【特集】ジョン・レノン追悼

おまえの才能を輝かせろ
前進あるのみだ
燃え尽きるほど眩しかった
ジョン 戻って来てくれ




ボブ・ディランがジョンに贈った曲。2012年のアルバム「テンペスト」のラスト一曲に"Roll On John"は収録されました。

ビートルズ、ジョン・レノンへの想いがこの2012年のアルバムに収録されるなんて...感動です。さらに"Roll On John"の歌詞のなかには、ジョンを偲ぶかのように、ビートルズ時代のジョンの作品の歌詞の一節も出てきます。

"I heard the news today, oh boy"(A Day In The Life)
"Come together right now over me"(Come Together)
"you know how hard that it can be"(The Ballad Of John And Yoko)

◆ビートルズとボブ・ディランの出会い。それは1964年の夏、ビートルズが2回目のアメリカ公演のためにニューヨークに滞在していたとき、ボブ・ディランはジョンの求めに応じて、ホテルに会いにきてくれたといいます。

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 そこでディランは早速マリファナを一緒に吸おうと言いだしたそうですよ。しかもホテル内で熱狂的なファンからビートルズを守っていた警察の目を盗んで…! これ以降、ビートルズの歌詞はディランに倣ったかのように難解になっていきます…。

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(Bob Dylan)

Released in2012
From The Album“Tempest”


:原詞の引用は太字

[Verse 1]
Doctor, doctor tell me the time of day
Another bottle's empty, another penny spent
He turned around and he slowly walked away
They shot him in the back and down he went

ドクター、ドクター 今 何時だい?
またボトルが空いて 金をすっちまった
アイツは背を向けてゆっくり歩いて去った
ヤツラが後ろから撃ってアイツは倒れたんだ

Shine your light
Movin' on
You burned so bright
Roll on, John

輝かせろ おまえの灯りを
前へ進むんだ
燃えるほど輝いてたおまえ
早く来いよ ジョン

[Verse 2]
From the Liverpool docks
to the red-light Hamburg streets
Down in the quarry with the quarrymen
Playing to the big crowds,
Playing to the cheap seats
Another day in the life
on your way to your journey's end


リヴァプール埠頭から
赤い街灯のハンブルグ通りへ
クオリーメンと石切り場へ行ったんだ
金持ち大勢の前での演奏
安い席の客の前での演奏
みんな人生のなかのある日の出来事
おまえの旅が終わる途中でのこと

Shine your light
Movin' on
You burned so bright
Roll on, John


おまえの灯りを輝かせろ
前へ進むがいい
おまえはとても眩しく燃えていた
頑張れよ ジョン

[Verse 3]
Sailin' through the trade winds
bound for the South
Rags on your back just like any other slave
They tied your hands
and they clamped your mouth
Wasn't no way out of that deep dark cave

東に向けて吹く貿易風のなかの航海
おまえが背負ったボロ切れはまるで奴隷のようだ
ヤツらはおまえの手を縛り
"猿ぐつわ"をかませた
その深く暗い洞窟を抜け出す道はなかったんだ

Shine your light
Movin' on
You burned so bright
Roll on, John

おまえの灯りを輝かせろ
前へ進むんだ
おまえはとても眩しく燃えていた
頑張るんだ ジョン

[Verse 4]
I heard the news today, oh boy
They hauled your ship up on the shore
Now the city gone dark,
There is no more joy
They tore the heart right out
and cut him to the core


俺は今日 知らせを聞いたんだ
ヤツらはおまえの船を岸辺に停めたんだ
今じゃ 町の灯りも暗くなり
面白いことは何もない
ヤツらは心を引き裂いて
彼を徹底的に切り裂いたんだ

Shine your light
Movin' on
You burned so bright
Roll on, John


おまえの才能を輝かせろ
前進あるのみだ
燃え尽きるほど眩しかった
ジョン 戻って来てくれ

[Verse 5]
Put on your bags and get 'em packed
Leave right now, you won't be far from wrong
The sooner you go the quicker you'll be back
You've been cooped up on
an island far too long


旅の支度をするんだ 荷物を詰めろ
今すぐ旅立つんだ
そしたらそんなに間違えずに済むから
早めに出れば 早く戻って来られるさ
おまえはこの島にあまりにも長く
閉じ込められていたんだから

Shine your light
Movin' on
You burned so bright
Roll on, John


輝かせろ おまえの光を
前へ進むんだ
おまえはとても眩しく燃えていた
頑張るんだ ジョン

[Verse 6]
Slow down you're moving way too fast
Come together right now over me
Your bones are weary,
you're about to breathe your last
Lord, you know how hard that it can be

ペースを落とせ おまえは急ぎすぎだ
俺と一緒に行こう 今すぐに
おまえの骨は疲れて
息も絶え絶えになってる
主よ それがどんなに辛いことか
おわかりですか?

Shine your light
Movin' on
You burned so bright
Roll on, John


輝かせろ おまえの灯りを
前へ進むがいい
とても眩しく燃えていたおまえ
早く来いよ ジョン

[Verse 7]
Roll on, John,
Roll through the rain and snow
Take the right-hand road
and go where the buffalo roam
They'll trap you in an ambush before you know
Too late now to sail back home


頑張るんだ ジョン
雨や雪に負けるんじゃない
右側を通って
バッファローの彷徨う場所へと進め
ヤツらはおまえが気づく前に
待ち伏せて欺こうとしている
引き返すにはもう遅すぎるんだ
 
Shine your light
Movin' on
You burned so bright
Roll on, John


おまえの才能を輝かせろ
前進あるのみだ
燃え尽きるほど眩しかった
ジョン 戻って来てくれ

[Verse 8]
Tyger, tyger burning bright
I pray the Lord my soul to keep
In the forests of the night
Cover 'em over and let him sleep


虎よ 虎よ 煌々と輝くがいい
私は主に祈る 我が魂を守りたまえ
夜の森に包まれて
ヤツらを覆い隠し 彼を眠らせたまえ

Shine your light
Movin' on
You burned so bright
Roll on, John


おまえの灯りを輝かせて
前へ進むがいい
とても眩しく燃えていたおまえ
ジョン 早く来いよ…

(Words and Idioms)
Roll on=...よ早く来い
quarry=石切り場,採石場.
clamp=〔複数の物をクランプでしっかりと〕締める、固定する
cf.cut to the core of a matter=問題の核心に切り[踏み]込む
haul up=〈船が〉針路を変える;〈船・車などが〉停止する
cooped up=(建物の中や狭い空間に)閉じ込められた
ambush=待ち伏せ

日本語訳 by 音時

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◆"Roll On John"の歌詞は難解でした...。

 "リヴァプール"や"クオリーメン"などの言葉が出てくる2nd Verseは、ジョンの音楽活動を始めた頃を歌っているんでしょう。しかし、順風な雰囲気のなかでも、不吉な描写も多々あります。それこそ、あの12月8日の出来事を想い出させるような箇所も。

 "Roll On"には励ます意味に加え、"早く来いよ"という呼びかけの意味もあるようです。エルトンも"Empty Garden"で"Can you come out to play?"と呼びかけましたが…返事はありませんでした。ここでも"Roll On John"の呼びかけに...答えが返ってはきません…。

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そして最後の"Tyger Tyger…"のverse。ここは、有名なWilliam Blakeの「The Tyger」の詩が引用され、この詩に子どもをベッドで寝かしつけるときの
(Now I lay me down to sleep) I pray the Lord my soul to keep,
というお祈りの一節が絡んできます。


ブレイクの詩で、そもそも「虎」を"Tiger"ではなく"Tyger"とスペリングされています。このこと自体も研究対象となっているようですが、詩全体では夜の森に煌々と輝く"Tyger"の姿の均整のとれた美しさについてとても人の手には作り得ぬものである、神の仕業を歌ったということなのかな。 

ディランが最後に"The Tyger"の歌詞を持ってきて、そして寝かしつけのお祈りの言葉を入れたのは...ジョンの才能と功績に敬意を表するとともにRest In Peaceとお祈りを捧げたんだ…と受け止めました...。


◆この曲も想い出しました。アルバム"ジョンの魂"から"Hold On"