冒頭のビデオ、"Sunglasses At Night"でずっとサングラスをかけていたコリーがサングラスを置くところから始まります…。でも、最後に涙を流すコリー…。

◆この曲"It Ain't Enough"は、邦題「とどかぬ想い」と付けられました。(しかし、この邦題、ダスティ・スプリングフィールドの有名曲もあるし、日本ではドラマ主題歌になったビリー・ヒューズの曲もありましたよね。みんな別曲です)
 どんなに頑張っても"きみは満足できないんだね…"。はい、とても虚しいです…。曲も途中のサックスが哀愁を帯びて、そんな想いが溢れてくるようです。


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◆でも…実はこの曲、元はラブ・ソングじゃないようですよ(゚Д゚)ノエッ?
この曲を書いた8月終わりの頃、コリーは19歳。カナダから出てきてニューヨークシティのいくつかのレコードレーベルに自分の楽曲を聴かせてみても、レーベルが彼に興味を示すことがありませんでした。どうしてなんだ?彼らはどんな音楽を欲しているんだ?と憤慨しました。

それが…

It Ain't Enough, It Ain't Enough
Nothing's enough for you!

であるとのこと!

その感情を当時付き合っていたエリカさんへの想いというラブ・ソングの体に仕上げた、というのがこの曲の真相のようですね。(詳しくはこちらのサイトに載っています:英語)


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Writer/s: COREY HART
Publisher: Sony/ATV Music Publishing LLC, Warner/Chappell Music, Inc., Universal Music

Released in 1983
US Billboard Hot100#17
From The Album“First Offence”

:原詞は太字

I could capture all the love
the great romantics had
Sing you a song that ain't half bad
But that ain't enough
That ain't enough for you


どんな愛だってお手のもの
素敵なロマンスも持ってるよ
素敵な曲をきみに歌ってあげられる
でも それじゃだめなんだ
きみの心を満たせない

And I could run across the world
to bring you the sun
Look in your eyes one on one
But that ain't enough
That ain't enough for you


世界中を回ることだってできる
きみに太陽を差し出すためにね
目と目できみと見つめ合いながら
でもそれじゃ充分じゃない
きみは満足できないんだ

And I could carry the weight of your sad times dear
Give you the strength to face your fears
I know that I'll never be afraid to say
That I'm here by your side and I'm gonna stay

きみが悲しいときに 重荷を背負うこともできる
涙に向かい合う力を与えることもできるさ
恐れずにきみに言うよ
"そばにいる どこにも行きやしない"って

I could preach about a love
that one shouldn't forsake
Work on my style of give and take

But that ain't enough
That ain't enough for you
Said it ain't enough
It ain't enough for you

誰も見捨てることのない愛を
きみに説くことだってするよ
対等に向かい合うのが僕のやり方さ

でもそれじゃだめなんだ
きみにとって満足できないものなんだ
それじゃだめだなんだ
きみには物足りないんだね

And I could carry the weight of your sad times dear
Give you the strength to face your fears
I know that I'll never be afraid to say
That I'm here by your side and I'm gonna stay

Just a little closer to you, yeah


きみが悲しいときに 重荷を背負うこともできる
涙に向かい合う力を与えることもできるよ
胸を張って言うよ
"きみのそばにいる どこにも行きやしない"って

もう少しきみのそばに行くよ yeah

I could pour you a drink like I pour out my heart
Smile when I'm sad and act dumb when I'm smart

But that ain't enough
That ain't enough for you
I said it ain't enough
Nothing's enough for you


飲み物はいかがかい この心を捧げるように
悲しくても 笑顔を見せるよ
真面目なときだって とぼけているさ

でもそれじゃだめなんだね
きみは満足できないんだ
それじゃあ足りないんだね
きみにとって何ひとつ...

(Words and Idioms)
not half bad そんなに[まんざら]悪くない、まあまあ良い、結構いける
forsake =見捨てる,見放す
act dumb=play dumb=馬鹿を演じる=とぼける、知らないふりをする

日本語訳 by 音時

starhitsholiday1984
わ、若いコリー…(^▽^;) 
こちらのサイトにコリーの沢山の記事や切り抜きがありました。


◆訳していて印象的に残ったのが最後の部分、

I could pour you a drink like I pour out my heart
Smile when I'm sad and act dumb when I'm smart

というところ、"act dumb when I'm smart"なんてどういう感情なんでしょうね。ちょっと難しく感じました。先のインタビューのなかでコリーはこの部分についてこんな風にコメントしています。

ここの箇所は僕がこんな風なものは書くまいと思っていた「愚かなラブソング」(Silly love Songs)なんだ。僕はいつも、説教的だったり学者ぶったような歌詞は書きたくないし、意味のある、知的な歌詞を書きたいと思っていたんだ。もちろんそれがうまくいったかどうかは主観的なものだけどね。
 その時僕はニック・ロウのアルバムを聴いていて、「You Make Me」という気に入った曲を見つけたんだ。この曲はとってもスロウで、シンプルなバラードだった。"It Ain't Enough"に色付けをするのに僕にヒントをくれたのはラブ・ソングだったんだ。

はい、ニック・ロウの「You Make Me」は彼のスマッシュヒット"恋するふたり(Cruel To Be Kind)"が収録されたニックのアルバム「Labour Of Lust」(いかした愛の放浪者)に収録された曲で、2分弱の短い、とても静かなシンプルなバラードです。



 最終的なサウンドの仕上げはまったく別曲になっていますが、"It Ain't Enough"の仕上げにニックの「You Make Me」が影響を与えたというのはとても興味深いですね…!


◆こちらのPVはドラマ仕立てになっていますね。




◆こちらはファンの方撮影のライブでの「It Ain't Enough」。キーボードを弾きながらゆっくりと歌うコリー。こちらの方がニック・ロウの「You Make Me」に似ていますよね。コリーはシングルのようなアレンジではなく、当初はこんな感じの曲にしたかったんじゃないでしょうかね。