そしていま
僕らはすべての部屋を手に入れたんだ
そうさ 月までモノにしてしまったんだ
「ソ連」はまもなく開放されると聞いてるよ
"愛の弁護士たち"の行楽地としてね...

ウー シャララ ウー




 毎週欠かさずチェックしていた米国ビルボードチャートに、またジャクソン・ブラウンの名前が見られらのは僕にとってはとても嬉しかったことでした。MTVの影響も大きかったでしょうね。
 スーツを着て髪型もビシッと決めてスーツケースを持って「弁護士」風になったジャクソンを見て、僕は楽しかったのですが、でも...ジャクソンのファンたちからするとこの変化はなかなか受け入れがたいものがあったようです。

 この曲、このアルバム「Laywers in Love」はそこそこのヒットになったにも関わらず、かなりの不評を買い、評判の悪いアルバムの烙印を押されてしまったかな...。

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◆当時の米国社会は81年にレーガン政権になり、経済再建の一方で、国民の貧富はより拡大、外交ではソ連をより敵視する対決姿勢を打ち出しました。東西関係は「新冷戦」という危うい状況のなかで...ジャクソンは米政権に「皮肉」な歌詞で"対抗"したんでしょうね。でもこの「皮肉」はジャクソンが思ったように理解されなかったようです。


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◆この曲のSongfactsページからの情報です。

タイトルにもなった、この"Lawyers in Love"(愛の弁護士、法律家)というフレーズですが、ジャクソンの義理の兄弟が言った一言からいただいたようです。彼は「ロサンゼルスは"Lawyers in Love"にデザインされたような街に見えたよ」とつぶやいたとのことでした。
また、ジャクソンは次のようにも言っています。

:この歌は、「ロシア人がいなければ世界には何もない」という米国の妄想に基づいた政治風刺なんだ。でも思った通りにはいかなかったよ。僕の聴衆(audience)の大多数は、この曲の意図が理解しえなかったんだ(could not get the height of that song)。理解できなかったんだ。おそらく"皮肉にならないかもな"と誤解していた、その結果がもたらしたものだよ。さらに付け加えると、若い世代にとって政治的な問題(political affairs)は僕が考えていた以上にわからないものになってるってことだよ。

はい、ジャクソン自身がそう思っていたとのこと。でも日本はもっと酷かったかもしれません。邦題は「愛の使者」と名付けられましたから、僕も歌詞をしっかり確認するまでは"ジャクソンは愛が大切!"と伝道師にでもなったつもりなのかな?と思っていましたから。

 "Lawyers in love "の名付け親という、ジャクソンの義兄弟はどこの街のどんな人だったのかな。でも彼がL.Aをそう表したのはどうしてなんでしょう?この曲の歌詞でいえば「デザイナーズ・ジーンズを穿く連中」って歌詞がちょっとひっかかります。
 また、この頃、米社会では貧富の差"が大きくなってきた問題があったようです。Lawyer"も法律に関わる専門家という意味ではありますが、一般庶民、さらにいうと手で何かを作り生計を営む農業や工業労働者からすると、何も生み出すことのないなかで多くの報酬を手にできる人たち、でもあります。古典的な産業分類でいうと「第三次産業」で働く人たちが増えてきました。
 強引な解釈にはなりますが、「最先端の流行ファッションを身に着けて、自らは何も生み出すことのない法の世界で、愛だの恋だの騒いで浮ついた連中」というようなニュアンスなのかなと僕は思いました。いま米社会はいろんな問題が起きているのに、自分の目の前のことばかり考えていていいのかい?というのが"Laywers in Love"。弁護士や法律家という特定の職業を皮肉ったのではなく、「きみや僕も"Lawyers in love "なんだよ」とジャクソンは歌ったのだと思います。

◆アルバム全体のサウンド面ではデヴィッド・リンドレーがバンドを離れて、よりロックなサウンドになりましたが、この曲"Laywers in Love"は"シャララ..."のコーラスもあり、70年代のヒット曲の本歌取りを意識して、新しいサウンドを作ろうとしたのかな、とも取れると思います。


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(Jackson Browne)

Released in 1983
US Billboard Hot100#13
From The Album“Lawyers in Love”

:原詞は太字

I can't keep up with what's been going on
I think my heart must just be slowing down
Among the human beings in their designer jeans
Am I the only one who hears the screams
And the strangled cries of lawyers in love


付いていけないよ 世の中でいま起こってることに
僕の気持ちがもうやれやれって感じてるんだ
デザイナーズ・ジーンズを穿く人種に囲まれて
聞こえるのは僕だけなのかい?
押し殺したような声が響いてるよ
"愛の弁護士"たちの叫び声がね

God sends his spaceships to America, the beautiful
They land at six o'clock and there we are, the dutiful
Eating from TV trays
tuned into to Happy Days
Waiting for World War III
While Jesus slaves
to the mating calls of lawyers in love


神は宇宙船団を遣わすのさ この美しい国アメリカに
一行は6時に無事到着 そこには従順な僕たちがいる
ひとりでTVを観ながらメシを食べ
チャンネルを「ハッピー・デイズ」に合わせてね
第三次世界大戦を待ってるかのようさ
イエス様は奴隷のように働かされてるよ
"愛の法律家たち"のラブ・コールにね

ウー シャララ ウー
ウー シャララ ウー
アー...

Last night I watched the news from Washington, the capitol
The Russians escaped
while we weren't watching them, like Russians will
Now we've got all this room, we've even got the moon
And I hear the U.S.S.R. will be open soon
As vacation land for lawyers in love
lawyers in love

昨晩 ワシントンの議事堂からのニュースを見たよ
ロシア人たちが逃げていったって
監視の目を盗んでね いかにも...だよね
そしていま 僕らはすべての部屋を手に入れたんだ
そうさ 月までモノにしてしまったんだ
「ソ連」はまもなく開放されると聞いてるよ
"愛の弁護士たち"の行楽地としてね...

"愛の弁護士たち"っていうのは
僕やきみのことなんだ...

ウー シャララ ウー
ウー シャララ ウー
アー...

(Words and Idioms)
strangled=息の詰まるような、押し殺したような
dutiful=〔上の者に対して〕従順な、義務を果たす、本分を尽くす
TV tray=テレビ用トレー・テーブル
テレビを見るときに食事や飲み物などを置く小さな折り畳み式テーブル。
mating call=求愛鳴き, 恋歌, メーティングコール

日本語訳 by 音時

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◆皮肉たっぷりな歌詞ですね…!(^▽^;) 単語や熟語を調べたなかで、「TV Tray」についてですが「テレビを見るときに食事や飲み物などを置く小さな折り畳み式テーブル」と出ていました。画像でいうと、こんな感じ。

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PVでのジャクソンは「TV Tray」を使わず手でお皿を持って食べていますが...。でも一人、テレビを観ながら食事をするジャクソン。この部分の歌詞は、家族単位での食事ではなく、TVを観ながらの孤食、食事のインスタント化が進んでいることを歌っているのではないかなと思いました。ちなみに"Happy Days"は米国のコメディ・ドラマで、1974年から1984年の10年間、11シーズン255話が放送されました。日本でいうと...「サザエさん」かな(サザエさんはもう放映50年を迎えます。もっとすごい)
 PVでは(神から遣わされた宇宙船団に乗ってきた)銀色の宇宙人?の子ども二人が、不思議なものをみるような表情で窓の外から「地球人」を覗いています...。

◆このアルバムは当時購入してよく聞きました。でも想い出すと、印象に残っているのは、セカンドシングルになった「Tender Is The Night」、核戦争を歌ったかなり重い内容の「Say It Isn't True」 のあるB面のほうかな...。

「ビルボードチャート日記 by 星船」さんで「Laywers in Love」を取り上げています。こちらもどうぞ

◆「Lawyers in Love」が最高位13位を記録したビルボードシングルチャートです。
US Top 40 Singles For The Week Ending September 10, 1983

映画「フラッシュダンス」より「メイニアック」が1位に。ビリーの「あの娘にアタック」が上昇。次週はぶっこ抜きで首位になります。8位ボニー・タイラー「愛の翳り」があがってきていますね。11位エイジア「ドント・クライ」、前作と酷似していた大袈裟なサウンドでしたが、僕は好きでした...!

1 2 MANIAC –•– Michael Sembello (Casablanca)-15 (1 week at #1) (1)
2 1 SWEET DREAMS (Are Made Of This) –•– The Eurythmics (RCA)-18 (1)
3 6 THE SAFETY DANCE –•– Men Without Hats (Backstreet)-12 (3)
4 4 PUTTIN’ ON THE RITZ –•– Taco (RCA)-12 (4)
5 7 TELL HER ABOUT IT –•– Billy Joel (Columbia)-7 (5)

6 3 EVERY BREATH YOU TAKE –•– The Police (A&M)-15 (1)
7 5 SHE WORKS HARD FOR THE MONEY –•– Donna Summer (Mercury)-16 (3)
8 15 TOTAL ECLIPSE OF THE HEART –•– Bonnie Tyler (Columbia)-9 (8)
9 10 HUMAN NATURE –•– Michael Jackson (Epic)-8 (9)
10 9 I’LL TUMBLE 4 YA –•– Culture Club (Virgin)-11 (9)

11 13 DON’T CRY –•– Asia (Geffen)-7 (11)
12 11 (Keep Feeling) FASCINATION –•– The Human League (A&M)-16 (8)
13 14 LAWYERS IN LOVE –•– Jackson Browne (Asylum)-10 (13)


◆「ア~」の雄たけびをあげるジャクソンも今となっては観られませんな...。




◆「Tender is the Night」。F.フィッツジェラルドの小説「夜はやさし」からタイトルをいただいています。




◆嘘だって言ってくれ...「Say it isn't True」。