映画「カセットテープ・ダイアリーズ」上映記念、ブルース・スプリングスティーン特集。
ふとしたことで知り合った同じアジア系の友人ループスから「聴いてみろよ」と、カセットを借りていたのを想い出しかけてみる…ジャベドが初めて聴いたブルースの曲はこの曲でした…。

(この記事は既掲載のものの再掲載です)
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シングルで全米No1に、もう少しで手が届く!ところまでいきました。
全米2位を獲得した"ダンシング・イン・ザ・ダーク"はブルースのこれまでの最大のヒットシングルになります。

◆僕の持っている「グローリー・デイズ 80年代のブルース・スプリングスティーン」(CBSソニー出版)P.184 ~186にこの曲のできた経緯が載っています。

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(引用ここから)
ブルースの「Born To Run」からのプロデューサー=ジョン・ランドウ(Jon Landau)とブルースの間にちょっとした言い争いがありました。

ジョンはブルースのニュー・アルバムに際して「最初のシングルヒット」にこだわったそうです。それもただの確実性のあるヒット、というだけではなく「何をやろうとしているのかがそのまま出るようなシングル」「たとえ謎めいた曲であっても"ああ、これがブルースだよ。これをやろうとしていたのか、今やっとわかった"と言えるような歌」ということをブルースに求めました。
ブルースは勝手なことを言うジョンに怒りが爆発しました。
「いいか、俺はもう70曲も書いてきたんだ。また別なのが欲しいんだったら、自分で書けよ!」

一方、ブルースはこのことが心のなかに尾を引いていて、明け方近くの時間に、ホテルのベッドの端に腰掛けてアコースティックギターをもって簡単なリフを爪弾きはじめました。出だしの一節がすでに考えてあったのです。

「朝起きると…」と歌い、そこでやめた。
いや、俺は朝に起きないものだ、じゃあ、俺なら何をしているだろう?
「夜起きると・・・」さて、どういう気分だろう?
「…言うことなんか何もない / 朝、家に帰っても気分は同じ / まったく、くたくただ。くたくたで自分自身に飽き飽きしてるんだ」

ブルースは言います。
まるでハートが直接口から出てしゃべっているようだったよ。脳みそもいちいち通らないでね。サビが俺からただほとばしり出てきたんだ…。
(引用ここまで)

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◆爆発したい!火を点けたい!でも燃え上るような何かがあるんだろうか?火花だってないのに・・・火が点くわけないじゃないか。
そんな本気になれないような何か。プロデューサーに「自分らしいメッセージを伝えるヒット曲を書いてくれ」なんて言われて歌を作る自分。そんな自分を「借り物の銃」、そして「暗闇の中をただ踊っているだけ」と自然に表現できた…というのがこの曲「ダンシング・イン・ザ・ダーク」なんですね。

Song Title:「Dancing In The Dark」
Artist:Bruce Springsteen

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Writer(s) Bruce Springsteen

Released in 1984
US Billboard Hot100#2
From The Album"Born In The U.S.A"

:(引用原詞は太字)

I get up in the evening
and I ain't got nothing to say
I come home in the morning
I go to bed feeling the same way

I ain't nothing but tired
Man I'm just tired and bored with myself
Hey there baby,
I could use just a little help


夜に目を覚ましても
何も言うことがないんだ
朝に家に帰ったところで
同じような思いをしてベッドに向かうのさ

俺はただ疲れちまってるんだよ
なあ 俺は疲れて自分自身にもうんざりなんだ
なあ おい ベイビー
ちょっと助けてくれないか

You can't start a fire
You can't start a fire without a spark
This gun's for hire
even if we're just dancing in the dark


火も点けられないぜ
火を点けるなんてできないんだ 
火花がなけりゃ
俺はまるで借り物の銃のよう
たとえ暗闇のなかを踊ってるだけだとしても

Message keeps getting clearer
radio's on and I'm moving 'round the place
I check my look in the mirror
I wanna change my clothes, my hair, my face

Man I ain't getting nowhere
I'm just living in a dump like this
There's something happening somewhere
baby I just know that there is


メッセージがだんだんはっきりしてくる
ラジオを点けて俺はそこらじゅう動き回る
鏡を見て自分がどう見えるか確かめる
俺は服も変えたい!髪型も!顔つきも!

変えたくてならないんだよ
なあ 俺はどこにも行くところがない
こんなゴミ溜めのような場所に住んでるんだ
どこかで何かが起こっている
ベイビー それだけはわかってるんだけど

You can't start a fire
You can't start a fire without a spark
This gun's for hire
even if we're just dancing in the dark


火は起こせないんだ
火花がなけりゃ火を起こすのはできないよ
俺はまるで借り物の銃さ
たとえ暗闇のなかを踊ってるだけだとしても

You sit around getting older
there's a joke here somewhere
and it's on me
I'll shake this world off my shoulders
come on baby this laugh's on me


そこらへんに座ってる間に年を取っていく
ここにだって どこかで耳にするジョークは
俺のことを言ってるようになるのさ
俺は世界を肩からふるい落としてやるよ
それで俺を笑ってくれよ

Stay on the streets of this town
and they'll be carving you up alright
They say you gotta stay hungry
hey baby I'm just about starving tonight

I'm dying for some action
I'm sick of sitting 'round here
trying to write this book
I need a love reaction
come on now baby gimme just one look


この町の通りに留まっていたら
からだを切り刻まれるだけなんだ
“ハングリーでいろ”と言われるけれど
なあベイビー 俺は今夜飢え死にしそうなんだ

なにか行動したくてたまらない
この本を書こうとして
ここに座ってるのはもううんざりなんだ
愛のリアクションが必要なんだ
さあ ベイビー
ちょっとだけ俺を見てくれよ

You can't start a fire sitting
'round crying over a broken heart
This gun's for hire
Even if we're just dancing in the dark

You can't start a fire worrying
about your little world falling apart
This gun's for hire
Even if we're just dancing in the dark


火は点かないんだ
壊れた心を嘆いて座ってたところでね
俺は借り物の銃
たとえ俺たち 暗闇で踊っていたとしても

火を点けることなんてできないよ
ちっちゃな世界が崩れ落ちるのを
心配したところでね
俺は借り物の銃なんだ
たとえ俺たち 暗闇で踊るしかないとしても

Even if we're just dancing in the dark
Even if we're just dancing in the dark
Even if we're just dancing in the dark
Hey baby


俺たち暗闇で踊るしかないとしても
ただ踊るだけなのさ
暗闇のなかでただ踊り続けてるんだ
なあ ベイビー

(Words and Idioms)
dump=ごみ捨て場.ごみの山.
carve up=〈肉を〉小さく切り分ける、〈領土などを)分割する.
starve=飢え死にする,餓死する


日本語訳 by 音時

BS BornUSA

◆この曲サウンドはシンセサイザーが活躍し、また、ライヴでは、客席から女性1名を指名してステージに上げて一緒に踊るブルース。"ブルース。なんで変わっちまったんだ!"と当初は僕も思いました。不器用ながらもほとばしる感情、ストレートな歌詞、それがブルースだと思っていたので。
でも、70年代の走る続けるブルース・スプリングスティーンの代表曲が"明日なき暴走(Born To Run)"だとしたら、この"Dancing In The Dark"はどこにも持っていきようのない悶々とした思いを発散させた80年代の代表曲かな!と今は思います。

◆"Dancing In The Dark"が最高位2位を記録した週の全米チャートです。
US Top 40 Singles For The Week Ending June 30, 1984

デュラン×2が1位。ブルースは4→2位で翌週の1位を期待させましたが、プリンスが3→1位で抜かれてしまいます。その後プリンスが1位を続けるなか、ブルースは2位を4週続けたあと3→4位と後退してしまいます。5位ポインターシスターズ、思わず踊ってしまう曲。9位と10位は映画フットルースがらみです。

-1 1 THE REFLEX - Duran Duran
-2 4 DANCING IN THE DARK - Bruce Springsteen
-3 8 WHEN DOVES CRY - Prince
-4 5 SELF CONTROL - Laura Branigan
-5 7 Jump (FOR MY LOVE) - The Pointer Sisters

-6 6 THE HEART OF ROCK’N ROLL - Huey Lewis & The News
-7 2 TIME AFTER TIME - Cyndi Lauper
-8 10 EYES WITHOUT A FACE - Billy Idol
-9 3 LET’S HEAR IT FOR THE BOY - Deniece Williams
10 12 ALMOST PARADISE - Mike Reno & Ann Wilson

◆1988年のライヴから。「さあ、おいで!」女の子をステージにあげて一緒に踊ります。

 

(この記事で参考にしたページ)
・「グローリー・デイズ 80年代のブルース・スプリングスティーン」(CBSソニー出版)
・Wikipedia Born In The U.S.A