「胸につのる想い(You're In My Heart)でロッド・スチュワートが好きになり、彼の以前の作品をお小遣いが入るたびにさかのぼって買っていきました。「セイリング」が入ったアルバム、ということで「アトランティック・クロッシング」は割と早めに購入した記憶があります。

◆レコードはA面とB面に分かれていますから、どちらかを選んで聴くことができますが、このアルバムはA面が「Fast Side」でロック曲・テンポのいい曲が収録され、B面が「Slow Side」となっていてバラード曲が入っていました。やっぱりB面を中心に聴いたなあ...。

Slow Side

SLoWFast


ちなみにロッドは「今夜決めよう」が収録された次作「ナイト・オン・ザ・タウン」もA面・B面で収録曲を分けてます。こちらは「Side」ではなく「Slow Half」と「Fast Half」とサッカーの前半・後半にちなんで「Half」という言葉を使ってたのがロッドっぽかったです。(でも、Fast Halfの最後にバラード曲"Trade Winds"が入ってて一貫性にかけてました 笑)

◆「アトランティック・クロッシング」に話を戻しますと、「Slow Side」(B面)は捨て曲のない、聴き応えのある曲ばかりで、この「It's not the spotlight」は2曲めに入っていました。でも当時は「いい曲だよな...」と思っていましたが、「それはスポットライトじゃない」の意味がわかりませんでした。

 でも僕も洋楽の知識がそれなりに付いてきた頃、作者がジェリー・ゴーフィンとバリー・ゴールドバーグであると知り、もう名前だけ聞いて、単なる気に入った曲から「名曲」へと昇格しました(^▽^;)。ジェリーとキャロル(キング)は1959年に結婚し、「おしどり夫婦」として60年代に数々の大ヒット作品を生み出しましたが、二人は1968年には離婚。キャロルが「つづれおり」の大ヒットで一躍スターダムに昇ったときは、もう夫婦ではなかったんですね。

そんななかで書かれたこの曲、主人公がジェリー自身であったとすると、「You」はキャロルを指すのかな、と思いました。「つづれおり」で世界的スターになったキャロルにたいして、「きみの瞳に光を見た」という言葉をかけ、「俺の言うことがわかるかい?」と尋ねるこの曲。ジェリーのキャロルに対しての想いを歌ったのかな...と思います。

◆ジェリー自身、そしてバリー・ゴールドバーグも、この曲をカバーしていますが、やっぱり僕は聞き慣れたロッドのヴァージョンが好きなので、この曲で紹介します。


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(Gerry Goffin、Barry Goldberg)

Released in 1975
From The Album“Atlantic Crossing”

:原詞は太字

If I ever feel the light again
shining down on me
I don't have to tell you
what a welcome it will be

I felt the light before
but I let it slip away
But I still keep on believing
that it'll come back some day


もう一度光が輝いて 
俺に降り注ぐことがあっても
おまえに話すことはない
どれだけ待ちわびてたかなんて

前に感じていた光を
俺はみすみす逃してしまったんだ
でもいまだ信じ続けてるんだ
それがいつか戻って来るってことを 

It's not the spotlight
It's not the camera light
It's not the street lights of
some old street of dreams

It ain't the moonlight
not even the sunlight
But I've seen it shining in your eyes
and you know what I mean


それはスポットライトじゃない
そいつはカメラの灯りでもない
夢に見る想い出の街並みの街灯でもないんだ

月の明かりでもない
太陽の光なんかでもない
それは おまえの瞳に輝いていた光なんだ
俺の言うことがわかるかい

Some times I try to tell myself
the light was never real
Just a fantasy that used to be,
the way I used to feel

But you and I know better,
even though it's been so long
If your memory really serves you well,
you'll never tell me no wrong


時どき自分に言い聞かせるのさ
その光は現実じゃなかったって
かつてあったことのただの幻想さ
そんな風に感じていたんだ

おまえと俺は学んだんだ
時間はすごくかかったけれど
おまえがしっかり覚えているのなら
俺に間違ったことは言わないんだ

It's not the spotlight
It's not the camera light 
It's not the street lights of
some old street of dreams

It ain't the moonlight
not even the sunlight
But I've seen it shining in your eyes
and you know what I mean

それはスポットライトじゃない
そいつはカメラの灯りでもない
夢に見る想い出の街並みの街灯でもないんだ

月の明かりでもない
太陽の光なんかでもない
それは おまえの瞳に輝いていた光なんだ
俺の言うことがわかるかい

So if I ever feel the light again
shining down on me
I don't have to tell you
what a welcome it would be

I felt the light before
but I let it slip away
But I still keep on believing
that it'll come back some day


そうあの輝きがもう一度
俺に降り注ぐことがあったらな...
どんなに嬉しいことかなんて
おまえにいう必要はないさ

前に感じていたあの光を
俺は逃してしまったんだ
でも いまだに信じてるのさ
いつか戻ってくるはずだなんて

It's not the spotlight
It's not the camera light
It's not the street lights of
some old street of dreams

It ain't the moonlight
not even the sunlight
But I've seen it shining in your eyes
and you know what I mean


そいつはスポットライトじゃない
カメラのライトでもない
夢に見る古びた街並みを
照らす街灯でもないんだ

それは月の明かりでもない
ましてや太陽の光でもない
でも 光はおまえの瞳に輝いていたんだ
俺いったい何言ってんだろうね

(Words and Idioms)
if memory serves=記憶が正しければ

日本語訳 by 音時

3L-00553b


◆作者ジェリーは2014年6月19日にこの世に別れを告げました。こちらの記事(Tap the POP)に、ジェリーの功績を讃えつつ、キャロルとの関係とともに「It's not the Spotlight」を明確に「失恋ソング」ということで紹介されています。(リンクさせていただきます。ありがとうございます)

ジェリー・ゴーフィンを偲んで~妻キャロル・キングと幾多の名曲を生み出した作詞家が、別れの後に綴った失恋ソング


◆日本では浅川マキさんが「それはスポットライトじゃない」と日本語で歌われているんですね。原詞にかなり忠実で、とても哀愁たっぷりなナンバーです。

 ここでは「カメラのライト」ではなく「ローソクの火じゃない」と歌われています。
ひょっとしてオリジナルは「Candle Light」と歌っているのかな?と思って、ジェリー・ゴーフィンやバリー・ゴールドバーグのソロでの歌唱を聴いてみたりしたのですが、やはり「Candle light」ではなく「Camera light」に聴こえます。浅川マキさんのこの曲の受け止めの解釈をしたのかな?と思いました。




◆ジェリー・ゴーフィン自ら歌ったヴァージョンです。

 


◆こちらはバリー・ゴールドバーグのバージョン。