなと思い、あらためて聴いてみました。

◆アルバム「Windows And Walls」は2枚組「イノセント・エイジ」の次作としてリリースされたアルバムでしたので、僕は発売を待ちわびていて、当時リリースと同時にすぐ買いました。
 シングルカットされた「ランゲージ・オブ・ラブ」は日本のラジオでもよくかかっていたと思いますし、アルバムのなかではB面の「Sweet Magnoria」とか「Believe In Me」など、ダンの澄んだ声が聴けるバラード曲もなかなかよかったです。

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 でもそのアルバムのなかではちょっと異質な曲だったのがA面ラストに収録された8分以上(8分36秒)ある大作「ツーソン、アリゾナ」でした。

◆アリゾナ州ツーソンの場所はアメリカ合衆国のなかでもメキシコの国境近くに位置します。この曲がスパニッシュギターやコンガなどを使われているのもその雰囲気が出ていますよね。

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 物語の語り部のように淡々と歌うダン。
あらためて確認すると邦題は「ツーソン、アリゾナ(ある若者の死)」と付けられていましたが、原題は「Tucson,Arizona(Gazette)」。「Gazette」を調べてみると「【名】 新聞 官報、公報」という意味でした。ああ、そうなのか。それは「ある若者(トニーという名前)の死」を報じた新聞報道を紹介する歌、っていうことなのでしょう。

 ダンは感情を押さえて、冷静にこの曲を歌っていますが、後半の声はとても悲し気に感じます。彼がなんでこの曲を取り上げたのか、そんなことを考えて、和訳をしてみました。


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(Dan Fogelberg)

Released in 1984
From The Album“Windows and Walls”

:原詞は太字

Tucson, arizona
Rising in the heat like a mirage
Tony keeps his chevy
Like a virgin locked in
His garage

He brings it out at midnight
And cruises down the
Empty boulevards
And he prowls the
Darkened alleys
That snake between the citys
Thirsty yards

The lonely desert skies reflect
The anger in his eyes
And it is dawn

アリゾナ州ツーソン
蜃気楼のような熱気が立ちのぼる
トニーは自分のシボレーを大切にしてる
まるでガレージに閉じ込めた処女のように

ヤツは真夜中にシボレーを持ち出し
誰もいない大通りをゆっくり乗り回す
そして暗い路地をうろつくんだ
そこはヘビのように曲がりくねって
街の空き地につながってる

孤独な砂漠のような空が
トニーの目のなかにある怒りを映してる
そして夜が明ける...

His father died of drinking
And left five children sinking
With his mom
His older brother bobby
Never made it back from vietnam
With high school well behind him
He lives at home and works this
Shitty job


ヤツの父親はアル中で死んだ
5人の子どもと母親を残し 社会の泥沼に沈んだ
ヤツの兄貴のボビーは
ベトナムに行ったきり帰らなかった
高校に行くなど彼にとっては遠い夢
ヤツはいま家に住み
このつまらない仕事に就いてるのさ

And he thinks his 60 chevy
Is the only true amigo
That hes got
His heart is filled with sadness
And his soul is like some
Ugly vacant lot


そしてヤツは自分の所有する60年型シボレーを
唯一の真実の友だと思ってる
ヤツの心は悲しみであふれ
ヤツの魂はまるで
不細工な空き地のようなもんさ

Mary estelle hanna
Came out from louisiana
For the sun
A deal gone bad in dallas
Left her burned and broke
And on the run

To make the rent and groceries
She takes this job at
$3.15 an hour
Serving shots of whiskey
And tequila
In some smoky red-neck bar
And she dreams some day
She'll make her way to L.A
And become a movie star


メアリ・エステール・ハンナは
太陽を求めてルイジアナからやってきた
ダラスで身を売られ 取リ引きがうまくいかず
深く傷ついて逃げてきたんだ

家賃と食い物を稼ぐため
労働者のたまる すすけたバーで
一杯のウイスキーとテキーラを出す
時給3ドル15セントの仕事に就いたのさ
そしていつかはL.A.に行って
映画スターになるって夢見てる

Tony saw her working
He swallowed hard and asked
Her for a date
Mary laughed and answered
"i would but every night
Im working late"

He said he had some cocaine
That she could have
if she'd just ride along
She said "what the hell I may a well
I haven't had no fun in so damn long"

He picked her up at closing time
They pulled out on the road
And they were gone


トニーは彼女が働いてるのを見て
酒を勢いよくグッと飲んで
デートに誘ったんだ
メアリは笑って答えた
"嬉しいけどアタシは
毎晩遅くまで働いてるのよ"って

ヤツは言った
"俺 少しだけコカインを持ってるんだ
俺と一緒に来てくれるならきみにもあげる"
彼女は言った"地獄を味わうのもいいかもね
長いことアタシも楽しんでなかったし"

トニーは店の閉まる時間にメアリを拾い
二人は通りに飛び出して行ったんだ
そして二人はいなくなった...

Tonys mom got frantic
When she found her son had
Not come home
Marys roommate panicked
And called the sheriff from
A public phone

They asked her lots of questions
She tried her best to tell
Them what she saw

息子が帰ってこないのがわかり
トニーの母親は気も狂わんばかり
メアリのルームメイトはパニックになり
公衆電話で警察を呼んだ

警察は沢山の質問をして
友だちは自分の見たことを
必死に警察に説明した

And late that night
They found poor mary
Lying in some narrow
Dusty draw
And the coroner reported
That she hadnt been
Deceased for very long


そして夜遅くに
干からびた狭い川に
横たわるメアリが発見された
検察官は発表した
その死体は死後
さほど経過していないと

Two weeks on they found it
Buried to the windshield
In the sand
There inside lay tony
With a small revolver in
His hand

The papers simply stated
It must have been the
Drugs that drove him mad
The neighbors speculated
What could make a good boy
Go so bad?

Well, it might have been
The desert heat
It might have been the
Home he never had


2週間後 砂のなかに
フロントガラスまで埋まっている
車が発見された
なかには手に小さな拳銃を握りしめた
トニーが横たわっていた

新聞は短くこう書かれていた
"彼を狂わせたのはドラッグに違いない"と
近所の人たちはこんな風に考えた
あんなにいい少年をこんなに悪くしたのは
何だったのだろう?

そう それは砂漠の熱だったのかもしれない
それは 彼が一度も持ったことのない
家庭への想いだったのかもしれない...と...

(Words and Idioms)
prowl=(獲物を求めて・盗みの機会をねらって)うろつく,徘徊する
alley=路地、小路
yard=(家・建物に隣接した,通例囲まれた)庭
sink=〈物が〉沈む, 沈没する, (雪・泥などの中へ)落ち込む
shitty=〈卑俗〉つまらない、くだらない
vacant lot=空き地、 空閑地、建設用地
red neck=レッドネック、白人労働者
draw=〈米〉小さな谷、浅い渓谷、枯れ川
coroner=検察医、検視官
speculate=〔~について〕じっくり考える、熟考する

日本語訳 by 音時

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◆アルバム"Windows And Walls"のライナーノーツにはこう書かれているようです。(現物は確認できませんでした)

僕の一番気に入っている曲なんだ。音楽評論家はこの曲が長いので却下したけどね。僕はそれでもこの曲をとても誇りに思ってるよ。この曲は計り知れない仕事で、完成するのに数カ月かかったしね。"耳で鑑賞する映画"みたいだよ。足りないのはポップコーンだけだけどね。

 ドラッグ、銃の所持が認められている自由の国のなかで若者がどうなっているのか。ダンは歌のなかで伝えたんですね。


◆こちらの動画は、歌詞に忠実に基づいて作られているので物語がよくわかり、ライナーノーツも解説していただいてます(ありがとうございました)。