プリンス追悼「Purple Rain」特集の締めくくりは、やはりタイトルにもなったこの名曲「パープル・レイン」。

 映画「パープル・レイン」の物語はもちろん創作なのですが、アーチストのプリンスの自伝的な内容になっていますね。セクシャルな行動や格好が目立って誤解されていたプリンスも、彼自身は様々な経験のなかでの心の葛藤がある人間であること、家族との確執や父親の自殺、アポロニアとの恋と別れ、バンドメンバー達との友情と裏切り、そして最後に"パープル・レイン"という名曲と、アーチスト"プリンス"がこうして誕生したんだ、ということの物語。
 映画の終盤でステージで歌われる「パープル・レイン」は映画を最初から観てくると、なおのことジーンと心にくるものがあります。

◆映画のなかでは、「パープル・レイン」は物語の都合上、バックバンドの女性であるリサとウェンディが書いたという設定になっています。リサとウェンディはキッド(プリンス)に聴いてほしくて「パープル・レイン」のテープを渡されますが、キッドはそれを無視します。ウェンディはキッドを批判します。"私たちが曲を書いてあなたに渡しても、あなたは使うよ、と言いながらちっとも使おうとしない。あなたは常人とは違った偏執狂よ…"。

 最後にステージに立つキッドは「ウェンディとリサが書いた曲だよ」「父親に捧げたい」と言って"パープル・レイン"を歌います。1番、2番、3番に出てくる"You"は違う相手なんですね。

・1番(1st verse)の"You"は自殺してしまった父親
・2番(2nd verse)の"You"は悲しい別れをした恋人アポロニア
・3番(3rd verse)の"You"は複数=バンドメンバー達に向けて

そのように歌っていると僕は解釈しています。

Song Title:「Purple Rain」
Artist:Prince


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Songwriters PRINCE ROGERS NELSON
Lyrics c Warner/Chappell Music, Inc., Universal Music Publishing Group

Released in 1984
US Billboard Hot100#2
From The Album"Purple Rain"

:原詞は太字

I never meant to cause you any sorrow
I never meant to cause you any pain
I only wanted to one time to see you laughing
I only wanted to see you
Laughing in the purple rain


あなたを悲しませるつもりはなかった
あなたの心を痛ませるつもりもなかった
あなたが笑うのを一度だけでも見たかったんだ
僕はただ見たかっただけなんだ
"紫の雨"のなか 笑ってるあなたの顔を

Purple rain, purple rain
Purple rain, purple rain
Purple rain, purple rain
I only wanted to see you
Bathing in the purple rain


パープル・レイン "紫の雨"が降る
この世の終わりの紫の空から…
虚しさと淋しさが混ざり合った心のなかに…
僕はただ見たかったんだ
"紫の雨"のなか 濡れるあなたの姿を

I never wanted to be your weekend lover
I only wanted to be some kind of friend
Baby, I could never steal you from another
It's such a shame our friendship had to end


週末だけの恋人なんて絶対なりたくなかった
ただの友だちでいられればそれでよかった
ベイビー 他の男から
きみを奪ってしまうなんてとてもできない
友だちでもいられなくなってしまうなんて
そんなの悲しすぎるよ

Purple rain, purple rain
Purple rain, purple rain
Purple rain, purple rain
I only wanted to see you
Underneath the purple rain


パープル・レイン "紫の雨"が降る
この世の終わりの紫の空から…
虚しさと悲しみが混ざり合った心のなかに…
僕はただ会いたかったんだ
"紫の雨"の下できみに会いたかったんだ

Honey, I know, I know
I know times are changing
It's time we all reach out
For something new,
that means you too
You say you want a leader
But you can't seem to make up your mind
I think you better close it
And let me guide you to the purple rain


そう わかっているんだ
時代は変りつつあるってことくらい
僕ら何か新しいものに
手を伸ばすときなんだよ
それはきみたちみんなに言いたいんだ
リーダーが欲しいって言うよね
きみたちは自分で心を決められないようだ
そんなのもう終わりにした方がいい
僕がきみたちを連れて行くよ
「紫の雨」の中へ…

Purple rain, purple rain
Purple rain, purple rain
If you know what I'm singing about up here
C'mon, raise your hand

パープル・レイン "紫の雨"が降る
この世の終わりの紫の空から…
虚しさと悲しみが混ざり合った心のなかに…
僕がここで何を歌ってるのかわかったら
さあ 手を挙げてごらんよ

Purple rain, purple rain
I only want to see you
Only want to see you
In the purple rain


パープル・レイン パープル・レイン
きみに会いたかっただけなんだ
きみの姿を見たかっただけなんだ
この「紫の雨」のなかで…

日本語訳 by 音時

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◆この曲のSongdactsページにこんなことが書いてありました。

 プリンスがこのバラード曲"Purple Rain"を書いたのには、一人のロック・アーチストの存在が影響したようです。そのアーチストはボブ・シーガー(Bob Seger)。
 プリンスはアルバム"1999"をリリースしたあと、ツアーで全国を回ったときにいくつかの都市で同じようにツアーをしているボブ・シーガーに会いました。そこでボブの持ち歌である"Night Moves"や“Mainstreet”などのスローな曲がとても人気があったことにプリンスはビックリしました。
 スローバラードは、その歌詞の物語に、聴衆が自分の経験や体験を重ねやすいのかなと思って、そういうスローな曲を書こうと思ったのが"パープル・レイン"のきっかけとなりました。

◆また"パープル・レイン"のエピソードは尽きません。

当時交際していたフリートウッド・マックのスティーヴィー・ニックスに歌詞を書いてくれと頼んでいたのですが、最後には「やっぱりあなたが書いた方がいい」と言われて書いた、とか、曲を書いていたときにちょうどジャーニーのバラード曲"「時への誓い(Faithfully)」がヒットしていたので、作者のジョナサン・ケインに電話して、作成中の"パープル・レイン"のデモを聴かせて「似てると思うかもしれないけど問題ないかな?」と事前に確認した、とか、イロイロ(^▽^;)。
 こちら MNE Japanさんの「プリンスの『パープル・レイン』、あなたが知らないかもしれない20のトリビア」にも色々載っているのでご覧ください。

◆"Purple Rain"=紫の雨の意味は、明らかになっていません。ただウィキペディアによると、プリンスは次のように解説しているようです。

Prince explained the meaning of "Purple Rain" as follows: "When there's blood in the sky – red and blue = purple... purple rain pertains to the end of the world and being with the one you love and letting your faith/god guide you through the purple rain."

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このことを踏まえて、僕はこのように解釈しました。

・プリンスが「紫」にこだわるのは彼の「世紀末」の色は紫であるとするもの…"Let's Go Crazy"にも"紫のバナナ"が出てきましたね。
・また様々な悲しくて辛い経験をしてきたキッド(プリンス)の心のなかの「紫」=虚しさや悲しさがぐちゃぐちゃになったようなもの、だと思います。もちろん「紫の雨」が実際に降ったわけではなく世界が終わってしまうような「紫の空」から降った雨であり、彼の心のなかの色…ということですね。
 そして歌詞の構成は3番まであって、それぞれが違う相手に歌っているという解釈。

1番は、嫌な「父親」だったけど子どもとして父さんの優しい笑顔を見たかったんだ、という想い。
2番はアポロニアも僕と同じく「紫の雨」を感じてるんだろうか?「紫の雨」のなか、もう一度きみに会いたい、という想い。
3番ですが、キッドは自分の曲に固執することなく、ウェンディとリサの書いた曲を歌にしました。バンドメンバーの「自立」も一歩進み、誰がリーダーかなんてことじゃなく、音楽をやっていきたい、という想いを歌っているのではないかと思います。
「紫の雨」が降っていても、そのなかで歩いていく決意を。

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 PRINCE ROGERS NELSON R.I.P…
これからもあなたの曲を聴かせてください…。

◆"Purple Rain"が最高位2位を記録した週の全米チャートです。
US Top 40 Singles For The Week Ending November 17, 1984

1 4 WAKE ME UP BEFORE YOU GO-GO –•– Wham! (Columbia)-11 (1 Week at #1) (1)
2 3 PURPLE RAIN –•– Prince & The Revolution (Warner Brothers)-7 (2)
3 1 CARIBBEAN QUEEN (No More Love On The Run) –•– Billy Ocean (Jive)-15 (1)
4 5 I FEEL FOR YOU –•– Chaka Khan (Warner Brothers)-11 (4)
5 2 I JUST CALLED TO SAY I LOVE YOU –•– Stevie Wonder (Motown)-14 (1)

6 6 OUT OF TOUCH –•– Daryl Hall & John Oates (RCA)-8 (6)
7 7 BETTER BE GOOD TO ME –•– Tina Turner (Capitol)-10 (7)
8 11 STRUT –•– Sheena Easton (EMI-America)-13 (8)
9 12 ALL THROUGH THE NIGHT –•– Cyndi Lauper (Portrait)-7 (9)
10 13 PENNY LOVER –•– Lionel Richie (Motown)-7 (10)

3位から2位に1歩階段を上ったプリンスをワム!が追い越して1位に。"Purple Rain"は2週2位を記録したのち、ダウン。この週6位のホール&オーツが1位になります。チャートはプリンス作のチャカ・カーン"I Feel For You"もランクインされてますね。8位シーナ・イーストンの"Strut"は日本の焼酎のコマーシャルでも流れていました。


◆アルバムでは"Purple Rain"がラストですが、映画では"Purple Rain"を歌ったあと、キッドは2曲歌います。それが"I Would Die 4 U"(と"Baby I'm A Star").
 プリンスのライヴから。シーラ・Eのパーカッションも決まってます。
 



◆Purple Rain (1984) - Official Trailer