アルバム"Late For The Sky"。
僕は"Running On Empty"で初めてジャクソン・ブラウンを聴いて好きになり、さかのぼって聴こうとして、次に買ったのがこのアルバムでした。輸入盤で買ったので歌詞がわからなく、意味もよくわからなくてもとにかく聴きまくったアルバムです。
よく気に入って聴いていたのが、オープニングのこのタイトルトラックと、それに続く「悲しみの泉(Fountain Of Sorrow)」、そして「大洪水の前に(これは僕が勝手につけた邦題:(Before The Deluge)」です。
◆ジャクソンのギター本が日本語のものがなかったのでお茶の水のディスクユニオンだったかな。高かったけど輸入盤の楽譜を買って、ギターでコードで弾いてました(耳コピをする能力がないもので…)。学園祭のステージで歌えたらいいなあ、なんてぼんやり思っていましたが、そんな機会はやってくることはありませんでした(^▽^;)。
本当はデヴィッド・リンドレーが横でギターを弾いてくれて、僕がピアノを弾いて"Late For The Sky"を歌うっていう空想も…(^▽^;)。
◆でも…"Late For The Sky"…この意味がやっぱりよくわからず。歌全体では、恋人との心が離れていってしまっていくことにどうしようもなく無力。
You never knew what I loved in you
I don't know what you loved in me
Maybe the picture of somebody
you were hoping I might be
という歌詞は、心をえぐられるような感じがしました。
あんなに好きだったはず、なのに、振り返ってみるとそうじゃなかったんじゃないかと、自分たちを正当化してしまうような気持ちに。それがまた悲しい。僕の場合は、お付き合いしてなかったのに、勝手にそんな風に考えていたけど。←アブナいヤツですね(-_-;)。
で、"Late For The Sky"…と結ばれるこの言葉、いったい何なんだろう。(後半に続きます)
(Jackson Browne)
Released in 1974
From The Album“Late For The Sky”
From The Album“Late For The Sky”
:原詞は太字
The words had all been spoken
And somehow the feeling still wasn't right
And still we continued on through the night
Tracing our steps from the beginning
Until they vanished into the air
Trying to understand
how our lives had led us there
Until they vanished into the air
Trying to understand
how our lives had led us there
言うべきことはすべて言い尽くしたのに
なぜか 気持ちは晴れないんだ
そして僕らはまだ 夜通し一緒にいる…
二人の足跡を最初から辿ろうとしても
そいつは空気のなかに消えてしまう
わかろうと努力してみたんだ
僕らの人生が僕らをどうしてしまったか
そいつは空気のなかに消えてしまう
わかろうと努力してみたんだ
僕らの人生が僕らをどうしてしまったか
Looking hard into your eyes
There was nobody I'd ever known
Such an empty surprise
To feel so alone
きみの瞳をじっと見つめてみても
僕の知ってる人は誰もいない
ひとりなんだ…そう感じるなんて
なんて虚しい驚きなんだろう
Now for me, some words come easy
But I know that they don't mean that much
Compared with the things
that are said when lovers touch
But I know that they don't mean that much
Compared with the things
that are said when lovers touch
You never knew what I loved in you
I don't know what you loved in me
Maybe the picture of somebody
you were hoping I might be
I don't know what you loved in me
Maybe the picture of somebody
you were hoping I might be
今の僕 言葉はすぐに出てくる
でもどんな言葉もたいして意味はない
恋人たちがふれあい交わし合う
言葉と比べてみるならば
でもどんな言葉もたいして意味はない
恋人たちがふれあい交わし合う
言葉と比べてみるならば
僕がきみを愛した理由を
きみは決してわからないだろうし
きみが僕のどこを好きになったのかも
僕にはわからない
たぶんきみが愛してたのは
きみが望んだ僕の理想像だったんだ
きみは決してわからないだろうし
きみが僕のどこを好きになったのかも
僕にはわからない
たぶんきみが愛してたのは
きみが望んだ僕の理想像だったんだ
Awake again I can't pretend
And I know I'm alone and close to the end
Of the feeling we've known
And I know I'm alone and close to the end
Of the feeling we've known
また目が覚める もう偽ることはできないよ
僕はひとりきりになり そして分かち合った
あの想いも終わろうとしてるんだ
How long have I been sleeping
How long have I been drifting
alone through the night
How long have I been drifting
alone through the night
How long have I been dreaming
I could make it right
If I closed my eyes and tried with all my might
To be the one you need
I could make it right
If I closed my eyes and tried with all my might
To be the one you need
僕はどのくらい眠っていたのだろう
どのくらい漂っていたのだろう
夜通し たった一人ぼっちで
どのくらい漂っていたのだろう
夜通し たった一人ぼっちで
どれほど うまくやっていける夢を
見続けていたのだろう
目を閉じて きみが愛するひとになろうと
精一杯頑張っていければと…
見続けていたのだろう
目を閉じて きみが愛するひとになろうと
精一杯頑張っていければと…
Awake again I can't pretend
And I know I'm alone and close to the end
Of the feeling we've known
And I know I'm alone and close to the end
Of the feeling we've known
また目を覚ます もう偽ることはできない
僕はひとりきりなんだ そして
分かち合ったあの想いも終わろうとしてる
僕はひとりきりなんだ そして
分かち合ったあの想いも終わろうとしてる
How long have I been sleeping
How long have I been drifting
alone through the night
How long have I been drifting
alone through the night
How long have I been running
for that morning flight
Through the whispered promises
and the changing light
Of the bed where we both lie
Late for the sky...
for that morning flight
Through the whispered promises
and the changing light
Of the bed where we both lie
Late for the sky...
どれだけ僕は眠っていたのだろう
どれだけ僕はひとり夜のなか
漂っていたんだろう
どれだけ僕はひとり夜のなか
漂っていたんだろう
朝の便に乗ろうとして
どれだけの距離を走ったのだろう
ベッドに二人横たわり
移り変わるベッドの灯りのなかで
囁やかれた約束を想い出しながら…
どれだけの距離を走ったのだろう
ベッドに二人横たわり
移り変わるベッドの灯りのなかで
囁やかれた約束を想い出しながら…
空に遅れるからもう行くよ
日本語訳 by 音時
◆ジャクソンの色んな歌詞のなかでは、"Sky"や"Road"といった語はよく出てきます。いろんな空や道。それが彼の歌詞のなかで何かの比喩だったり、また人生や生き方など大きなイメージとつながったりします。
そんな「空に遅れてしまう」自分。当初は「人生を無駄にしてしまった」という意味なのかなと思いました。でもジャクソンが恋愛をそんなに人生の無駄な時間と決めつけてしまっている、とは考えにくいし、考えたくない。そんな風に歌っているようには聞こえない、とも思いました。
"Late For The Sky"の意味を求めてもうン10年になりますが、あるとき、ジャクソン自身のコメントを見つけることができました。
"Late For The Sky"の意味を求めてもうン10年になりますが、あるとき、ジャクソン自身のコメントを見つけることができました。
(前略)何かのフレーズが頭に残っていて、一種のキャッチフレーズのようになったんだ。だからといって、なんでああいう歌になったのかの説明にはならないんだけどね。でも、そういうケースは多いよ。たまたま心に残ったフレーズや言葉の組み合わせがそんな風に曲になるものなんだ。
"レイト・フォー・ザ・スカイ"…これこそ、まさにその例だよ。これもタイトルから始まった曲なんだ。僕がある人にさよならを告げるときに言った言葉だった。"もう行かなきゃ"ということを告げるのに、馬鹿馬鹿しくなるくらいドラマチックな言い方だったんだ(笑)。つまり「遅れそうだ。飛行機に乗らなきゃならないんだ。もう行くよ」ということ。しかも早朝のフライトで、夕刻遅くではなかった。それなのに「空(飛行機)に遅くなる」と言ったんだ。そのことを覚えていたんだよ。そして曲になった。
僕にとって曲を書くというのは、そういった、たったひとつのフレーズがさらに響き渡ってくるような、比喩表現やクリエイティヴな文脈を見つける作業に過ぎないということもよくある。もしくは口にしたとき、結果的にそういう意味になるか…。
「INSPIRATION」アミューズブックス P.184 カリフォルニア州サンタバーバラ 1996年のインタビューより。
そうなんです。"Late For The Sky"とは、恋人に別れを告げるのに彼が言ったさよならの言葉。"飛行機に送れちゃうから、僕はもう行くよ"という意味だったんですね。言われてみるとその前の歌詞に"morning flight"が出てきますね。
大勢の人々を乗せる飛行機が自分が定時に来なかったからといって待っていてくれるはずはない。でも、その人を大切に思い、その人と離れたくないのであれば、その飛行機を見送るという決断もできたのかもしれない。でも、彼はずっと長い間眠っていて、夜の間をさまよっていて…そして再び目が覚めた。もう偽るのはやめよう。僕は空に遅れてしまうわけにはいけない。さよなら…。
愛し合った人との別れ、ぐずぐず引き延ばしていた自分にも別れを告げる言葉が"Late for the sky"だったんです。とても余韻のあるフレーズで、ジャクソンがこのフレーズをアルバムタイトルにした気持ちもわかります。
そして... このタイトルにあのアルバムジャケット、これがまたよかったですね。青い空の手前にお屋敷、そして旧型のシボレーが停まっている風景。青い空は明確に時刻は「昼」なんだけど、お屋敷にも灯りが、その前に立っている街灯にも点灯しているので、ここは「夜」だったりします。
こんなアルバムジャケットだったので色んなストーリーが空想できました。"Late For The Sky"…ジャクソン自身の解説を踏まえて僕は和訳しましたが、いろんな解釈の余地、自由を残しておきたいなあと思います。
◆ピアノを弾きながら歌うジャクソン。
◆ 10/15/1976 - Capitol Theatre のもの。この映像が一番古いのかな。
◆Superflyのカバーの"Late For The Sky"です。
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「こっちで何とかする。ありがとよトラヴィス」
雑貨店に押し入った強盗を撃った後、画面は唐突に変わる。
殺風景な部屋で拳銃を片手にテレビを見つめるトラヴィス。
殺伐としたシーンとは、何とも場違いに「アメリカン・バンドスタンド」の中で「レイト・フォー・ザ・スカイ」が流れる。
「タクシードライバー」は1976年公開の作品。(監督マーチン・スコセッシ 脚本ポール・シュローダー 主演ロバート・デ・ニーロ)
違和感が残るこの1シーンには、制作者の思いが込められている。
「俺たちに明日はない」(1967アーサー・ペン)
「イージー・ライダー」(1969デニス・ホッパー)
「明日に向かって撃て!」(1969ジョージ・ロイ・ヒル)
初期のアメリカン・ニューシネマは、最後に「主人公の死」を描きハリウッド的ハッピー・エンドに別れを告げた。
1975年米軍はベトナムから撤退し、ひとつの時代が終わろうとしていた。
ラストシーン…トラヴィスは死なず、ドライバー稼業を続ける。
スコセッシとシュローダーは、何故こんな中途半端な終わりを用意したのか。
04年ジャクソンのロック殿堂入り式典で、スプリングスティーンは「ベトナムが終わった70年代のアメリカ、60年代の名残りと当時の傷心、失望、消えかけた可能性をすべて表現している」と、この曲をたたえた。
そう、何ともやるせない宙ぶらりんな気持ち、だけど懐かしい…笑
おそらく彼のファンは、ほとんどがそうじゃないかな。
タイトル曲から最終曲まで、人生の深い比喩を感じる。
彼自身の、そして当時のウエストコースト・ミュージックにとっても傑作です。
「空に遅れて…」って、瑞々しくて、何故か懐かしい。
聴いた人それぞれが各様にイメージできる言葉です。
でもアルバム中最も好きな曲は「For A Dancer」
多くのミュージシャンがカバーしているけど、それだけのことはある名曲と思います。
片岡義男と安田南がナビゲイターを務めた「きまぐれ飛行船」(FM東京)で、このアルバムを取り上げていたことを懐かしく思い出します。
ジャケットのモチーフとなったマグリットの「光の帝国」(ベルギー王立美術館、グッゲンハイム美術館蔵)
も強い印象を与えてくれます。
当時からマグリットの作品をジャケットに使う例は多かった。
ラスカルズ、ジェフ・ベック・グループ、スティックス、アラン・ハル…
ロック、ポップスと相性がいいんでしょうか。(笑)
"The Late Show"はこの曲ほど情報がない(しっかり調べていませんが)ので、どうでしょうかね(^▽^;)。
70年代にはオリジナルの輸入盤にも歌詞はなく、日本版の歌詞はtranscribeであり、morning flightがmorning frightであったような気がします。(もう、半世紀以上も前のことなので、違っているかも知れません。)
音時さんも触れていますが、
You never knew what I loved in you
I don't know what you loved in me
Maybe the picture of somebody
you were hoping I might be
というverseは心に突き刺さりますね。いつか、”The late show”の対訳もお願いします。
※Jackson BrowneやEaglesの歌詞を読んでいると上手に韻を踏んでいるのに気づきますね。
※歌詞のリスニングの書き起こしで酷かったのが、EaglesのDesperadoのアルバムでした。1曲目の”Doolin-Dalton”の最初のフレーズからして、”They were duelin’, Doolin-Dalton”であるのが”They were Doolin, Doolin-Dalton”となっており、その他も多くの箇所でズタズタであったかと思います。
いや~実に素晴らしいサイトですね。思春期の頃ずっと疑問だった事を解決してくれるサイトです。
自分は洋楽のとっかかりがモンキーズで次がジャクソンブラウンでしたから何と難解な世界なんだ、と思ってました。
Late for the sky、この曲も??でした。当時のLPにも対訳は付いていましたがそれを読んでも全くしっくりこない。一体何を言っているのだろう?と疑問でした。流石に恋人と別れる事を言っているのは分かりますけどそうか、「飛行機に遅れる」だったんですね。
BS-TBSのSong to soulのミニ特集の中で「Late for the sky」が取り上げられました。あの印象的で絵画的なアルバムアートはルネ・マグリットの「光の帝国」がモチーフだとか。確かによく似ています。アルバムアートでは随一でしょう。このアルバムジャケットを部屋に飾ったりしたものでした。
83年のロッキンオンにジャクソンのインタビューが載っていたんですが、友人がこのアルバムを聴いて首をかしげている。「いや~、確かにそうなんだけどさ、ほら、覚えているだろ」と当時ドンチャン乱痴気騒ぎをしていたことを全然取り上げていないのはどうなん、って指摘を受けたそうで。まあヒッピー華盛りの頃でしたしお盛んでしたでしょうしね。
僕のなかでは、ジャクソン、U2、ポール・サイモンなど、和訳を心してかからないといけないと思ってるアーティストがいます。基本的に毎日、和訳アップを続けておりますが、これらアーティストの作品は時間をかけ、じっくりと取り組んでいってます。と書きましたが、ちょっと他のアーティストに失礼ですよね。(^_^;)。
和訳の神様の降臨を待ちながら、日々是勉強です。
You never knew what I loved in you~のくだりにぼくも歌詞を読んでまさに心をえぐられるような思いがしてました。愛してるんだけど食い違ってしまうみたいな繊細な思いを歌う彼の詩は好きです。
Late for the skyの意味にみんな頭を悩ませてますね。音詩さんの解釈、訳はすごく納得できました。
彼は歌詞ですごく凝った比喩をよくやります。”Call it a loan"とか"opening farewell"とか。ちょっと凝りすぎなんて思う時もあります。